第18話 正座させられています
「で、これがどういうことなのか誰か私に五歳児にも分かる様に説明してもらえないだろうか」
「「「……」」」
今、俺は王都の伯爵邸の自室ではなく応接間にて王様の前で正座させられている。
そしてそんな俺を先輩達が見下ろしているし、伯爵は王様の隣でこめかみを押さえて項垂れている。
五歳児にも分かるようにって、誰か俺にも説明してくれないかなぁ~とか思っていたら「ホントに反省しているの?」と先輩が俺の肩をチョンと突く。
「反省って……なにを?」
「もう、何をじゃないでしょ! 呆れた……ヒロは自分が何をしたのか分かってないの?」
「何って……」
俺は正座したままの状態で腕を組み考えてみる。
「そんなに怒られるようなことをしたのかな……」
「ヒロ様……本気でそう思っていますか?」
「本気も何も俺自体は何もしていないけど?」
「ハァ~まあ、そういう見方もあるかと思いますが……とりあえず実際に起きたことを整理してみましょうか」
「とりあえずねぇ~」
オジーに言われ、現時点までのことを思い返してみる。
時を数時間前の二本目の世界樹に辿り着いた頃に巻き戻してみる。
「ふぅ~やっと着いたね」
「やっとと言いますが、本来ならこんな遠くまでは「はいはい、いいからいいから」……ったく。じゃあ、さっさと枝に取り付きましょう」
「分かってるって」
「しかし、ここの世界樹は何というか……」
「殺風景?」
「そう! そうです。ホントに……」
リーアさんが言うようにこの世界樹の回りにはほとんどと言っていいほど草木の類が生えていない。
どこを見ても荒涼とした景色が広がり、エルフが暮らしていた場所とはここまで差があるのかというくらいに何もない。
俺達の視界に映るのは、岩山と思わしき山肌が剥き出しの無骨な山々とポツンポツンと点在する造りが粗末な小屋だけだった。
「ねえ、リーアさん。俺の偏った知識だけどさ、普通世界樹の回りって草木が生い茂って深い森の中ってイメージなんだけどさ。ここってどう見ても……」
「はい。荒れ地ですね。かろうじてヒトらしき者が住んでいる様な雰囲気はありますが、畑なども見受けられませんし、どうやって生活しているのか不思議ですね」
「ホントに……」
「だろうな」
「「「え?」」」
俺とリーアさん、オジーの三人で枝の上から眺めていたが、どこにも人影らしき者は見えないし、リーアさんの様な世界樹の守人も気配を感じないので、どうしたものかと嘆息していたところで不意に背後から声がしたので驚いて振り向けば、そこには大きな鎚を持った女性が立っていた。
「「「……」」」
「なんだい。俺に用があってここに来たんじゃないのかい?」
「え?」
俺達はいきなり現れたその女性をポカンと黙って見ていたら、そんな風に言葉を掛けられたので俺は目の前にいるこの女性が、この世界樹の守人であることをなんとなく理解する。
「で、なんの用なんだ? っと、そっちのお嬢さん……いや、おばあ「ちょっと!」……ま、それはお互い様か。あんたもそうなんだろ?」
女性はリーアさんを一瞥すると同じ守人として感じるところがあったのか、その存在を認めたようでリーアさんもコクリと頷く。
「で、他の守人が尋ねてくるほどの用はなんだい? 態々こんな所まで来たんだ。まさか顔見に来ただけって訳じゃぁあるまい」
「……」
「おいおい、そのまさかかよ……ったく、こんな場所まで冷やかしに来たのかよ」
「あ、いえ。特にそういう訳ではなくてですね」
「じゃ、どんな訳なんだい?」
「うふふ、聞きたいですか?」
「なんだいば「あなたも同じ歳でしょ」あ……まあ、そうだな悪ぃ。で、なんだい?」
「それはですね……うふふ、どうしようかなぁ~」
「いいから、さっさと言いなよ!」
「もう、分かりました。じゃあ、言いますね。よぉ~く聞いて下さいよ」
「いい加減殴るぞ!」
「うふふ、それはですね。私とヒロさんとの新婚旅行Withお邪魔虫です」
「し、新婚旅行だと!」
「私……お邪魔虫ですか……」
リーアさんの口から新婚旅行だと聞かされた女性は「本気か!」と俺の顔をジッと見るので、俺も誤魔化さずにコクリと頷けば「本気だったぁ~」と右手で両目を塞ぎ天を仰ぐ。
そして、女性は俺の顔をジッと見て「もしかして熟女趣味なのか?」と聞いてくるが俺はブルブルと首を横に振る。
「ちょっと、それどういう意味ですか!」
「どういうって……そういう意味だろ。お前も俺と同じ歳なら、言っていることくらい分かるだろ。なら、俺にもチャンスがあるってもんだ。なあ、どうだ?」
「どうだって……言われても……」
「ちょっと、止めて下さい! 私のヒロさんなんですから! 離れて下さい! 誰でもいいなら、そこにもいるじゃないですか!」
「そいつはダメだ」
「「「え?」」」
「俺はコイツが気に入った! なあ、どうだ? 俺なら……も出来るぞ」
「え……」
ここに来たのが俺とリーアさんの新婚旅行だと聞いた女性は本気かと俺に確認し俺がそれに頷くと俺の身体を自分の方にグイッと抱き寄せ「年上趣味なら俺もどうだ?」と腕を絡ませ柔らかいモノをギュッと押し付けてくると耳元で他の人に聞こえない様に魅惑的なことを囁くので俺は思わず赤面する。
そんな女性と俺を離そうとリーアさんが俺じゃなくてオジーにすればいいじゃないかと提案するが、女性は「ソイツはダメだ」と一蹴する。
俺達は女性がオジーを一蹴した理由が気になり「どうしてダメなのか?」と聞いてみた。
すると女性は「だってソイツはタタないだろ」と言うのだ。
リーアさんはその意味が分からず「何が?」と問い返すが、女性は面白そうに笑うばかりで俺に聞けとでも言いたげに笑い続ける。
リーアさんは意味も分からず「ヒロさん?」と聞いてくるが俺も男だし、ここでオジーの劣等感を公開するのはダメだろうと思い「ゴメン」と茶を濁す。
それでも納得出来ないリーアさんはそれならばとオジー本人に聞こうとするが、オジーは俯き唇を噛んでいるのが分かったので「オジー」と声を掛けるがその肩は震えていた。
「なんだいなんだい、急に辛気くさくなっちまって、なあ」と俺に声を掛けるが、俺は女性を振り払いリーアさんとオジーの手を取り「帰るよ」とだけ声を掛ければ二人が頷いたので伯爵邸の自室へと転移した。
「あぁ~なんか厄介ごとの予感がするよ」
「ええ、そうですね。私はゆっくりと新婚旅行を楽しみたいだけなのですが……」
「申し訳ありません。私の……が役にタタないばかりに」
「オジーが悪い訳じゃないし気にしないでよ」
「そうですよ。あんな無骨な女の言うことなど気にするだけムダってものですよ」
「ほぉ、その無骨な女ってのは俺のことか?」
「「「え?」」」
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