第1話 いよいよ出発!
「ヒロ様、目的の場所はあちらの方角になるかと思います」
「そう、分かった。じゃ……」
今、俺達は王都の伯爵邸の上空……どのくらいかは分からないけど、地表からは認識しづらい高さだと思いたい……その位の高さにオジーと二人で空中に固定した結界の上で、目的地の方角を確認していた。
「ちょ、ちょっとお待ち下さい」
「え? 何? もしかして忘れ物したの?」
「いえ、そういう訳ではありませんが……」
「何? もしかしてトイレ? なら「そうじゃありません!」……じゃあ何?」
「……」
「もう、何もないのなら行くよ」
「ですから!」
「だから、何? もう、別に無理に着いて来なくてもいいんだけど?」
「いえ、それだけは譲れません!」
目的地の方角を向き、さあ出発という段階になってオジーが急に待ったを掛けてきた。
でも、特に忘れ物でもトイレでもないというが、「じゃあ何?」と聞いてもなかなか答えてくれない。
別に同行して貰わなくてもいいんだけどと「文句があるなら着いて来なくてもいい」と言えば「それはダメです!」と妙にキリッとして答える。
「じゃあ、何?」
「では、言わせて頂きます」
「分かったから、早く言いなよ」
「コホン……これで旅と言えるのでしょうか?」
「これって……これのこと?」
「はい……」
オジーが俺に言いたいことは旅の方法であり、こんな方法で行くのを旅と言っていいのかということらしい。
そうは言うけど自分で歩くにはキツイし、馬車はお尻が痛いし乗り心地が悪くて酔いそうだし、じゃあ直の乗馬はどうかと言えば乗ったことないから今からは無理だと言えば「そんなことはありません!」と反論してくる。
「とにかく、これも俺の能力の内だから歩くのと一緒でしょ。だから、ヨシ!」
「何がヨシ! ですか! いいですか。旅と言うのはですね」
「じゃあ、オジーはそうすればいいじゃない」
「へ?」
「だから、俺のやり方を認めないと言うのは分かったよ」
「分かってくれましたか……」
「うん、だからオジーは自分の好きな方法でどうぞ。俺はコレで行くから」
「え?」
「じゃ、オジーは下ろすね。次に会えるのは目的地だね」
「ちょ、ちょっとお待ち下さい!」
「もう、何? 日が高い内に出発したいんだけど?」
「分かります。それは分かりますが、私だけ別の方法と言うのは如何なものでしょうか」
「如何なものも何もオジーが認めないって言うんだからしょうがないでしょ」
「……そこは従者である私の意見を汲み取ってくれる流れでは?」
「なんで?」
「なんでって言われると困るのですが、陛下からは旅するようにと言われていますし……」
「いやいやいや、目的は色んなところに行くことでしょ。なら、方法がどうでもいいじゃない」
「ですが……」
「うん、だからこの話はどこまで行っても平行線だからさ。オジーは好きな方法でどうぞってことで「だから、お待ち下さい!」……もう、面倒くさいなぁ」
「面倒くさいとはなんですか!」
「じゃあ、俺のやり方に文句は言わないのね」
「……」
「じゃ「分かりました! このままで結構です!」……そ? じゃ、行くよ」
「……あの、捕まってもいいですか?」
「お断りします。じゃ、出発……ってほらぁ~オジーのせいだからね」
「申し訳ありません……」
と、言う訳でなんとか出発しようとしたところでまさかの問題発生。
まぁ予測出来たこととはいえ、まさかこうなるとはね。
時間を少し前に戻す。
まず最初に王から「冒険者ギルドに依頼は出しておいたから」との連絡を受け、冒険者ギルドへと出向くことになったのだけど「結局、俺への依頼になるのだから直で言えばいいのに」とぼやけば「それでは記録に残りませんし、ヒロ様の功績にするためには必要なことですから」とオジーに言われ「それもそうか」と重い腰を上げ冒険者ギルドへと出向くと入った瞬間にどこかで見た覚えがある人が俺達……いや、正確には俺をロックオンして離さない。
「ヒロ様、どちらへ?」
「……今日はちょっと」
「そういう訳にはまいりません」
「……分かったよ」
さっきから視線を逸らさずにジッと俺を見ている受付の女性にオジーも気付いているハズなのに有無を言わせず受付の方へと連行される。
「……」
「……」
俺を凝視している受付の前は当然の様に空いていたけど、俺はそこではない少し離れた位置の空いている受付へと進もうとすれば「コホン!」と強めの空咳が聞こえてきた。
俺はそれを無視して受付へと進めば「コホン、コホン! ウオッホン!」と更に強めの空咳で注意を引こうとして来たが、もう少しで受付というところで「すみません。ちょっと休憩に入らせて戴きます」と受付カウンターの上に『休憩中~CLOSED~』と札を出されてしまった。
「えぇ!」と目の前のお姉さんに嘆願するように見れば「申し訳ありません」と頭を下げられたが、チラリと横目で例の女性の方を見ていて、その女性は親指を立て「グッジョブ!」とでも言っているのだろう。
俺は「はぁ」と嘆息しながら、諦めてその女性の前に座ると「お久しぶりですね。ヒロ様」と満面の笑顔で言われた。
「はい、お久しぶりですね。ミーさん」
「ふふふ、私の名前を覚えていて下さったのですね」
「……まあ」
「それで今回やっと王都の冒険者ギルドへと来てもらえたのですが、ご用件は? ちなみに私の予定でしたらいつでもどうぞ」
「……あの、これなんですけど手続きをお願いします」
「はい。分かりました。少々お待ち……を……これって……」
「特に問題はないと思いますが?」
「……」
俺は諦めミーさんの前に座ると目を伏せながら依頼書を差し出すと、それを受け取ったミーさんは内容をサラッと確認してから、もう一度ジックリと見直しているところをオジーが「問題ないはずですが」と声を掛けるもミーさんは依頼書から目を離さないままでいる。
「あのぉ~もしもし……聞いてくれないよオジー」
「これは困りましたねぇ~いっそ他の受付じ「これはホントですか?」ょ……ここに王家の紋章もありますよ」
「ええ、確かにありますね……ハァ~」
依頼書から顔を上げないミーさんの対応に困り他の窓口に行こうかと考えているとミーさんが顔を上げ、この依頼書の内容が本物かどうかを確認して来たが依頼書の右下には王家の紋章と王のサインもしてあるため、偽造と考えるには無理がある。
それを分かってかミーさんは嘆息し諦めた様に依頼書の受付を済ませた後に依頼書を俺達の前に差し出したので、それを受け取ろうとしているんだけど……
「ミ、ミーさん?」
「……」
「えっと、依頼書から手を離してもらえないでしょうか?」
「……ですか?」
「え?」
「ですから、依頼の内容は理解しましたけど……目的地を教えてもらえることは出来ませんか? もしくはお帰りの予定でも構いませんが?」
「すみません。依頼内容については他言無用とされていますので」
「そうですか……」
ミーさんは俺達の予定を知りたいと言うがオジーはそれを機密事項だからと遮るとミーさんもそれ以上は無理と悟ったのか素直に依頼書から手を離し「では、依頼達成を願っております」と頭を垂れ俺達を見送ってくれた。
「……教えてくれないのなら着いていくまでです」
俺達が冒険者ギルドを出ると後ろで何か騒がしかったようだけど、急に背中がブルッとしたのでオジーに「とにかく急ごう」と伝え今は空の上にいる。
「ほら、オジーがさっさとしないから……」
「……申し訳ありません。ですが、まさかこんな行動に出るとは……」
「ハァ~王都でも俺のことをジッと待つくらいですからね。ムダに行動力だけはあるんでしょうね。あ!」
「どうしました?」
「今、目が合った気がする……」
「まさか! だって、ここは相当な高さだし……認識阻害もされているハズですが……」
「うん、まったく役に立ってないみたいね。じゃ、気を取り直して行こうか」
「は、はい!」
俺達の眼下ではミーさんが旅装束でジッと上を見上げている。
俺はあの時感じた悪寒はこれだったのかと納得出来たのでオジーと目を合わせ頷くと気を取り直して出発することにした。
「で、何故にそこなんでしょうか?」
「ん~単なる好奇心だから。さぁ行くよ! セツ、オジーしっかり捕まっててよ」
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