第15話 疑問に対してお答えしましょう
「この人の罪は罪として後でちゃんと罰するとして……」
「するんじゃ……」
「あなた、今はソレを気にするところじゃないのよ。分かってるのかしら?」
「うっ……スマン」
「分かれば、いいの。それにバツとして感じるかどうかは本人の受け取り方次第なのよ。うふふ……」
「そ、そうか……うむ、ならば大人しく罰されよう」
「いやいやいや、何を物わかりのいい雰囲気を醸し出してるのかな?」
「ヒロ君、今はそういうことじゃないのよ」
「そうじゃぞ。今は違うのじゃ!」
「村長、違うって何が違うの? ゴサックの暴走は村長のせいなのは間違いないんだよ?」
「いや、それは……なんというか……リノォ~」
「はいはい、分からないのなら出なきゃいいのに、もう……まあ、そこも含めてあなただものね、うふふ」
「リノォ~」
「はいはい……」
「「「……」」」
村長と奥さんの甘ったるいナニかを見せられた俺とゴサック、ハンナは今なら濃密な砂糖を吐き出せるんじゃないかと思うくらい呆れていると、奥さんが「さ、前置きはこのくらいにして」と縋っている村長をペシッと横に放ると「ヒロ君、正直に答えて」と正面から俺の目を見据える。
俺は奥さんの細長く目の奥が覗けないくらいだけど、ホント綺麗だなぁとか『ぼぉ~』と見惚れていると、奥さんは俺の両頬を少し冷たい手で挟み「聞いてるの?」と確認してくるので俺は慌てて「聞いてます! 聞いてますから!」と慌てて、奥さんの手を離す。
「ヒロ……分かっていると思うが……」
「う、うん。大丈夫、分かっているから、大丈夫だから……でも……」
「ヒロ?」
「あ、ごめんなさい!」
村長は俺が奥さんの顔を見ながら、頬を赤らめている俺に対し、昨日のことを繰り返さないようにと釘を刺してくるが、奥さんから来るのは別会計だよねとか考えていると村長は語気を強めて俺の名前を言ってくるので「あ、ダメなんだ」と当たり前のことを思い出す。
「で、俺に聞きたいことって?」
「そうね、ちょっとこれを見てもらえるかしら?」
「はい、喜んで!」
「ヒロ?」
「ふふふ、あなた待って。あなたが心配するようなことじゃないから、安心して」
「……分かった」
「じゃ、話を戻すけど……見て欲しいのはコレなの。『灯り』」
「「「ギャァ~……目がぁ……」」」
奥さんは見て欲しいのはコレだと言うなり、『灯り』を発動させれば、間近で見ていた俺や村長だけでなく、離れて様子を窺っていたゴサック、ハンナも叫びながら目を抑える。
「あら、ちょっと刺激が強かったかしら?」
「ちょっとどころじゃないわ!」
「ふふふ、でも私が言いたいことは分かったでしょ?」
「……まさか」
「うん、あなたの考えている通りだと思うわ」
「……なら」
「そうね、あなたもゴサックも同じだと思うわよ」
「……そうか。なら『ら「言わせねぇよ!」……』、ヒロ、なんで止めるんじゃ!」
「止めるでしょ! あんなの一回くらえば十分だって!」
「ワシだって……」
「『ら「止めなさい!」……』ハンナ、止めるなよ」
「あ?」
「ごめんなさい……」
奥さんが『灯り』の魔法を使って見せ、俺達の目が回復したところで、奥さんの真意を理解した村長が『ならば自分も』と灯りを使おうとしたのを慌てて止めれば、離れたところでゴサックまでも使おうとしていたのをハンナが止める。
「で、これはどういうことなのかしら?」
「えっと、どういうこと……とは?」
「ん~分からないフリかしら? それとも、本当に分かっていないのかしら?」
「……えっと」
奥さんは俺が何か関係しているのに違いないと直感している様で、俺が惚けようとしても、目が『絶対に逃がさないから!』と物語っている。細くて見辛いけど……
「何か失礼なことを考えている様な気がするけど、正直に話せばいいことがあるかも……よ?」
「いいこと!」
「ヒロ?」
俺は奥さんの『いいこと』発言にちょっと邪な期待をしてしまうが、それを感じ取った村長が直ぐに水を差す。
「……ふぅ、分かりました。ただ、俺の勝手な推測だからね。それは忘れないで欲しい」
「いいわよ。どうせ、この村には魔法のことを専門的に分かる様な人なんていないし。それにもし、魔力が上がるのなら村に取ってはプラスでしかないわよ。ね、あなた。そうでしょ?」
「まあ、リノの言う通りじゃ。この村にヒロがやったことを説明出来る者はおらん。それに偶然にしろ、なんにしろ、魔力が上がるのならば村に取っては有り難いことじゃ。なんせ村の周りには未だ魔物がウロついているからの」
俺は推測だと断ってから自分なりに考えていることを話し出す。
「先ず奥さんが考えている様に俺が昨日、村長達にしたことで、村長達の魔力が上がったと思う」
「やっぱり!」
「そうなのか……」
「え?」
「あれ? もしかして、仲間外れ」
俺の考えに奥さんは頷き、村長は思っていたのと違うと思ったのか不思議そうな顔になり、ゴサックは理解が追いついていないみたいだけど、ハンナは仲間外れにされたと悔しそうな顔になる。
「でも、分からないのはどうしてヒロがやってそうなったのか……なのよ。って言うのもね。あの人から魔力を流してもらうってのは、初心者によくやる方法なのよ。でも、今まで魔力がグンと上がったって話は聞いたことがないのよね。これってどういうことなのかしら?」
「あ~それは多分だけど……」
奥さんの素朴な疑問に対し、俺は多分だけどと自分なりの解釈を話す。
「今までの村長達は生活魔法が数回使えるレベルの魔力しか持っていなかったと思うんだ」
「ま、そうじゃな」
「そうね。言われてみればそれくらいでも普段は問題なかったものね」
「え、そうなの?」
「ゴサック、あなたは黙ってようね」
そんな風に魔力も小さい為に魔力の通り道となる血管の様なモノも細かったのではと俺は考える。だけど、そこに村長達よりも大きな魔力を持つ俺が、少しだけ強めに魔力を流したことで、無理矢理に道は広げられてしまい、結果的に魔力自体の容量も増えたのではないかと思うと話す。
「あ~なるほどね。だから、さっきの灯りみたいに普段のつもりで使っちゃうとああなってしまうと」
「すると、生活魔法が攻撃魔法レベルになると、言うことかの?」
「なら、俺も魔法剣士に「無理!」……ハンナ……」
奥さんは俺の説明に納得出来たのか、なるほどと得心したようだ。そして村長の考えも強ち間違いじゃない。でも、ゴサックのそれは飛びすぎだろとハンナから突っ込みが入る。
「じゃあ、次は……」
「まだ、あるんですか?」
「そうよ。ある意味、一番大事なことよ」
「大事?」
「そう。なんで、村長もだけど、ゴサックも私もなんであんな風に気分が高揚しちゃったのかよ」
「えぇ~」
「何? 分からないの? なら、もう一回してみる? わ・た・し・と……」
「リノ! ヒロも!」
「ちぇっ……いいじゃない。少しくらい」
「ダメじゃ! ヒロも欲しそうな顔を止めんか!」
「……はい」
「なんじゃ? ならワシと「しないから!」……なんじゃ」
奥さんが疑問に思っていることだけど、俺としては正直、少しだけ思い当たることがある。それを話していいものかどうしたものかと逡巡していると奥さんから嬉しい誘いを持ちかけられるが、村長から直ぐに止められる。
奥さんも満更、イヤそうじゃない感じだけど、ここは村長もいることだしと道徳心をなんとか持ち直し耐えることにした。
「じゃあ、言うけど……無闇矢鱈と使わないようにお願いしたい」
「あら、そのくらいなら問題ないわよ。ねえ、あなた」
「ま、そうじゃの」
「なら、もう一度村長と「ゴサック!」……いいじゃんか」
「私よりも村長を選ぶの?」
「……ゴメン」
「えっと、いいかな」とゴサックとハンナの会話を打ち切り、奥さんの問いに対する俺なりの考えを話す。
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