第21話 やっと解放されたと思ったのに
「なるほど……」
「じゃ「待て!」……え?」
「どこへ行くつもりだ?」
「どこって……もう、用は済んだでしょうからお暇しようかと……」
「まだ、済んでいない!」
「いや、でも……」
「ふぅ~そうね。まだ、大人しく座ってなさい」
「ウララ……」
ある程度、話し終わったところで俺が「じゃ」と痺れている足を揉みながら立とうとすると王が「どこへ行く」と止める。
俺の話したいことは話し終わったからと素直にこの場から去ろうとしていると告げれば、まだ話は終わっていないと言い、先輩もそれに追従するように立ち上がろうとする俺の肩を上からグッと押し正座の続行を強制する。
「もう、全部話したでしょう。まだ、何の用があると言うんですか?」
「……私は確かにヒロ殿に対し国内外を移動し見聞を広めて欲しいとも、出来ればよき女性を見付けて欲しいとも言った」
「ですよね。だから、こうして「だからと言って誰がここまでしろと……」……えぇ!」
「思えば、私の考えが甘かったのかも知れないが、まだこちらの世界のこともよく知らないのだから先ずは国内の近場から足を運ぶモノだと思っていたのだが……何故、国外なのだ。しかも世界樹の守人を連れてくるなんて……誰が想像出来るか!」
「でも、着いて来ちゃった訳ですし」
「そうだな……それも二人ともヒロ殿と添い遂げたいとまで言う。私はクリスになんと説明すればいいのだ……」
「……頑張って下さい」
「頑張って説明出来るモノなら、こうして悩まぬわ!」
「陛下……落ち着いて下さい」
「ああ、すまぬな」
確かに王は自分のもしもの時の為の避難場所を確保する為に国内外を尋ねて欲しいと俺に依頼してきた。
そして王は「国内の見識も不十分なのにいきなり国外に行くヤツがいると思うか!」と呆れている。
でも、国内なんて行こうと思えばいつでも行けると思ったからこその国外なんだけどね。そんな俺の気持ちを王が慮ることがないように俺も王の目論見など分かるハズもない。
結果的に一日単位で、イチ世界樹、イチ守人で二日で二本の世界樹を尋ね、そのそれぞれの守人を連れてきてしまった訳だが、どちらも俺の責任じゃないと今でも思っている。
王がクリスにどうやって説明しようかと頭を悩ませている内にチャンスかなと腰を浮かそうとすれば「まだよ」と先輩が俺の肩をグッと押す。
「えっと、ウララは何用?」
「何用って……あなたねぇ!」
「ちょっと、待って!」
「何?」
「いや、何度も言うけどさ。ウララはどういう立場でモノを言おうとしているのかだけ聞かせてくれるかな」
「はい?」
「いや、だってさ。クリスの時もそうだけどさ。ウララは俺からの告白を振ったでしょ?」
「それは……でも、保留って言ったじゃない!」
「うん。そうだね。だから、まだウララとはそう言った関係ではない訳でしょ。なのに俺の女性関係に物言おうとするのはどうなのかなって思わない?」
「ぐ……」
「はいはい、そういう訳でウララ様はちょっと横にどいて下さいね」
「そうですね」
「あ、あなた達まで……」
先輩が言いたいことは大体分かる。昨日、今日と綺麗でスタイル抜群な女性を連れて来て、しかもそれが俺に対し非常に好意的だとなれば、何か文句を言いたくなるのも分かる気はするが、そもそも先輩とはまだ何もないから、未だ先輩と後輩の関係のままだ。
そう言うことだからと先輩がまだ何か言おうとしているけど、俺の足も限界が近いのでソロッと立ち上がろうとすれば、セシル達が先輩を退かして俺の前に立つ。
「お話しは大体分かりました」
「ええ、少なくとも争う気はありません。まあ、私達が争ったところで色々な面で負けるのは分かっています」
「なので、私達はお世話に回りたいと思いますので、よろしくお願いします」
「お願いします」
「いや、それは有り難いけど……じゃ、俺はいいかな?」
「では、お風呂へご案内します」
「そうですね。ヒロ様、ちょっとだけ匂います」
「え? そうかな?」
「はい。どことなく汗の臭いが致します」
「あ!」
セシル達は俺が汗臭いと言って来た。俺自体はそれほど汗をかいたという認識はなかったが、ガルちゃんのいた世界樹の場所は確かに少し暑かったかなと思わなくもない。
でもだからと言って今お風呂に入らなくてもいいのではとユリアに言えば「セシル様も汗をかいているので」とフフッと笑って見せる。
俺はあぁ~と得心するが、だからと言ってそれが俺を風呂に追い立てる理由になるのかと言えば「そちらの方もまだお風呂をご存じないようなので」とガルちゃんを見れば「風呂?」と不思議そうにしている。
そんなガルちゃんにリーアさんがコソッと耳打ちしお風呂について教えているのかガルちゃんの顔がニヤリとし口角が上がると「よし、行くぞ!」と俺を無理矢理立ち上がらせて引き摺るように歩き出す。
「ちょ、ちょっと!」
「ならば、私が足を持ちましょう」
「じゃ、私も」
「お手伝いします」
いつの間にかガルちゃん、リーアさん、セシルにユリアが俺の手足を持ってお風呂場へと向かう。
「いや、待って! 歩けるから!」
「大丈夫ですよ。私達にお任せ下さい」
「おう! さっき聞いたぞ。お風呂場ではいろんなことをするんだろ?」
ガルちゃんがまたニヤリと笑うが「違うからね!」と言っても「またまたぁ~」と相手にしてくれない。
「もう、いいです……」
『主ぃ~』
「私も汗をかいているんですがね……」
『ぷぅ~』
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