第8話 頼むから帰って!
「……ヒロ殿、やはりリーア殿は元いた場所へ「イヤですよ」……ですよね、ハァ~」
「旦那様、何事も諦めが肝心の場合があります。それに逃げることが許されない私も正直キツいのですから……それに比べればまだマシかもと思える程度ですが」
「そうだな、オジーありがとう。確かに気休めにもならないしオジーに比べればまだマシと思える程度だが、それでも少しは気が楽になったよ」
「旦那様……」
「オジー……」
「あぁ~コホン!」
「「!!!」」
当事者? である俺を差し置いて伯爵とオジーの被害者自慢が始まったが、俺一人で背負い込むつもりはないからね。最後まで付き合ってもらうから。
そんな俺の気持ちを察したのかリーアさんは「ヒロさん。誰がなんと言おうとも私は戻るつもりはありませんからね」と宣言する。
「でも、そうは言ってもリーアさんが戻らないと……リリージュのエルフ達が攻めてくるんじゃない? そうなると、この国としては意地でもリーアさんを返そうと躍起になるのは間違いないよ。そうなるとたくさんの人達が死ぬことになるし、リーアさんとしてもそれは好ましくないんじゃないのかな」
「……死ぬのですか?」
「そりゃ、戦争になれば死ぬのは避けられないでしょうね」
「どうやってもですか?」
「ムリです!」
「そんな簡単に死ぬんですか?」
「死にますよ。だって相手も殺すつもりでくるでしょうから」
「どうにかならないんですか?」
「リーアさんが戻ればいいって話です」
「それはイヤです」
「じゃ、死にますね」
「それもイヤです」
「じゃ「戻りませんよ」……なら、どうしろと……ハァ~伯爵様、どうしましょ」
「ヒロ殿、いきなり話を振られても……だが、確かにヒロ殿の言う通りこのままリーア殿のことを放置すると国を巻き込んでしまうことになりそうだが……解決方法もリーア殿次第というのもなぁ~」
「私は戻りませんよ。ソレ以外の解決策をお願いします」
「「「……」」」
このままリーアさんが戻らなければ国を巻き込んで大きな争いになるかも知れないと言うのに当のリーアさんは「ナニソレ?」と言った感じで想像が出来ないらしい。
それよりも気になったことがあり、リーアさんに聞いてみる。
「リーアさんって人が死ぬのに立ち会ったことはないの?」
「ん~ないですね」
「ヒロ様、そもそもエルフ自体が寿命が人の数倍ですから、それもムリはないと思います」
「でも、リーアさんって相当なおと「ヒロさん、歳の話は止めて下さい」はい、そうですね」
「それにですね。そもそも私は世界樹から降りることは滅多にありませんでしたから」
「え? でも、たくさんのエルフを産み出したんじゃ?」
「はい? 何を言っているのですか?」
「いや、だって始祖なんでしょ? エルフの」
「まあ、確かに始祖の様なものだとは言いましたが、先祖ではないですよ。だって私は未経験ですから」
「「「え?」」」
人が死ぬということに関してリーアさんの意識が薄いような気がしてもしかしてと思い聞いてみたがやっぱりとしか思えない。
これだけ永く生きている人がいくらエルフの寿命が長いとしても有り得ないだろうと思ったが、世界樹から降りないのだからしょうがないかと思う反面、新たな疑問が湧き上がる。
リーアさんはエルフの祖先的な人じゃないのかと……だが、それもリーアさんの「未経験だから」という言葉で更に「???」と新たな疑問符が頭に浮かぶ。
「ちょ、ちょっと待って!」
「はい?」
「未経験なのに子供がいるの?」
「ですから、彼ら彼女らは私の子供ではありませんよ?」
「「「え?」」」
リーアさんは処女なのに子供がいるのはもしかして聖書に出てくる「処女受胎」かと思い聞いてみるとリーアさんは産んだ覚えはないとキッパリと答える。
それを聞いた俺達はまた「どゆこと???」と頭を傾げる。
「ヒロさん、安心して下さい。そういう訳で私はまだ誰のモノでもありませんから!」
「いや、でも子だくさんだし……」
「ですから、彼らは私の子供ではないと言っているではないですか!」
「でも、始祖ってことは「あぁ~そこですか」……うん、そこ」
「それはですね……」
リーアさんが言うにはどうやったかは知らないが、精霊が成長しハイエルフとなったり、リーアさんと同じ始祖と人が交わったりで先ずはハイエルフが誕生し、そのハイエルフ同士からエルフが誕生し今の状態になったらしいと締めた。
そういう訳でリーアさんとしては今、世界樹の根元にいるエルフ達はリーアさんからすれば甥姪とその子孫といった関係らしい。
『らしい』となるのはリーアさんも誰かに確認したり検証した訳ではなく気付いたらそうなっていたってことしか分からないので『らしい』としか言えないらしい。
「そういう訳で安心出来ましたでしょうか? ヒロさん」
「いやいやいや、安心するも何も実際には何も解決していないからね」
「ん? 私の純潔は証明されたと思いましたが?」
「それはそれ! で、大事なことはリリージュの人達にどう説明するかってことでしょ!」
「そんなに大変ですか?」
「また、そこからなの……」
リーアさんの純潔が分かったからどうだという話はあるけど、それよりも厄介ごとがまだ残されたままなのだからと嘆息するしかない。
どうしたものかと腕組みして考え込んでいると「一度、戻って宣言するのはどうでしょう」とオジーが提案して来たので「どゆこと?」と詳しく聞いてみる。
「ですから……」とオジーが言うには黙って出て来たから問題なのであってリーアさんから「ちょっと出掛けてきます」とリリージュの人達に宣言してもらえばいいのではないかと言う提案に目から鱗だった。
だけどリーアさんは頑なに戻るのを拒否し「絶対に嫌です!」と耳すら貸してくれない。
だから俺はオジーとコソコソと密談し「じゃ、俺が出て行く」と宣言すればリーアさんは
「え?」と驚き「私を置いて行くのですか?」と訴えてきた。
「置いて行くも何もリーアさんは動きたくないんでしょ。なら、仕方ないよね。じゃ、そゆことでリーアさんのお世話を頼みますね」
「ひ、ヒロ殿! ちょっと待ってくれないか」
「でも、俺も王様に頼まれたことをしないとだし」
「そ、それはそうだが……だからと言って、置いて行くことはないだろう」
「そうですよ。連れ合いである私を放置するのですか?」
「だってリーアさんはイヤなんでしょ。なら「分かりました」……へ?」
「ですから、分かりましたと言いました」
「で?」
「え?」
「だから、何? 何が分かったの?」
「……ヒロさんって意地悪なんですね」
「ん~キッパリと否定は出来ないけど、リーアさんの口から聞かないことにはまた何を言われるか分からないしさ」
「もう、分かりました! 私がリリージュの人達に話します! これでいいんでしょ!」
「うん。分かってくれてありがとうございます」
「お礼なんて……あ、でも」
「ちょっと待ってね。取り敢えずはこれで一段落と思ってもいいですよね、伯爵」
「あ、ああ……まあ、そう……かな? だが、まだ陛下への報告が……」
「それは頑張って下さいとしか言えません。じゃ、ある程度の道筋が着いたということで俺はお風呂に行きますね」
「なにもこんな時に……」
「そのために戻って来たのですから放って置いて下さい」
「お風呂とはなんでしょうか?」
「リーアさん、お風呂ってのはね……」
お風呂が何かと興味を持ったリーアさんが聞いてきたので、俺はお風呂に関してどんなに素晴らしいものかを訴えれば「それほどですか」とリーアさんが思案顔になる。
「もしかしてリーアさんってお風呂……いや、その前に身体を洗ったりとかは?」
「しませんよ?」
「「「えぇ!」」」
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