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失恋のその後・3

―――ルシア妃の部屋を飛び出してから数日後、エマは、カルタシア侯爵家に呼び出された。


祖父のタウンハウスに出向いてみると、サラマス伯爵叔父夫妻も父も同席していた。もちろん、パウラもいる。会うのは、狩猟大会以来だった。


パウラと互いに再開を懐かしむ暇もなく、祖父が話し始めた。

「エマ、お前はエギナ公国へ行きなさい」


―――話が見えない。


「狩猟大会での事は、不可解な事が多すぎる。安全の為にも、国外に出なさい」

叔父も父も頷いている。


「パウラは? パウラも同じでしょ?」

私が驚いてパウラに顔を向けると

「エマ、お前の回りが不可解なんだ」

「私がここにいると、パウラが巻き込まれるって事?」

「そうとは言っていない」


―――話し合いは平行線だった。

王都からなるべく遠くに離したい祖父と、逃げるようで嫌だ、と言い張る私。


自分が王都から、テルセオから距離的に離れる程、グロリア・クルーズが喜ぶような気がするのだ。

それだけは、嫌だ。 あの女を喜ばせるような事をするのは、嫌だ。


結局、祖父が折れてパウラと共に、カルタシア領グレタ城へ行くことで納得した。


どちらにしろ、私は領地へ戻るつもりでいたので、ベニドニアに行くのもカルタシアに行くのも、対して変わらない。


一段落したところで、来訪者の知らせが届いた。

テルセオの兄、イラリオだった。コドセラの領地に戻る前に、どうしても私に伝えたい事があるといって、訪ねてきたのだった。


※※※


テルセオの兄、イラリオ・コドセラ侯爵は、エマに頭を下げていた。

「ご令嬢の怒りは最もだが、弟に時間を与えて欲しい。 彼は、今、混乱しているだけだ」

必死に懇願するコドセラ侯爵を見て、私は困惑していた。


祖父が訳を尋ねると、口外してはならない話なのだが……、と前置きをして、話し出した。


レオナルド王子の命で、クルーズ男爵家を調べていたテルセオは、グロリア男爵令嬢が自分へ向ける好意を利用していたのだった。


その事に罪悪感を持っている為に、かの令嬢を邪険に扱うことが出来ないのではないか。

時間が経てば、いろいろと不可思議な点がある事に気が付くはずた。

自分が()()()()()かもしれない事に気付くはずだ。 そう、彼は力説した。


―――ミイラ取りがミイラになった。そう言いたいのだろうか。


「馬鹿にしないで」

エマは唸るような、自分の声に驚いた。


「どんな理由を付けた所で、私を捨てて、あの女を選んだのには変わらないわ。私の事が本当に好きならば、()()()、足掻くのでは?」


私に言い訳することもなく、「婚約を解消して欲しい」と言った。

今思えば、何故、素直に解消話を受け入れてしまったのだろうか。 自分自身に腹が立つ。


私は静かに席を立ち、頭を下げている彼の兄の横を通りすぎた。


※※※


何処へというわけもなく、長い廊下をひたすら前を見て歩いていた。 俯いたら、また、涙が溢れそうだ。


「エマ、待って」

後を追ってきたパウラが、私の腕を捕まえた。

「落ち着いて、一旦落ち着いて」

ハァハァと、乱れる息を整えている。パブロの姿もあった。


「イライラする時は甘いものよ。甘いものを食べに行きましょう」

パウラは私の腕に自分の腕を絡ませ、エントランスへと向かった。


―――私達三人を乗せた馬車が向かった先は、王宮だった。

(また、王宮ですか……)

「また、王宮か……って思ってるでしょ」

横を見ればパブロが、ニヤニヤと私を見下ろしていた。


「あなた、忘れてると思うけど、明日セシリアが領地に帰るのよ」

「そうそう、それでレオナルド殿下が元婚約者候補達を誘ったんだよね。 エマも『王宮かぁ』っていいながら、アリスに参加の返事、頼んでたよ」

パウラは呆れ、パブロは楽しそうに笑っている。


二人にからかわれ、不貞腐れてながらレオナルド王子の宮殿への通路を歩いてた。 すると、前方から第一王子アレハンドロの婚約者候補に名の上がっている令嬢達が近づいてきた。


彼女達は、私の姿に気が付くと小走りでやって来て、私の手を取りながら「応援しているわ」「あんな女に負けないで」と口々に声を掛けてくる。


勢いに押され「ありがとうございます」と答えていたが、何が起きているのか、訳がわからない。





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