第22話 それはいただけません(王目線)
「……」
「陛下? 陛下!」
「あ、ああ~伯爵か。どうした?」
「どうしたではなく、陛下こそどうしたのですか?」
「そうだな。昨日、今日と想定外のことばかりでどうしたものかと思案していたところだ」
「そうでしたか。そうとは知らずに乱暴な真似をしてしまい申し訳ありませんでした」
私の目の前でジャミア伯爵が謝罪と共に頭を下げる。
つい、先程のことだ。この世界に八本あると言い伝えられていた世界樹の守人であるリーア殿とガルディア殿が現れたのだ。
話には聞いていたが、私は実物の世界樹を見たことがない。それは単純に距離的な問題もあり態々時間を掛けてまで見に行く程でもないだろうという思いもある。
彼が言うにはリーア殿と知り合ったのは偶々だと言うが、偶々で守人に会える者だろうか。まあ、それも彼の持ち味と言うか、色んなモノを惹き付ける何かがあると言うか、そう思うしかないだろう。
そしてリーア殿は彼とこれからの生活を共にすると宣言したのだ。
確かに私はクリスが黙って身を引かざるを得ない程の良縁を見付けてくれればいいと言ったが……これは少々どころか、かなりやり過ぎではないのだろうか。
しかもだ。リーア殿を崇め奉るエルフ達は彼だけではなくリーア殿を攫ったヒト族許すまじと争う準備を始めていたところだと言うではないか。
幸いにもそれはリーア殿が一喝し渋々ながらも彼に着いて行くことを認めたらしい。
それだけでもお腹いっぱいだと言うのに今度は別の守人を連れて来ているではないか。一体、世界は私にどうしろと言うのだろうか。
誰に聞いても答は出ないだろう。しかも、彼はまだ旅を続ける予定らしい。後六本と言っていたので全ての世界樹をコンプリートする気なのだろうが、まさかとは思うが守人もコンプリートするつもりではないよな。
本当にこれ以上の面倒ごとは持ち込まないで欲しい。
そして、私はあの集団に着いていけずに部屋の中で立ち尽くしているウララ嬢が目に入る。
「ウララ嬢、あなたは行かないのか?」
「王様、私はどうすればいいのでしょうか」
彼女は両手を前で組み私に縋るように尋ねてくるが、私にも妻がいるのだからとチラッと伯爵に目をやれば明らかに目を逸らされた。
「聞いてます?」
「き、聞いてるから……ちょっと聞いてもいいかな?」
「なんですか?」
「どうして、ヒロ殿の思いを断ったのかな」
「……言わないとダメですか?」
「ダメと言うか、聞かないと上手く答えられないかな」
「……欲張った……から」
「欲張った?」
「はい……そうなんです」
彼女が言うには元々彼には好意を持ってはいたが、異世界に来てからは自分も客ということもあり、自分のことを何割増しかで見てくれている様な気がして「このまま彼でいいのか」と思ってしまったこと。そして彼ならば自分と同じ客でもあるから、もし何かあったとしても離れることは難しいだろうという思いから、焦る必要もないか軽い気持ちで断ってしまったらしい。
だが、実際には自分の歳が既に二十歳を超えてしまっていることがネックとなり、回りの異性は正妻ではなく側妻や愛妾としてならという誘いしかこないと嘆く。
「それならば、素直に謝り彼の胸に飛び込めばいいのではないのでは?」
「もう飛び込める場所が空いてません」
「そうか……ならし「でも、諦められないんです!」か……えぇ~」
彼女は目を潤ませ上目遣いで私を真っ直ぐに見てくる。
もし、ここで私が彼女を抱きしめてしまえば、彼女は間違いなく私に気が向くのではないだろうかという思いが脳裏を横切るが私は頭を振って、その考えを断ち切る。
「これはあれだな相談女だな」とこのまま手を出してもいいことはないとどうにか距離を保とうとするが、私が退けば彼女がグッと詰める。
これは流石にヤバイぞと伯爵に目を向ければ、彼も同じ思いなのか手を伸ばしては引っ込めるという動作を繰り返していた。
そこはムリしてでも止めるところだろうとジトリと睨むが若い女性相手にムチャ出来ないのも事実だ。
私はずっと妙な動作を繰り返す使い物にならない伯爵は諦め、彼女に「それでも無理矢理飛び込めば少しの隙間なら作れるのではないだろうか」と提案すれば、彼女もハッとした顔で「そんな……いえ、でも……」と何かを呟きだした。
私はこれでお役御免かなと嘆息していると彼女は「ありがとうございました!」と頭を下げ走って行く。
私はそれを見届け、まだ彼女が去ったことも気付かずに妙な動作を繰り返している伯爵に「いつまでそうやっているつもりだ」と声を掛ければ「えっ! あ……」と姿勢を正し頭を下げる。
「ハァ~この件は貸しだぞ」
「……分かりました」
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