第13話 異世界人だからってモテないんだから!
「それで、どちら様なのかな?」
「ん? どうしたのじゃ?」
「いや、俺が知っている村人は……まずゴサック、村長、そして奥さんの三人でしょ?」
「まあ、そうじゃな」
「だからね、そちらにいる女性はどなたなのかな? っと思ってね。もしかしたら、俺が淋しく無いように?」
「ふざけるな!」
「え?」
今、この家にいるのは五人と一匹だ。テーブルに着いているのは俺とセツ、そしてこの家の住人である村長に奥さん、そしてゴサック。で、そのゴサックの横に見知らぬ若い女性がいた。
雰囲気的には磯山さやかを若くした様なぽっちゃり感満載の朗らかに微笑みを浮かべている女性は俺のことを珍しそうに見ていた。その時は……
もしかしたら俺が淋しく無いようにと村長が世話役として連れてきてくれたのかなと言ってみれば、ゴサックが「ふざけるな!」とテーブルを平手でバン! と強く叩く。すると、その女性は「私は大丈夫だから」とゴサックの腕にギュッとしがみ付く。
俺はその様子を見て、理解してしまった。まあ、俺を放って自分達だけでよろしくヤリ始めた人達が俺のことを慮るハズもないと落ち込めばセツが触手を伸ばし俺の頭をポンポンと撫でる。
「ありがとうな、セツ。俺の味方はお前だけだよ」とセツが変形するくらいに抱きしめれば、セツから『キュ!』と聞いたことがない鳴き声が聞こえてきたので慌てて離す。
セツの御陰でなんとか落ち着きを取り戻すと、嫌な思いをさせてごめんなさいと名も知らぬ女性に頭を下げる。
「あ、いえ。私は大丈夫ですから……ホントに……大丈夫ですから……グスッ」
「ハンナ!」
「ゴサック、大丈夫よ。大丈夫……なんだけど、どうしてだろ? 涙が止まらないの! ゴサックゥ!」
「ハンナ! ヒロ、表に出ろ!」
「えぇ!」
なんだろ、俺は素直にごめんなさいと頭を下げたことでハンナと呼ばれた女性は許してくれたと思えたのだが、どうも心の底から許した様子には見えない。その証拠に「大丈夫だから」と言いながらゴサックの庇護欲を掻き立てているようにしか見えない。そしてゴサックは俺を見据え「表に出ろ!」と声を荒げる。
「村長……」
「ああ、やめんかゴサック」
「村長、止めないでくれ! 俺の……俺の可愛い奥さん、ハンナが陵辱されて黙っていられるか!」
「ゴサック……」
「えぇ~ちょっと勘違いしただけじゃん……」
「いいや、ハンナの気持ちを考えたら、ハンナが許しても俺が許せん!」
「村長~」
「ハァ~分かっておる。だから、お前もそんな泣きそうな顔をするんじゃない」
「でも……」
『ピィ~~~~~』
村長はゴサックをなんとか止めようとしているが、ゴサックは止まるつもりはないようだ。それにハンナはゴサックの陰で小さくガッツポーズしてますよね? 俺、あなたに恨まれるようなことはしていないつもりですが?
「ゴサック、俺だけに落ち度があるのか?」
「あん? なんのことだ? いいから、表に出ろ!」
「いや、出ないし。先ずは俺の話を聞け!」
「いいや、聞かない! 早く出ろ!」
「ゴサック……」
出ろ! 出ない! と俺とゴサックが言い合いしているのを見てほくそ笑んでいるハンナの顔が怖い。そんなに俺がゴサックに殴られるところを見たいの? いや、素直に殴られるつもりもないけど。
俺は答えの出ない押し問答に辟易しつつ、ゴサックにビシッと人差し指を向けると「そんなに大切な人なら、なぜ食事前に俺に紹介しなかったんだ!」と言えば、ゴサックは「あ……」と口籠もる。
俺だって最初にちゃんとゴサックの奥さんだと紹介されていたならば、こんな面倒なことになるような言動は控えていた。まあ、よく考えてみれば日本でもモブ中のモブで『ウォーリーを探せ』並に埋没しがちな平均的な顔立ちだからモテないのは自分でもよく分かっているつもりだ。
でも、異世界なんだもの! ちょっとくらいは期待してもいいんじゃないかと思っていたが、美醜に関してはほぼほぼ同じ価値観の様なので、異世界でも諦めるしかなさそうだ。俺にはセツしかいないのかもな。
『ピィ~』
「セツ、二人で強く生きような……」
『ピィ』
「すまん!」
「チッ」
俺の訴えにゴサックが口籠もり、俺が異世界でもオヒトリサマの未来がほぼ確定したことでセツに癒やしを求めていると、ゴサックの態度が急変し俺に頭を下げる。そして、ハンナよ。そこで何故舌打ちをする?
「いいよ。俺も悪かったから」とゴサックの謝罪は素直に受け取るが、分からないのはハンナだ。だから、俺はハンナの顔をジッと見る。ハンナはハンナで俺のことを睨み付ける。
「えぇ? なんでなん?」
「どうした?」
「ねえ、村長。俺は、昨日この村に初めて来たと思うんだけど?」
「何を言いたいか分からんが、確かにそうじゃな」
「だよね? なら、なんで俺は初対面のハズのゴサックの奥さん、ハンナに睨まれているのかな?」
「「「へ?」」」
「あ!」
俺の質問に対し、村長達がハンナに視線を向ければ、そこには俺を『親の仇』の様に睨み付けているハンナに気付けばハンナはハンナでしまったという顔になる。
「ハンナ?」
「ねえ、もしかしてどこかで知り合いだったり?」
「そうなのか? ハンナ」
「ち、違うわよ! こんな平たい人なんか見たことないし!」
「平たいって言われたョ……」
『ピ……』
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