第55話 悪夢? 再び
「ふはは、少し焦り過ぎたのではないですか」
「ダエス卿……」
「まあ、お気持ちは分かりますが少々気が急いたみたいですね」
「それは確かに認めるが……二十六ではな……」
「正室に迎えようとするから面倒が多いんですよ。いいですか、相手は客と言え、元は平民なのですから側室として迎えるとでも言えばイヤとは言わないでしょう」
「……ダエス卿、それも難しくなりそうだぞ」
「ハァ~陛下が守護することを宣言されましたか……で、あれば……」
「ダエス卿、聞かなかったことにする」
「ふはは。互いにそれがよいでしょう。では、また機会があれば……」
「ああ」
セドリック卿は嫌らしい笑みを浮かべたまま、その場を離れたダエス卿をこの場で見るのは今日が最後になるかもなと、ダエス卿の野心がいつかは王の影の手に寄り日に晒され、落日を迎えるだろうと思わずにいられなかった。
「ふん! 彼の古語にも『将を射んと欲すればまず馬を射よ』とあったではないか。王があの女を保護すると公言するならば、あの凡庸な男をこちらへ引きずり込めばいいだけの話だ。ふはは、いくら客と言えど男であることには代りあるまい」
ダエス卿はウララが王家に保護されるならば、同郷である男を引きずり込めばウララも無視することは出来ないだろうと考え、手下に対しどの様な手段を用いてもヒロを自分の陣営に引きずり込むことを画策する。
「ふん! 所詮やりたい盛りのサル同然の男など赤子の手をひねるよりも簡単なものよ」
そう、思っていたダエス卿だが、王を遮り発言する女性の言葉に先程まで間違いなく達成出来ると思っていた計画が砂上の楼閣の様に崩れていくのを感じた。
王の発言を遮ることが可能な女性……そういった愚行とも思える態度が許される立場の女性となれば推して知るべしとなる。
そして、その女性が客であるヒロの腕に自らの腕を絡ませ「私はここに客であるヒロ様との婚約成立を宣言する!」と言った。
「クリス……」
「陛下……いえ、お兄様。私はここに客であるヒロ様との婚約成立を宣言します」
「クリス……そうか。ダメだったのだな」
「……いいえ、違います! 決して全ての書簡が『お祈り』だったからではありません!」
「……もう、自分で答を言っているよね」
「いいえ、私なりに熟考した結果です」
「ふう、まあいいけど肝心のヒロ殿の気持ちは確かめたのかな。いや、ここでは止めておこう」
いきなり現れたクリスに腕を組まれ、何がどうなっているのか分からないが悪夢再びというのはなんとなく分かる。
要はクリスが送ったラブレターが全て形を変えて『クリス様の幸せをお祈りしております』と返されたのだろう。
だからと言って俺なのかよ!
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