表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/67

最高の出会い

『テルセオには、昔から想い会っている令嬢がいる』


その話は、真しやかに広まっていったようだった。

お茶会での同情したような視線、腫れ物に触るような会話……。


「ごめんなさいね、初めてお会いするのに……」


困惑した表情で語り掛ける主催者のセシリア・ミーニャ伯爵令嬢は、テルセオの幼なじみだと聞いた。

彼女から彼の幼い時の話を聞けたら……と思って誘いに乗ったのだが、タイミングが悪かった。いつの間にか面倒な事になっていた。


なぜなら、彼女こそが『想い会っている令嬢』の一人と噂されていたからだった。


パウラが一緒で良かった。本当に。


「いえ、テルセオ様のお話が聞きたかったので」

努めて笑顔で返す。 が、回りの令嬢は凍りつく。

「これじゃ、何も話せないわね……」

セシリアはため息きながら、同席を求めてきた。

「単刀直入に言えば、あの噂はデマよ。彼は、女性嫌いだと思っていたもの。 まぁ、幼なじみのよしみで、他の令嬢よりかは、話はしていたでしょうけど。それだけよ?」


セシリアは真剣な顔で、そう宣言した。


「それに遠征に出かけた時、彼の腕にあったハンカチは……あなたのでしょ?」

「えぇ」

あんな小さなハンカチが、人の目に止まるなんて思ってもみなかった。

セシリアとパウラは顔を見合せ、同じ事を言った。


「大丈夫よ」

「大丈夫だわ」


「少なくとも、私達の知っているテルセオは、女性からの贈り物は、一切受け取らないから」

「たとえ、どんなものでもね」

「私が焼いた、誕生日のクッキーも突き返してきたもの」

セシリアは、コロコロ笑う。


それにしても、いったい何処からそんな話がでてきたのだろうか? 三人で首を捻るが、わからない。

とりあえず、悪意のある噂だと面倒なので、人から渡された飲み物には、口をつけないように注意された。


「何かしらの薬を入れられている事もあるからね、でも、ここの食事は安心して、私が責任を持つわ」

セシリアは、そう言い残して次のテーブルへと向かっていった。


セシリアと会話している様子を見て、令嬢達の警戒が溶けたのだろうか、ヒリついた雰囲気が無くなった。


その後は、席を移動しながらお茶会を楽しんだ。話題は、もっぱら『狩猟大会』だった。

やはり、テルセオとルーカスに人気が集まっているようで、今年はテルセオが参加すると、もっぱらの噂のようだ。


エマに、テルセオが参加するのか尋ねてくるのだが、わからない。としか答えられない。

参加するかどうかも話題になるのだから、人気の程が知れる。


女性も参加できるようなので、エマはそっちに興味があった。

幼い頃過ごしたカルタシア領でも、その後のベニドニア領でも、護身と馬術の訓練はしていた。 中でも騎射は好きだった。

話を聞いていると、参加する予定でいる令嬢は少なからずいるようだ。


「ねぇ、パウラ。 私も狩猟大会に参加できるかしら?」

「招待状はくるはずよ?」

「そうじゃなくて、こっちの方」

エマは、弓を引くポーズをとる。

「あぁ……」と言って、パウラはうなずく。

「返信に、記入すればいいのではなかったかしら? 確か……あぁ、ちょうどいいわ」

パウラは、一人の令嬢に声をかけた。 その彼女は、凛とした雰囲気を醸し出していて、風に揺れる銀髪が美しかった。


「彼女は、サラ・コエーリョ伯爵令嬢、昨年の狩猟大会に女性の部で参加していたわ」

互いに挨拶を交わした後、サラと呼んで欲しいと言われた。

「なるほど、エマ様も大会に出たいと?」

「えぇ。なので、大会の事を詳しく聞きたいの」


狩猟大会は、男性は放たれたウサギや野生動物を追うのだが、女性は騎射で的を狙うのだとか。

「それなら、私でも出来そうだわ」

エマの顔が、パアッっと輝く。

「もしよろしければ、我が家の騎射場で練習しますか?」

「騎射場があるのですか?」

タウンハウス内に騎射場を持っているなんで、どれだけ広いのだろうか。


驚いているエマの考えが通じたのか、サラはやんわりと否定する。

「我が領地は王都より近いので、毎年、狩猟大会前に、一度戻って練習しているんです」

二つ返事で、承知したものの、迷惑ではないか?と心配になった。

なぜなら、今さっき知り合ったばかりなのだから。


「大丈夫ですよ。毎年、パウラもセシリアも泊まりで遊びに来てますし、他に毎年参加する令嬢も数人来ますから。それに、いま話題のエマ様を、もっと知りたいという好奇心もあります」

パウラも、横から一緒に行こう。と、急かしてくる。


「それでは、よろしくお願いいたします」

「後で、招待状を送らせていただきますね」


爽やかなそよ風のような令嬢だった。 とても良い友人になれそうだ。

「パウラ、ありがとう。とても良い方達と知り合えたわ」

セシリアといい、サラといい、今日のお茶会は最高の出会いがあった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ