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波紋

私達は、仕事が終わった後、お互いの侍女も連れ立って城下に出向いた。

テルセオに渡す()()の材料を揃える為だ。 基本は、相手の髪・瞳の色に、自分の髪・瞳の色を合わせるそうだ。


彼の髪色に近い『黄』の紐が見つからず、悩んでいると、店員が黄と白の組紐を一度ほどいて、混ぜ合わせてから編み込み、薄い黄を表現する方法を教えてくれた。


狩猟大会が近付くと、組紐と造花が売れる。と、店員は教えてくれる。 なぜ造花なのだろう。


「意中の彼に花輪を編んで、馬の首に飾るんです。 この色は、自分の色にします」


なるほど、女性からの公開プロポーズ……

「ねぇ、勝手に結婚を申し込んで怒られないの?」

婚姻は家同士の取り決め、勝手にそんな事をしたら、大目玉だ。


店員とハズキが笑いだす。 ハズキは、笑いすぎで声が切れ切れになりながら教えてくれた。

「大丈夫よ。狩猟大会の余興だから。人気投票みたいなものね。想いを伝えるだけなのに、婚姻の申込みにはならないわよ」

「それなら、ハズキは彼にあげるの?」


少し考え込んだ彼女は、「そうね……渡すわ」と、自分の色、タンザナイト色、()()()()()の花を探し出した。


エマも自分の色である、アクアマリンとオレンジに近い花を探し始めた。


※※※


エマが意識を取り戻し、数日がたち、パブロも本来の仕事、船に戻った。 そして、ベニドニア邸は、いつも通りの平穏を取り戻していた。


屋敷の一角に、パブロが薬草園を作ってくれていた。領地で育てていたものや、こちらの気候にあった、初めましての薬草もあった。

意識のない間、アリスが代わって、パブロやテオドロスに育て方をレクチャーされたそうだ。


研究所も、大量の回復薬の納品が終わり、本来の研究や、治癒士としての仕事が始まった。


エマは臨時職員として、ほとんどの時間をハズキと共に医務室で治癒にあたり、また薬剤管理に費やしていた。

騎士団の医務室は日常を取り戻していて、訓練で作った打ち身や擦り傷の治癒位で、落ち着いていた。

そう思うと、遠征部隊に配属されている騎士達は、どんなにキツイ訓練をしていてのだろうか。 切り傷は当たり前だった。


以前は、午前中で帰宅していたのだが、時間をもて余すので―――本当は『お茶会』に精を出さないといけないのだろうが、最近は一日研究所にいることが増えた。

今日は、お茶会の予定がないのでハズキと、城下の食事処に来ていた。 以前、アリスが騎士目当てに入った、あの食事処だった。


そういえば、アリスと騎士団の訓練を見に行こうと言って、未だ行っていない事を思い出した。


相も変わらず、令嬢達で賑わっている食事処は、今日も騎士の姿があった。

この中に、夜会でお互いすました顔で挨拶を交わしていた令息がいるのかと思うと、おかしくなる。

ここで会う彼等は、とても人間味があり、好感が持てる。


ハズキと他愛もない会話を楽しみ、食事をしている姿を、じっと見つめている人物がいた事に、彼女達は気付かなかった。


※※※


その後、従姉のパウラと参加した夜会で気になる噂を耳にした。『テルセオには、昔から想い会っている女性がいる』と。


テオドロスが不思議そうに言う。

「エマの意識が戻らなかった時、パブロと一緒にテルセオと話をしたけど、そのような女性はいないはずだよ。あり得ない」


まぁ、婚約者の身内に「昔から好いていた女性がいます」なんて、正直に言う人もいないだろうが。


パウラも同意していた。

「学園時代からしか知らないけど、婚約者が居ることは有名だったし……、彼が女性と親しくしている姿を、誰も見た事が無いって有名な話よ? そりゃ、話しかければ、それなりの返答はしてくれるけど、誰にでも同じ態度で、特別な令嬢はいかなったわ」


そして、その、連れない態度を揶揄して『月光の貴公子』と言われていたのだと教えてくれた。


「どちらにしろ、最近になって、エマが婚約者だと知った貴族の嫌がらせでしょうね。私もそうだけど、テルセオを昔から知ってる友人達はみな、彼は女嫌いだと思っているもの」

パウラは続ける。

「そんな彼が唯一会いに行く女性が、エマだけだからね……」と笑う。


私の前では、一言も話さない、目も会わさなかったので、嫌われていると思っていた。


「そういえば……」とパウラがテオドロスに話しかける。

「シーズンが終わったら、国に帰るんですってね」

「えっ?」

寝耳に水だ。まだ、一緒に研究所で働けると思っていた。 エマは、目を見開きテオドロスを見つめる。

「情報が早いね」

「父が、夜会の開催を(たくら)んでいたから……ねぇ、殿下?」

「お互い、婚約者探しが本格化するね」

二人は、うんざりとした表情(かお)で、笑いあっていた。


―――何度か夜会で顔を合わせ、お茶会などで親しくなった令嬢達もできた。 でも、テオドロスが身近にいなくなる。というのは(こた)える。


「寂しくなるわ……」

しんみりとするエマの肩に手を置いて、テオドロスは答える。

「エマは、結婚準備で忙しくなるよ。寂しがる暇はないさ」

「でも……帰国したら……もう、公の場でエスコートは頼めないわ……」

「そうね……、もう親戚のテオドロスでは、無くなるわね」


三人の気持ちとは裏腹に、夜会の夜は更けていった……。


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