第14話 おもい
「り、リーアさん、ちょっととばしすぎではないでしょうか……」
「あら、そうですか? でも、いつかは知られることですし」
「でも、そう言うのは互いの同意があって初めて成り立つモノだと思うのですが……」
「私では不服でしょうか?」
「あ、いえ、そうではなくて……」
「私に至らない点があるのでしたら、どうかこの場で仰って下さい!」
「あ……あかん」
リーアさんのトンデモ発言にそれはどうかと俺が言えば、リーアさんは瞳をウルウルとさせながら「なんでもするから捨てないで!」とでも言いたげに俺を上目遣いで見てくる。
そしてリーアさんと腕を組んでいるだけでもガルガルとした目付きで俺を射殺すかのように見ているエルフ達がリーアさんを泣かせたとでもなれば、それぞれの武器を持つ手にグッと余計な力が入るのが見ているだけでも分かる。
「えっと、皆さん落ち着いて下さいね」
「うるさい! 大体お前はなんなんだ!」
「そうだ、そうだ!」
「いきなり現れて何様のつもりだ!」
「何様って……言うなれば客様?」
「……それがどうした!」
「そうだ! 客だからなんだっていうんだ!」
「なんだって言われてもなぁ……あ!」
「「「あ?」」」
エルフの皆さんに散々罵倒されるが、俺はここで大事なことを思い出した……と、いうか自分でもこれを言ってしまうと後戻りできなくなりそうでイヤになる。でも、興奮しているエルフ達を落ち着かせるというか、意気消沈させるにはこれしかなさそうなのも確かだ。
だから、俺は意を決してある言葉を口にする。
「例え俺が何者であろうとリーアさんが俺を夫にしたいほど好きなのは何事にも代えがたい事実でしょ」
「あら、うふふ」
「「「ぐ……」」」
俺の言葉にリーアさんがやっと受け入れてくれるのですねと更に身体を密着させてくれば、それを見たエルフ達、特に男……皆が中性的だけど多分男だと思う……達が血の涙を流すんじゃないかと思えるくらいに唇を噛み締めているがまだ武器は手放さない。
「り、リーア様……どうか、考え直してはもらえないのでしょうか」
「そ、そうです! そんな平たい顔のどこがいいと言うのですか!」
「エルフはエルフ同士が一番です!」
「ハァ~……情けない」
「「「え?」」」
さっきまで嬉しそうに俺の腕に顔を寄せていたリーアさんがエルフ達の言葉に急に真顔になり情けないと嘆息しながら口にする。
「り、リーア様……情けないとは?」
「ハッキリと口にしないと分からないのですか?」
「……申し訳ありませんが、リーア様のお考えを我々に推し量ることは少々難しいかと」
「ハァ~そんなだからあなた達は……」
「「「……」」」
リーアさんの真意が分からないとリーアさんに反論する様に噛みついてみせるがそんなエルフ達にリーアさんは頭を振りながら更に嘆息する。
「いいですか。エルフで十分だと言うのなら私もこの歳まで一人でいることはなかったでしょう。それくらい分からないのですか?」
「で、ですが……だからと言ってヒトである必要もないのではないでしょうか?」
「ハァ~いいですか。先程も言いましたが私がこの歳まで一人でいたのには、何もエルフだけを対象に絞っていたからとか、そういう理由ではありません」
「だったら……」
「ええ、そうです。この歳ですからそれなりに出会いはありましたよ。それなりにね」
「「「……」」」
「ですが、私はこれほど精霊に愛されている方を見たことがありません。それに……」
「「「それに?」」」
「いえ、今は言いません。ですが、直に分かるでしょうから、今は言いません」
「「「……」」」
「あ、これだけは今、言っておきましょう」
「なんでしょうか?」
「ヒロさんは私を普通の女性として扱ってくれます」
「「「え?」」」
リーアさんは俺のことを色々と持ち上げてくれているが、一番のポイントは今は言わないと口を閉ざすが最後に「私を普通に扱ってくれる」と嬉しそうに話すのを聞いて俺の方が分からなくなる。
「リーア様、それはどういう意味でしょうか?」
「ですから、そういうところです」
「はい?」
「私はリーアという一人の女性です。それは分かっていますか?」
「……分かっているつもりですが?」
「いいえ。あなた方は何も分かってくれません!」
「「「え?」」」
リーアさんが意外と大きな声でエルフ達に言うと、言われた方のエルフは驚いてしまう。
「リーア様、何を仰っているのでしょうか?」
「ハァ~あなた方は私を神として崇めているのは分かります。そしてそれがしょうがないことだとも」
「ですから、リーア様と「ですから、それがイヤだったのです」……え?」
これだけ多くのエルフ達から神様と崇め奉られているのに何が不満なのかと俺も思ったけど、リーアさんはまた頭を振り「違うのです」と言う。
「リーア様?」
「私は皆様と気軽にお喋りを楽しみたかったのです」
「え?」
「ですが、あなた方は私を腫れ物の様に扱い、決して目を見て話そうとはしてくれませんでした」
「いえ、それは……」
「最初の頃は私もあなた方と一緒に暮らそうと話しかけたりとかしていましたが、あなた方の態度が変わることはありませんでした」
「「「……」」」
「なので私は……この世界樹の上へと逃げるしかありませんでした」
「「「……」」」
「それでもあなた方は私の身を案じるどころか、手を合わせて祈るばかりで……」
「それは……」
「そんな時、ヒロさんは突然現れました。そして私に対しなんら臆することなく普通に接してくれました。それに私が何者かを伝えても『それが何か?』と言った感じで態度を変えることもありませんでした! そして極めつけが……彼の周りを嬉しそうに漂う精霊達です!」
「「「……」」」
リーアさんの力説にエルフ達はただ呆然と立ち尽くし、手に持っていた武器を落としたのに気付かない程放心していた。
「ふふふ、これが私の隠すことのない本心です」
「……」
「ヒロさん、どうしましたか?」
「ちょっと重すぎるかな……」
「では、私と二人で持てば軽くなりますね。うふふ」
「……いや、却って重くなるから」
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