第12話 問題はソコ
「陛下、本日は急な「いいから、用件を早く言え」……は! では」
朝になり伯爵は王に対し「急用があり面会したい」と申し出て、今は応接室にて王と伯爵、そして宰相の三人でソファに座っていた。
伯爵が部屋に入ってきた王に対し急に会いたいと呼び出した非礼を詫びようとしたところで王から「そんなのはいいから」と話を進めるように言われる。
「実は急用と言うのはヒロ殿に関することでありまして……」
「ヒロ殿か……確か、報告では昨日、王都を発ったと聞いているが」
王は伯爵の言葉に腕組みをして伯爵を見据える。
「はい。ヒロ殿は確かに昨日、出立しました」
「うむ。で、それがどうしたのだ?」
「はい。実は……」
伯爵はヒロは確かに王都は発ったが、夜には屋敷に戻って来たと報告する。
「あぁ~そういうことか。確かにヒロ殿ならば、それくらいは容易いことであろう。で、それが急用として報告するほどの内容か?」
「いえ、問題はそこではありません。ヒロ殿が連れ戻って来た人物が問題なのです」
「ふむ。では、其方がそれほど慌てる程の人物をヒロ殿が連れて来たと言うのか?」
「はい、その通りです」
「しかし、ヒロ殿とて無理矢理連れて来たと言う訳ではあるまい。ヒロ殿はああ見えて人畜無害なところもあるし強引にコトを運ぶなんてことは出来そうにないしな」
「はい。ですが、連れて来た……まあ、実際は無理矢理着いて来た様な感じですが、その人物が問題なのです」
「随分と勿体ぶるではないか。そんなに大層な人物なのか?」
「陛下は世界樹をご存じですか?」
「ああ、実際に訪れたことはないが、遠目に『あれが世界樹です』と木の先端を見た記憶はあるが……それが何の関係が?」
「大ありです。ヒロ殿が連れて来たのは、その世界樹の守人である『原初のエルフ』と言ったのです」
「は?」
王は伯爵の言葉に自分の耳を疑うしかなかった。
「ジャミア卿、今『原初のエルフ』と言ったか?」
「はい。確かに言いました。私も彼女から聞いた時には自分の耳を疑いましたが、事実の様です」
「……どうしてそうなったのだ?」
「どうしてと私に聞かれても困るのですが、その彼女……リーア殿と申しますが……彼女が言うにはヒロ殿を気に入ったと。孰れはヒロ殿の伴侶になるつもりだともハッキリ申しました」
「はぁ?」
王は伯爵の言葉に正直に頷くことは出来なかった。確かにヒロには王妹であるクリスが文句の付けようがない相手を探すことを勧めはしたが……まさか『原初のエルフ』を連れ来ると誰が想像出来ようか。
「……で、大体の話は分かったが、肝心のヒロ殿とその……リーア殿はどうしてこの場にいないのだ?」
「はい。ヒロ殿は結果的にはリーア殿を無理矢理拐かしたと思われてもしょうがないと言うこと。そしてリーア殿は暫くは国であるリリージュには戻りたくないと宣言していることもあるので、今日はヒロ喉にお願いしてリリージュ国に説明しに行ってもらっています」
「ああ、なるほどね。それもそうか、国家のシンボル的な人物を攫ったとなれば国際問題だからな」
「ええ、ヒロ殿もそれをリーア殿に説いて、なんとか承諾してくれたようで」
「今はリリージュ国に向かった……と」
「はい」
伯爵の説明を聞き終えた王は「ハァ~」と深く嘆息すると「で?」と伯爵に問い掛ける。
「『で?』と申しますと?」
「だからね、リーア殿はヒロ殿と親密になりたい……これは確かなんだよね?」
「はい。本人も強く望んでいましたので間違いはないかと……」
「それなら、国家間としての問題はなさそうだが……そう上手くはいかないか」
「はい。なんせ『原初のエルフ』ですからね」
「あぁ~問題はそこだろうな」
「ええ、実際に現人神の様な扱いを受けていますから。そんな方がいくら客とは言え一般人であるヒロ殿と一緒になると聞いて『はい、そうですか』とはならないかと」
「だな。どうだろう。いっそのこと、ヒロ殿に爵位を与えると言うのは」
「それは名案だと思いますが……」
「が?」
「平民を貴族に陞爵させるにはそれなりの功績が必要になります。申し訳ありませんがヒロ殿にはそこまでの功績はありません」
「客では足りないか」
「はい。不足しています」
「だが、リリージュ国の現人神を娶るとなれば、それは功績となるのではないだろうか」
「……可能か不可能かと言えば可能でしょう。ですが、それはリリージュ国に認められたらという前提条件が必要となります」
「結局はそこに落ち着くのか……」
「はい」
「ならば、私達はそれが無事に成功することを祈るしかないか……」
「はい。消極的ですがそれが無難かと」
「しかし、ヒロ殿はなんと言うか……」
「飽きさせない人物……でしょうか」
「まあな。確かにそれはあるが……どちらかと言えば……そうだな」
「「トラブルメーカー!」」
王はヒロをなんとか陞爵出来ないかと考えてみるが、その為にはリーア殿との仲をリリージュが認めるしかない。でも、その為にはヒロが平民のままでは都合が悪いと堂々巡りだ。
そんなヒロに対し王と伯爵は面白いことが続けて起こることを内心楽しんではいるが、結局は大事に発展してしまうこともあり、単に面白がってはいられないことに対し二人で口を揃えて「トラブルメーカーだな」と口に出して大笑いすることになるが、その直ぐ後に二人で大きく深くハァ~と嘆息するのを宰相は笑って見ていた。
そして「確かに笑い事ではないですが退屈はしませんね」と宰相は独り言ちる。
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