第49話 I’ll be back
ちょっとした任命騒ぎの後にこれまでのことや日本での出来事や先輩との間柄を掻い摘まみながら話し終えたところでお開きとなる。
「では、またな」
「はい」
「それとヒロ殿」
「へ?」
王が立ち上がり挨拶を交わし終わったと思ったら、名前を呼ばれてキョドってしまう。
いや、最後の最後に何があるんだと身構えていると「アレをよろしく」と言われ「???」となる。
アレってもしかしなくてもアレのことだよなと頭の中で考えてみるが、アレは元々の恋路に走ったんじゃないのかと思い返すが……多分、王がそう言うってことは無理目だと思っているんだろうな。
ってことは……『I‘ll be back』って言ってはないけどそういうことかよとその場で項垂れてしまう。
「ヒロ殿、気持ちは分からないでもないが、アレでも私の妹なのだから……」
「あ、すみません……ですがホントなんですか? それはどのくらいの確率で?」
「120パーだな」
「げっ……」
「だから……そういうのは……」
王が俺の態度に辟易しながらも自分なりのと言うか世間一般的な考えを話してくれた。
曰く貴族同士の婚約はティーンエイジのゾーンに入る前にある程度の打診があり、ティーンエイジャーとなる頃には正式に婚約が発表され、ティーンエイジャ―が終わる前に成婚となるらしい。
だから、クリスが今から昔恋慕していた男性がいたとしても特に問題がなければ、既に妻帯者となっているであろうこと。
だが、この国では一夫多妻が認められているから、クリスがそれでもと懇願すれば叶いそうでもあるが、問題となるのはクリスが王妹であるということ。
この国の最高権力者の妹を側室、妾として受け入れるのは家格から難しい。
かと言って既にいる正室を押しのければ王家が強権を発動し好き放題していると反感を買うのは必至だろう。
なので、魔力を得たと嬉々として出て行ったクリスだが、『お断り』の手紙が届くまでの間は大人しく恋い焦がれる乙女と化しているだろうが……全ての手紙が届いたらクリスは『愛の狩人』となり俺の前に現れることだろうと嫌な予言を聞かされた。
「ほら、どうよ!」
「どうよって……回避するのは?」
「すまんな」
「えぇ……!」
王からの話を聞き、先輩がドヤ顔でフフンと鼻息を荒くしているが、そんなことよりも回避する手立てがないのかと王に確認すれば軽く手を振り聞きたくない言葉を発する。
「ま、そういう訳だ。とりあえず謁見での婚約発表はナシになったことだけは確かだな」
「はぁ……そうですか」
「おっと、忘れていたがコスメ製品のお披露目も兼ねているからウララ嬢、よろしく頼むぞ」
「お任せを」
「うむ、ではな」
「「「はい」」」
「見送りはいらない」と言う王を部屋から出るまで見送り、慌ただしかった日々が終わる……ハズだった。
俺は伯爵に断りを入れ与えられた自室に戻ろうとしたところで先輩が俺の腕を掴んで離さない。
「えっと……何か?」
「何かじゃないでしょ!」
「え?」
「さっき言ったこと忘れたの? ほら!」
「あぁ~」
さっきデパ地下スイーツを出したことで、先輩が「自分の!」と騒がないようにちゃんと確保しているからと言ったことを思いだし「では、はい」と先輩にデパ地下の紙袋をそのまま渡せば先輩の顔が一瞬で破顔する。
「ありがとう!」
「いえ。ですが……」
「あ!」
「「「……」」」
「ダメ! これは私の!」
「「「えぇ~」」」
先輩はほくほくした顔で俺にお礼を言うが、俺はそんなことよりもと先輩が持つ紙袋の中味に興味津々なメイド達と伯爵を先輩が押しのける。
押しのけられた伯爵達は俺に何かを期待するような目で見ているが、ここでインベントリから出してしまうと有難みが薄れてしまうと思い伯爵達には首を横に振りお断りの意を示す。
「そんな……」
「ヒロ様……殺生です」
「脱げばい「ちょ、セシル!」い……それでもダメなの?」
服に手を掛けたセシルをどうにか止め、「また今度特別な日に」と曖昧な約束で納得して貰う。
これでやっと休めると自室へとオジーに案内され入ると同時にベッドにダイブすれば「ヒロ様」とオジーに咎められる。
「何? 特に汚れてないから大丈夫でしょ」
「そうですが……ハァ~もういいです。夕食の前に起こしに来ますね」
「うん、お願い」
「では、セシル。後は頼みましたよ」
「はい!」
「え? ちょ、ちょっと待って! オジー、どういうこと?」
「はい?」
「だから、なんでセシルを置いて行くの?」
「なんでって、セシルはヒロ様のお世話係ですよ? お忘れですか?」
「忘れてないよ! 忘れてないから、聞いてるんだよ!」
「ヒロ様……私がお嫌ですか?」
「セシル様、ヒロ様はお嫌だそうです。だから、引き続き私がお世話しますので、セシル様はお一人で淋しくお慰めしてはどうですか。うふふ」
「ぐぬぬ……ヒロ様! 嘘ですよね?」
「はい、いいから三人とも静かにしようね」
「「「え?」」」
俺は三人を柔らかい結界で包み込むとそのまま部屋の外へと押し出し、誰も入って来られないように結界を張る。
「「「……」」」
扉の向こうで何か言っている気がするけど、結界があるからよく聞こえない。
「ふぅ~これからどうなるんだろうね」
『モテ期到来ぃ~?』
「どうかな? どちらかと言えば物珍しさかと思うけどね」
『そうなのかなぁ~』
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