第24話 気にするだけムダ!
昨日のオジーの説教の内容は思い出せないが、お風呂での光景はよく覚えている。今も目を閉じればすぐそこに……。
「ヒロ様!」
「何、オジー!」
「何じゃないでしょ! ったく。どうせ、また思い出していたんでしょ」
「べ、別にそんなんじゃ「ウソですね」……ウソってなんだよ!」
「鼻の下……伸びきってますよ。ご自分で鏡でも見たらどうですか」
「ウソ……」
オジーに指摘され、壁に掛けられていた鏡で確認すればホントにこれ以上ないってくらい伸びきっていた。
俺は頬を両手でパンパンと叩き引き締めてみるが、まだ若干伸びたままだ。
ま、気にしてもしょうがないかとオジーに向き直り何の用かと尋ねるとオジーはハァ~と嘆息してから「正気ですか?」と聞いてきた。
「正気かって……ちょっと素晴らしい光景を思い出していただけだって。それで何の用?」
「ハァ~ですから、それが分からないのかと正気を疑っているんですよ」
「え?」
オジーに正気を疑われたが、俺にはなんのことだか分からない。だから、俺はもう一度確認してみればオジーは嘆息しながら「もう、お忘れですか」とソファで優雅にお茶を飲んでいるリーアさんとガルちゃんを指差したことで「あぁ~」とオジーの言いたいことが漸く分かった。
「なんだ。そのこと」
「なんだじゃないでしょ! で、どうするんですか?」
「どうするって……その辺に捨てる訳にもいかないよね」
「当たり前です! 仮にそんなことしたら、世間どころか、この世界から弾かれてしまいます」
「そうだよね。じゃ、元の場所に連れて行かないとだね」
「ハァ~やっとそこに辿り着けましたか」
「終着点が決まっていたのなら、さっさと告げればいいのに」
「それだと、私が言い出しっぺになるじゃないですか。イヤですよそんなの」
「うっ……」
言い出しっぺがイヤなのは俺も同じだ……でも、俺が連れて来たことになっているんだよなぁ~と頭を抱える。
「うん、悩んでいてもしょうがない。ちゃっちゃと済ませよう」
「ホントにお願いしますよ」
「はいはい」
オジーからの小言を躱しリーアさん達の元へと近付けば、ゆっくりと立ち上がり「では、行きましょうか」とリーアさんから言葉を掛けられ「あれ?」と出鼻を挫かれる。
「どうした? ほら、行くんだろ」とガルちゃんに腕を引っ張られて「えっと、いいの?」と声を掛ければガルちゃんは笑いながら「良いも悪いもちゃんと伝えないとダメだろ」と答える。
俺はその言葉に「え?」と首を傾げる。
「何も不思議じゃないだろ。俺が守人の仕事を一時とは言え放棄することに違いないんだからな。ちゃんと里の連中に伝えないとダメだろ。な、リーアよ」
「ええ、そうですね。ちなみに私はちゃんと伝えて快く送り出して貰いましたよ」
「そうか。なら、俺のところもそうであって欲しいな」
「ちょ、ちょっと待って!」
「「はい?」」
俺は制止するように二人に手を伸ばせば、二人はキョトンとした顔をする。
伸ばした手とは反対の手で胸を抑えゆっくり深呼吸してから「落ち着けぇ~俺ぇ~」と呟く。
もう一度、大きく深呼吸してからリーアさん、ガルちゃんを見る。
リーアさんは確かにエルフの人達に留守にすると宣言し、円満? に出て来た。だが、ガルちゃんはまだ了解を得ていない。
俺はまだ間に合うハズだと信じ、ガルちゃんの手を取り見詰める。
「おいおい、まだ明るい内から何をしようとしているんだ? 俺はそんなに安い女じゃないぞ」
「いや、違うけど……」
俺が見詰めながら手を握ったことでガルちゃんは少し頬を赤らめながら、ちょっと口を尖らせる。
俺は、首を振りながら「送りますから、帰りましょうか」と告げればガルちゃんは「帰る? 何処へ?」と首を傾げる。
「何処って決まっているじゃないですか。ガルちゃんが管理している世界樹ですよ」
「あぁ、そうだな。さっきも言ったが暫く留守にすることを告げないとな」
「えっと、本気なんですか?」
「ん? 何を今更……俺のを見たよな?」
「……」
ガルちゃんの言葉に「はい、確かに。素晴らしかったです」と言おうとしたが寸前で止めることが出来た自分を褒めてあげたい。
でも、待って欲しい。ガルちゃんは見たと言うが、正確には見せられただ。
だが、それを言っても見たことには代りはないと言い切られるに違いないと口を閉じる。
「で? お前は俺をどうしたいんだ?」
「ん~出来れば「リーアはよくて俺はダメなのか?」……いや、そうじゃなくて」
「なら、何がダメなんだ?」
「何がダメって……だって守人なんですよね」
「だから、それはリーアも一緒じゃないか!」
「いえね、だからそれが問題なんですよ」
「ん? どういうことだ?」
「ですから、二人の守人が留守にするのは大丈夫なんですかってことですよ」
「あぁ~」
「分かってくれたようですね」
「ああ、分かったぞ」
「では「多分、大丈夫だろ」……はい?」
俺は世界樹の守人がリーアさん一人が留守にするのなら、なんとかなりそうだなと思っていたけど、ガルちゃんまで留守にするとなれば、、ホントに大丈夫なんだろうかと不安になったのだが、ガルちゃんは大丈夫だと言う。
俺はガルちゃんをジッと見るがガルちゃんは「そんな不安そうにするな。多分、大丈夫だから」と言う。
「えっと、その根拠は何かあるんですか?」
「根拠? そんなものはない! 単なる勘だ。勘!」
「勘って、世界樹ってこの世界にとって必要なものなんでしょ」
「まあ、そうだな。でもな、今まで何も問題がなかったのだから、正直なところ俺にもどんな問題があるのか分からない。ま、言ってみれば出たとこ勝負だな」
「いや、出たとこ勝負ってダメでしょ」
「じゃあ、何があるって言うんだ?」
「それを俺に聞かれても……」
「だろ? 分からないのは俺も同じだ。だから、気にするだけムダってことだ。じゃ、そゆことでよろしく頼むぜ!」
「えぇ~オジー……」
「私は知りません」
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