第20話 そろそろ足が痺れてきました
「なるほど……大体の経緯は理解した。で、結局そこの彼女は何処の誰なのかな」
「「「あ!」」」
王にはオジーのことはぼかして伝えたが、ほぼ伝わったと思っていいだろう。そして王が彼女のことを誰何するが誰も名前とか聞いてなかったことを思い出した。
「そう言えば、何もきいてなかったけど……誰?」
「おいおい、誰ってことはないだろ」
「いや、でもリーアさんと同じ世界樹の守人ってこと以外何も知らないんだけど。それにあなたも何も名乗ってないよね?」
「お、そうだったか?」
「そうですよ。ホントに見た目通りにガサツな方ですね」
「おい!」
リーアさんはそう言って彼女をガサツだと表現するが、その表現はどうなのかと思う。
彼女は身長百六十センチメートルちょっと、髪は長く後頭部の高い位置で束ねている。多分、作業に邪魔にならないようにだろう。
何故、そう思ったのかと言えば、そんな彼女の格好から想像したからだ。
彼女自体は適度にあちこちが引き締まった身体をしているが、その胸元は大きく張り出し革製のポケットが幾つもあるベストがパツンパツンだし、前が閉まりきらないのか白いタンクトップがほぼ剥き出しで、そのタンクトップも胸が張り出しているせいかお臍が丸出しだ。そして下半身に目をやればこれも革製と思われるハーフパンツに革のブーツで右手に大きめの鎚を握っていることからモノ作りが趣味なのかと思われる。
だから、俺は自分が想像した答を彼女に「もしかしてドワーフだったりする?」とぶつけてみた。
すると彼女は「分かるか?」と嬉しそうに笑う。
「お前が察しの通り、俺はドワーフだ。但し、原初のドワーフだがな」
「「「……」」」
「ん? なんだ。反応が薄いな。もっと驚いてもいいんだぞ?」
「だって二人目だしね」
「あ! そっか。そうだったな。チッ」
「で、あなたの名前を聞かせてもらえますか?」
「俺か。俺の名前は……ガルディアだ」
「ガルディアさんね」
「じゃ、ガルちゃんね」
「「「は?」」」
彼女は原初のドワーフだとフフンと言った感じで皆に発表したが、王以外はふ~んといった感じで軽く流したのが気に入らないのか短く舌打ちする。
で、彼女は自らをガルディアと名乗ったが、リーアさんが「ガルちゃん」と呼んだことで俺達だけでなく呼ばれた彼女自身も驚いている。
「ちょっと待て!」
「なんでしょうか、ガルちゃん」
「いや、だから……その……ガルちゃんってのは……なんかこう、調子が狂うというか……こそばゆいと言うか……」
「なんでですか? いいじゃないですか。ガルちゃんって」
「……ああ、もういい!」
「コホン!」
「「「……」」」
リーアさんからガルちゃんと呼ばれることに抵抗を見せていたが、リーアさんが折れないので観念したところで王が咳払いをして耳目を集める。
「では、改めましてリーア殿、ガルディア殿。私はこの国で王を務めているジョルジュ・フォン・フィガラ十九世だ。以後、お見知りおきを」
「こちらこそ幾久しく」
「誰?」
「誰ってガルちゃんもさっき聞いていたでしょ。この国の王様だって」
「王ね……」
ガルちゃんはそう言って王をチラリと見ると興味がないようで直ぐに「で?」と俺に聞いてきた。
「で? って?」
「だからよ。お前はソイツといい仲になるんだろ? 俺ともそうなるつもりはあるのかって聞いてんだよ。どうよ、いい仕事すると思うぜ。ほら!」
「うっ……」
「ちょっと、ヒロ!」
「ヒロ様、その程度でよければこちらにも……ほら!」
「ちょっと、セシル様!」
ガルちゃんは王のことなどどうでもいいと俺に対しリーアさんと同じ様な関係になるのかと自慢の胸を持ち上げアピールしてくる。
それを見た先輩やセシル達が騒ぎ出すが、俺はそれを手で制し「そのつもりはありません」と言えば「だろうな。でも、俺にはある」と言う。
「なら、なんで聞いたんです?」
「とりあえずな。一応、聞いとかないとだろう」
「で、それを聞いても引く気はないんですか?」
「そりゃそうだろ。だってよ、アイツがOKなら俺もOKってことだろ。まあ、これからもよろしくな!」
「えっと、ヒトの話を聞いてますか?」
「ああ、聞いているが聞く気はない」
「ハァ~」
俺はどうしたものかと回りを見渡せばどことなく嬉しそうなリーアさんと苦虫を嚙み潰したようなオジー、それにグヌヌと両拳を握り行き場のない何かを抑え込んでいる先輩とセシル、それをオロオロと見ているユリアがいた。そして「私は王様なのに……」と呟いている王の背中を摩りながら「大丈夫ですから、ヒロ殿の周囲がおかしいだけですから」と妙な励まし方をしている伯爵がいた。
ガルちゃんのどうあっても着いて行くからと宣言されたことでこれからどうしたものかと考えようとしたところで「あ!」と大事なことを思い出す。
「ガルちゃん、ドワーフって言ったよね?」
「お前まで……まあ今はいい。確かに俺はドワーフだ。それがどうした?」
「いや、俺が知っているドワーフってのはさ……」
そう言って俺の頭の中のドワーフのイメージをガルちゃんに伝えるとガルちゃんはフフッと笑い「それは俺の眷属のドワーフだな」と答える。
「眷属?」
「ああ、ソイツも同じだろ? 俺達の眷属として集まって来た精霊がやがて成長し大きくなり実体を持ったのがお前が言ったドワーフの特徴だ」
「ああ、なるほど」
「ちょっと、ヒロ! 一人で納得していないで私達にも分かる様に説明してよ!」
「はいはい、あのね……」
俺はいい機会だからとこの惑星の世界樹と守人、そして分かっている範囲での守人とその眷属達のことについて話して聞かせた。
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