第42話 噂の真実
「コホン……」
「は! ちょ、ちょっと離れましょうか」
「あ……すみません、つい……」
王の話に寄れば、未だよく解明されていない魔法の一つとして『空間魔法』があり、ほぼ伝説として語り継がれているのが現状らしい。
そして、そんな空間魔法の転移を体験したことで魔法オタクとして知らない者がいないクリスが暴走してしまったと空咳の後に王が説明してくれた。
「まあ、あのカタブツとして有名なクリスがそこまでヒロ殿に警戒していないのは僥倖だろう。さぁヒロ殿、このチャンスを逃す手はないよ。思う存分に発揮して欲しい!」
「え? いや、でも……いいんですか?」
「いいに決まっている。なあ、クリスよ」
「はい! こんな私でよければ……ですが、初めてなので……よろしくお願いします……」
「えっと……何を言われているのか分からないけど、じゃ……ふん!」
「あ……ん……んん……ふっ……はぁ……」
王の言葉に思うところがない訳ではないが、王に実際に見て貰わない限りは前に進めないと判断し改めてクリスの両手を握り直すがクリスも先程とは違いなんの抵抗も見せないので、魔力を流し込むと同時にクリスからは艶めかしい声が漏れ出す。
「ヒロ殿、大丈夫なんだろうね?」
「多分、大丈夫です。ですけど、これ以上続けると……」
「ると?」
「あぁ……もう、だめ……」
「あ!」
艶めかしい声を漏らし、そのタイトな身体を艶めかしくクネクネとさせ行き場を失ったリビドーが掃き出し先を求めて俺に抱き着くと同時にクリスが俺の口を塞ぎ、まるで獲物を探すように俺の口内をクリスの舌が躍動する。
「クリス、ちょっと落ち着こうか。ヒロ殿も一旦止めてくれ」とジュルジュルと俺の口内から何かを吸い出そうとしているクリスを王が引き離せば「あぁ……」とどこか物足りなさそうな目で俺を見ているクリスだった。
「……凄いの一言だな」
「ええ、まさか俺もここまでとは思いませんでした」
「ふむ。多分だが……普段、抑え込んでいた欲求も上層へと出てくる様だね」
「欲求? 陛下、それだと私がまるで痴女みたいではないですか!」
「いくらなんでも私もそこまでは言わないよ。でもね、クリス。君は普段から『結婚したい!』『いい男がいない!』『誰も私を見てくれない!』とぼやいていると耳にしたが?」
「うぐ……」
まるで軟体動物のように俺にしがみついていたクリスを剥がした王がまるで信じられないものを見たとでも言いたげに俺に言うが、俺もまさかここまでされるとは思わず心の中で『大変、美味しゅうございました』と手を合わせるのを忘れない。
だけど、我に帰ったクリスはそう言われて納得出来る訳でもない。
痴女ではないと言うが、さっきまでの様子を実際に見てしまえば、「誰が何を言う」と十人中十二人が思うことだろう。
それに王の耳に届くまでにクリスのぼやきが広がっていることも含め、俺の噂の体現者として選ばれてしまったのであれば、ご愁傷様としか言えない。
「まあ、君の欲望については後ほどゆっくり話し合うとしてだ。どうだ? 何か変わった所はないか?」
「え? 陛下、何を言われているのですか?」
「だからね、君の身体で特に変わった所はないのかと聞いているのだけど、どうかな?」
「えっと……どういうことでしょうか?」
「ヒロ殿、これはどういうことなのかな?」
「どういうことかと言われても、鑑定するなり、測定するなり方法はあるのではないのですか?」
「ん~ここには多分、測定器はないよね。じゃあ、クリス。いつもの調子でちょっとだけ魔法を使ってみてくれないか。あ、もちろん、この屋敷に影響が出ない魔法を頼むよ」
「……分かりました。命令であればしょうがいないですね。ですが、影響が出ないとなれば、『灯り』でしょうか? では、灯り……え?」
「「おぉ!!!」」
クリスが何気なく行使した灯りの魔法は普段のクリスであれば、回りがほんのり明るくなる程度だったので、クリスは何も意識せずいつも通りに魔法を使ったのだが、その威力が思っていたものと違い、目が潰れるかと思うほどの眩さだった。
「え……ウソ……」
「うむ、噂は真実だったと言うことがこれで実証されたな」
「……俺は罰せられるのでしょうか?」
「そうだな……」
クリスは自分が思っている以上に明るい灯りに驚くと同時に目がチカチカしている横では王が確信していた。
俺はもしかしたら罰せられてしまうのかと身構えていたが、王は腕を組み右手で顎を触りながら思案顔になる。
そして顔を上げ、俺を見てニヤリと笑うと「すまない」と言い頭を下げた。
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