第23話 終わらない説教
「ふぅ~へへへ……」
「ヒロ様……」
「……ふふっ」
「ヒロ様! いい加減にこちらの世界へ戻って来て下さい!」
「もう……オジー邪魔しないで!」
「ヒロ様、そうはいいますが、まだお昼ですよ」
「でも、お風呂に入っちゃったしさ」
「それはそうですが……では、もう今日の予定は終わりですか?」
「うん、そうだね。それにほら」
「……ですね」
いきなりお風呂に連行され色々とあったので、その光景を忘れないようにと目を閉じてお風呂場で見たお宝映像を瞼の裏に浮かべながら「これは残そう」「これはいらない」と心のシャッターを押してしっかりと脳内フォルダに保存しニヘラニヘラとしていたところをオジーに現実世界へと呼び戻される。
俺はちょうど先輩がお風呂に意を決した顔で入って来たと思ったら身体を隠していたタオルをパッと取り去り、羞恥で顔を赤くしながら「改めてよろしくお願いします」とお辞儀をしたところを思い浮かべていたところだったのにと憤慨しながら、目を開ければオジーが今日の予定を聞いてくる。
だけど、もうお風呂に入ってまったりしているところだし、それに……とある集団を見るようにオジーの視線を誘導するとオジーも「確かに」とうなずく。
そのある集団……セシル、ユリア、先輩に加えリーアさんとガルちゃんが酒盛りをしていた。
もちろん、お酒や惣菜などは俺に「さっきのお代だと思って」と言い強要され出したモノだ。半ば脅しとも言えなくもないが、それなら安いかなとホイホイ喜んで出した。
「う~ん、やっぱりこれは美味しいですね」
「だな! 初めて飲むがコレは一体なんなんだ! それにこの金属も初めて見る物だな。う~ん、これをどうにかアイツらにも教えてやらないとな。ま、今はこの場を楽しむか。ん? お~い、もう足りないぞ!」
「はいはい、ヒロ様。お願いしますね」
「あ、ユリア。ついでに惣菜も出してもらって」
「そうだ! ヒロ、スイーツもお願いね」
「はいはい……ふぅ~」
リーアさんが発泡酒を片手にデパ地下惣菜を片手で摘まみガルちゃんは発泡酒のアルミ缶を不思議そうに眺めながら、口に運び空になったアルミ缶を片手で潰してユリアにお願いすれば、ユリアは俺に追加を頼みセシルと先輩がついでとばかりに惣菜とスイーツもとお願いして来た。
俺は女性陣に言われるがまま、インベントリからお望みの物を次から次へと出すマシーンと化し、もうこれくらいでいいだろうとその場から離れセツを構おうとしたところでセツがいないことに気付く。
「ん? あれ?」
「ヒロ様、セツならアソコです。ついでにぷぅも……くっ……私だって……」
オジーが悔しそうに指差す先にはテーブルの上で大きく口を開け、リーアさん達から色々ともらって嬉しそうにぷるぷる揺れているセツとぷぅがいた。
そんな訳で俺とオジーもついでにお昼を済ませようと別のテーブルで男二人でひっそりと乾杯し食事する。
「で、どうするつもりですか?」
「どうするって?」
「だから、彼女達守人ですよ」
「ん?」
唐突にオジーから彼女達をどうするつもりなのかと聞かれるが、そもそも俺から頼んだ訳でも望んだ訳でもないので「さあ」とだけ答えればオジーは手に持っていた発泡酒の缶をドンとテーブルに叩き付けるように置くと「ご自分のコトでしょ! もっと真剣に考えてはどうなんですか! そもそもですね……」と説教が始まった。
俺はオジーの説教をBGMに少しだけマジメに考えてみる。
そもそもこっちの世界に来てからは客という付加価値と魔法の恩恵もあり、日本では考えられないくらいのモテ期到来だ。
但し打算が強過ぎな気もするけど……なんだろ……目から汗が出て来た。
「ヒロ様! 私の言うことが分かってくれましたか!」
「いや、オジー。これは違うから! これは単なる汗だから!」
「汗? フハハ! ヒロ様、言っときますが目から汗など出ません! いや、もしかしたら向こうではそうなのですか? ちょっとウr「オジー、ほら!」……っと、これはこれは」
俺は急いで目を拭い先輩のところへ行こうとするオジーを必死で引き留めると、もう一度考え直す。
セシルやユリアとか打算で絡んで来るのは除いて考えてみる。
「さっきの先輩の態度はやっぱりそういうことだよね」と目を閉じ素っ裸でお辞儀をした先輩の姿を思い出し思わずニヤけてしまうのが自分でも分かる。
リーアさんの時には頑なにタオルを取らなかったのに今日は自らタオルを取り素っ裸を俺の目の前に晒したのはそういうことに違いないだろう。
「でもなぁ……」と俺としては先輩の心変わりが少しだけ気がかりだ。
確かに俺からどういうつもりですかと確認はした。でも、今? と素直に受け止められない自分がいる。
「ま、いっか。先ずは守人の二人だろ」と最初の問題に戻り考えてみる。
彼女らにしてみれば、永すぎるどころか終わりがあるのかも分からない人生の一部だからと俺に託すのは問題ないらしい。
だけど、それを託された俺はどうすればいいのだろうか。それに世界樹はあと六本もある。
まさかとは思うが、残りの六人も俺に……と考えたところで馬鹿馬鹿しくなり思わずフッと鼻で笑ってしまえば「私の話がそんなに退屈ですか!」とオジーに絡まれた。
「いや、そんなつもりはないんだけど……だって、そもそも聞いてなかったし」
「はぁ? 聞いてなかったとはなんですか! 大体、ヒロ様はいつもそうやって……」
また始まったオジーの説教を聞いているフリをしながら「どうせなら、残り全員が女性ならいいのに」と考えてしまう。
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