狩猟大会*七*回想
不愉快な気持ちのまま離宮から戻り、自室のベッドに大の字で寝転がっている。 気持ちが高ぶって、どうにも寝付けない。
前もってテルセオから説明は受けていたが、かなりの衝撃だった。
聞くのと、見るのとでは、全く違う。
あの女の得意気な表情。思い出すだけで腹が立つ。
(早くあの女との仕事が、終わればいいのに)
クッションをギュッと抱きしめた。
―――あの現場を、パウラも目撃していた。 怒った彼女は、エマの父親に抗議しに行ったが、逆に諭されてしまった。
「男の仕事に私情を挟むな」
納得出来ないパウラだったが、確かに「報告していた」と、女性騎士は言っていた。
「それに、夜会で腕は組むだろ?」
そう言って、エマの父親は、取り合わなかった。
……そうなのだ。あの女性騎士のこれ見よがしな態度が気に障るのだ。 感情論だ。
そして、その後もあの女性騎士……セシリアが名前を聞いてたな……。
※
―――エマとパウラが、エマの父親に軽くあしらわれ、何かモヤモヤしたものを抱えながらいた、ちょうどその時、サラがレオナルド王子に呼ばれていた。
「ルーカスをからかうチャンスだわ」
セシリアが、ツツツッとサラに近寄り、さりげなく同行した。
王族が並んで腰かけている壇上の、その陰にルーカスが控えていた。
親しげに顔を寄せ合い話すサラとレオナルド殿下を、生暖かく見ていたセシリアは、そっとルーカスに近寄り、囁いた。
「エマが、やたら不機嫌なんだけど。 テルセオはどこ?」
「巡回か報告だと思うけど」
ぶっきらぼうに答える。
「抱き合ってたらしいわよ」
セシリアは、少し話を盛った。
チラッとセシリアを見た彼は、ため息まじりに告白した。
「グロリア・クルーズだろ? 最近、やたらとチョッカイかけてくるんだよ」
「あら、ルーカスにも?」
「違う。テルセオにだよ。彼女から奪い取れると思ってるみたいで……どこに、そんな自信があるんだか?」
明らかに嫌悪感が滲み出ていた。
「まぁ、彼女が、護衛やら何やらと親しげにしてりゃ、勘違いするか……」
……まるで、エマのせいみたいな事を言っていた。と、セシリアが憤慨していた。
※
私の態度が悪いのかしら? パブロと近しいかしら? テオドロスとも……。 わからないわね。 明日、パウラに聞いてみよう。
それにしても、あの女、グロリア・クルーズ。 絶対に許さないから。 全て演技だったと知らされた時、どんな顔になるのかしら?
その場面を想像すると、少し気分が晴れた。
明日の午前中は、楽しみにしている騎射がある。 テルセオと揃えた乗馬服もある。
テルセオに花輪を渡さないと……。
エマの瞼が重くなり、抱え込んでいたクッションが、ゆっくりとベッドから落ちていった。
18時




