第13話 重大発表
「はい、着きましたよ」
「……」
「あの、リーアさん。着きましたけど?」
「……」
「えっと……」
俺とオジーとリーアさんの三人は昨夜辿り着いた世界樹の枝へと転移して来た。
そして直ぐにその雰囲気に気付いたのか世界樹の根元では数人のエルフがこちらを指差して何やら喚いているようだ。
そして世界樹に着いたと言うのにリーアさんは俺の首から手を離すどころかお姫様抱っこを止める気配がない。
「リーアさん?」
「聞いてますよ。では、このまま降りましょう」
「はい?」
「聞こえなかったのですか? |このまま《お姫様抱っこされたまま》降りましょうと言ったのですけど?」
「ちゃんと聞こえてます。聞こえているからこそ聞き直したのですけど……正気ですか?」
「はい。もちろんです」
嬉しそうに俺の首に腕を回したままで、世界樹の根元で殺気立っているエルフの元へ降りて下さいとお願いするリーアさんに今がどういう状況かを伝えた上で「正気ですか?」と尋ねるが、俺が見ても気が触れた様子はないので本気で言っているのだろうことは分かる。
「あのですね、この状態だからよく分からないでしょうけど今、この世界樹の根元にはたくさんのエルフが殺気だった様子でこちらを見上げているんですよ。なのに、このまま降りろと言うのは自殺願望があると思われてもしょうがないことだと思いますけど?」
「おや?」
「はい?」
「おかしいですね。ヒロさんは防御結界の様なものが得意だと聞いてますが?」
「あ!」
リーアさんに言われ、そう言えばそういうことが出来たなと思い出す。
オジーは「マジかよ」とでも言いたげに顔を顰めていたので「どうする?」と聞いてみたが「もちろん、一緒に行きますよ。当たり前じゃないですか!」と言うが、ちょっと膝が笑っているのは見ない振りしてあげよう。
「分かりました。じゃ、降りますよ。オジーもいいね」
「お任せします。うふふ」
「……ハァ~なんでこんな目に」
リーアさんは俺をエルフに紹介するのが嬉しいのか、外の世界へと出られるのが嬉しいのか分からないがお姫様抱っこされたまま顔はニコニコといい笑顔だ。
それとは対照的にオジーは眉間の皺が凄いことになっている。
まあ、それはそれとして下に降りないことには何も始まらないと「そりゃ行けと言われたら行くしかないけど」とと嘆息しながら足下に用意した結界の上に乗ると、そのままゆっくりと降下していく。
俺達が降りてくることに気付いたエルフ達は手に武器を取り、凝視していたが俺の腕の中で嬉しそうに笑っているリーアさんを見るとその白かった顔が上気したように赤くなり「始祖様、危ないですから離れて下さい!」と誰かが口にすれば「そうです! 危険ですから、早く!」と剣先や槍の穂先を俺達に向けながらリーアさんに話しかけるが、当のリーアさんは涼しげな顔で「離れませんから」とだけ答える。
「始祖様、始祖様は騙されているんです!」
「そうです! 私は昨夜、その男に攫われるのを見たんだ!」
「俺も見た!」
リーアさんがなんでもないと言う風にサラッと流そうとしているのに昨夜の俺達を見たという何人かが『ヒト族が始祖様を攫った』という風に誤変換していた。
するとそれを聞いた周囲のエルフが「やっぱり」「アイツが」とか口々に言いだしいつの間にか「ソイツを捕まえろ!」と言う声が聞こえてきた。
「ちょ、ちょっとリーアさん。さっきからちっとも進展しないんですけど、もうリーアさんを置いて帰ってもいいですか?」
「あら、そんなことをしても彼らの怒りは鎮まらないと思いますけど?」
「でも、それはリーアさんがちゃんと誤解だと説明すれば済む話じゃ「うふふ、すると思います?」……はい?」
「今、ヒロさんが私を置いて行くと言うのなら私はヒロさんに手ひどいことをされたと彼らに話すしかないでしょうね」
「へ?」
どうもリーアさんは退屈だった日常に俺という刺激物が入って来たことで賑やかになり嬉しいのだろうと予測は着くがそれに付き合わせられる俺達はたまったモノじゃない。
「なら、そうならないように説明して下さいよ」
「……そうね。ちょっと揶揄いすぎたかしら」
「……ちょっとどころじゃないですよ」
「オジー」
リーアさんの「ちょっと」発言にオジーが顔を顰める。
まあ、リーアさんの言動でリリージュ国と争いが勃発しそうなのだから、確かに「ちょっと」どころではすまない。
「じゃ、ちゃんと自分で立って説明して下さいね」
「え?」
「いやいやいや、『え?』じゃないでしょ。いくらなんでもこのままじゃ逆撫でするばかりでしょ」
「どうしても?」
「どうしてもです!」
「えぇ~」
リーアさんはまだ抱っこされていたかった様だけど、そんな状態で彼らの気が納まる訳もなく俺はソッとリーアさんを地面に下ろすと「もう」と言いつつもリーアさんはその場に立ち「え~と皆さんにご報告があります」と彼らに向かって宣言すると「おぉ!」と騒めく。
「いいですか。二度は言いませんから、よぉ~く聞いて下さいね。私は……」
「ん?」
リーアさんは話し始めると俺の方をチラリと見るとイタズラっぽい笑みを見せてから俺の腕を取り「客であるヒロさんと夫婦になります!」と、宣言すれば「「「えぇ!」」」と彼らは絶叫する。
「だから、なんで……」
「あら、お嫌ですか?」
腕に触れる柔らかい感触に意識を持っていかれそうになるが別にイヤと言うわけでもない。
「あれ? 言われてみればそう悪くないかも」
「ヒロ様、お気を確かに」
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