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狩猟大会*九 *狩猟大会

メインイベントの狩猟大会が始まる。

凛々しい乗馬服の男性貴族が、自慢の馬を伴い会場に集まってきていた。


令嬢達は、ロープで仕切られたギリギリの際に立ち、自分色の花輪を手に、お目当ての男性の登場を待つ。

エマも自分の色、水色とオレンジで編んだ花輪を持ち、テルセオの登場を待っていた。


一際高い歓声が起こった。いよいよだ。


セシリアがいうには、テルセオとルーカスは一緒に登場する。

「私、毎年ルーカスに渡してるから、一緒にいてあげる」

緊張するエマはセシリアの手を握り、テルセオが目前に来るのを、ドキドキしながら待っていた。


次々と彼女達の目の前を、馬首に様々な色の花輪で飾られた愛馬と、花輪が積み上がった塔を高く掲げた従者、そして、誇らしげな騎手が通りすぎていく。


―――来た。


にこやかに手を振るルーカスと対照的に、テルセオは前を向いたまま、ニコリともしていなかった。

それにも関わらず、ルーカスと同程度の花輪が馬の首を飾っていた。

また、横を歩く従者の棒にも花輪が積まれていく。


テルセオは、エマと揃いで作った騎士服を着ていた。 それだけで、嬉しかった。

「従者が差し出す棒に、花輪を入れるのよ」

セシリアが教えてくれる。


不機嫌に前を見続けているテルセオの従者が近づいてきた。 歓声が上がり続けている。

その声に負けないように、エマは必死に声を掛けるが、かき消されてしまった。

従者の差し出す棒に花輪を入れようとした時、テルセオがこちらを見た気がした。一際、大きな歓声が上がる。


テルセオが従者に何か話しかけると、従者はエマが差し出していた花輪を、彼に渡した。

テルセオは、冠のように頭に水色とオレンジの花輪を乗せ、何事も無かったかのように再び歩き出した。


たったそれだけ、それだけの事だったが、エマは救われた。 ()()を感じられた。


回りにいた令嬢達から、拍手喝采が沸き起こる。

「やったわね」

セシリアがエマをバグしながら、まるでついでのように、ルーカスの従者が差し出す棒に花輪を入れようとしていた。


すると、ルーカスもテルセオの真似なのか、従者からセシリアの花輪を受け取ると、彼女のラピスラズリの花輪を頭に乗せた。


テルセオの時とは違う、悲鳴にも似た歓声が上がる。


ルーカスは、意味深な笑顔をセシリアに向け、得意気な表情(かお)で、テルセオに続いていった。


エマは、目をパチクリさせているセシリアに「今のはどういう意味なの?」と尋ねると、

「あなたの想いを受け取ります……って意味よ」

そう言いながら、セシリアの顔が朱に染まった。


※※※


銅鑼の音が響き渡る。 狩猟大会の始まりだ。

約二時間後に再び銅鑼が鳴るまでの間に、獲物の数や大きさで優劣を競う。


その間、女性達は森のあちらこちらに張られたテントの中で、ひたすらお喋りという社交に励み、銅鑼が鳴るのを待つ。


ひとまず家族毎に、王族や国賓のテントを回り挨拶をしなければならない。

エマ達は、レオナルド殿下のテント―――言ってしまえばサラのテントで待ち合わせることにした。


エマとパウラは、家族連れ立ってエルギ公爵のテントへと向かった。

ニオラオス公子とルキア妃に、エマとテルセオの婚約の件を伝えると、大層喜び、出来れば挙式に参列したい、と言ってくれた。

テオドロスも、乗り気だった。


この間、嫌な別れかたをしたので、エマは、少し気まずい思いをしていたが、彼の様子をみるに大丈夫なようで安心した。


エマとベニドニア伯爵は、パウラ達と別れアンダクス侯爵のテントへと向かった。

テント内には彼の兄夫妻もおり、エマは初めて会う彼らに挨拶をした。

「テルセオのあんなニマニマした顔は、今まで見たことがない」

テルセオによく似た兄は、そう言って驚いていた。


そんなに、ニヤついていたかしら?と不思議に思っていたエマだったが、侯爵夫人に「解りにくい息子だけど、貴女の事を大切に思っているのは確かだから」と何度も何度も繰り返し伝えられた。


その後も、いくつかのテントを挨拶をして回り、パウラと合流したエマは、父親と別れ、サラのテントへ向かった。


すると、いつかの()()()()()がグロリア・クルーズと一緒にいるのが目についた。

なんでまた、見たくない物を……と思いつつ視線を外すが、珍しい組み合わせだな。と違和感を感じていた。


※※※


サラのテントを覗くと、彼女はソワソワと落ち着きがなかった。 セシリア、アンヘラもテントに集まって来た。その時―――


「私、言ったわ」

サラが、顔を真っ赤にして皆に告白した。 レオナルドに、紫水晶(アメジスト)のドレスの事を聞かれ、そして、伝えたと。


割れんばかりの歓声が上がり、一斉に祝福する。


「王子妃教育を受けるわ」

覚悟を決めたサラは、とても美しく凛々しい。

「たまには息抜きしたいから、王宮のお茶会に来てくれるかしら?」

再び歓声が上がり、皆でサラに抱きつく。


―――その時、狩猟大会終了の銅鑼が鳴った。


ほとんどの貴族が王女に獲物を捧げる中で、意中の相手がいる令息が、会場の何処かにいる目当ての令嬢の元へと急ぐ。


サラはテントの前で、レオナルド王子を待っていた。エマ達も彼女を側で見守る。






明日 9時

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