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兄か彼か

人の噂というのは、いい加減な物だと知った。

テルセオから辱しめを受けたあの日以降、私の噂、というよりは二人の噂なのだが『人目を(はばか)らずに、カフェでいちゃついている』と、変化した。


私の()()は、何処に行った?


翌朝、テルセオは研究所の身分証を持って、私を迎えに来た。

もう、研究所には行くつもりが無かったのだが、「高度な薬学を学びたいんじゃなかったのか?」と、叱られた。

それからも、毎朝迎えに来て、研究所の入口まで付いてくる。 昼も時間のある時は迎えに来て、一緒に食事を取っていた。帰りも、タウンハウスまで()で送ってくれる……。


どんな、罰ゲームだ。


おかげで、()()の評判も下火になり、すっかりご無沙汰だったお茶会の御誘いも舞い込むようになって、社交も通常通りとなった。


―――今日は、テルセオとの冷めたお茶会が開催されている。

彼は、私から視線を反らせて、こちらを見ることもなく、一言も話さない。

それをいいことに、私は彼の整った美しい横顔を、心行くまで堪能している。

そして、キッチリ一時間経つと「そろそろ帰ろうか」

そう言って、彼はニッコリ笑い、手を差し出してくる。


セリフこそ領地とは違うものの、『冷めたお茶会』は健在だ。 いったいいつまで、この()()()()()()を続けるのだろうか。


もう、彼の素晴らしい演技のお蔭で、私の()()の噂も賞味期限切れになり、貴族の間の噂も新しい話題に変わっている。


―――正直、早く、解放されたい。


※※※


そんなある日、テルセオからの同伴の依頼と共に、夜会の招待が届いた。

騎士団の関係者の夜会のようだった。 まだ、一応婚約中なので、同伴する義務がある。

彼から頂いた、あのエメラルドグリーンのドレスの出番だ。日の目を見る機会があって良かった。


当日、やたら張り切る侍女達の手で、完璧な淑女に仕立て上げられた。

鏡に映る彼色に染まった自分を見つめ、「テルセオの隣に並んでも、見劣りしないだろうか?」と心配していると、ドアがノックされた。


振り返ると、いつもとは違う騎士団の儀礼服に身を包んで、入口に立ちすくむテルセオと目が合う。

全身白の儀礼服は、彼の凛とした美しさを倍増させていた。 いつもは、下ろしている長めの前髪が、少し立ち上がっているせいか、色気が溢れ出ている。


彼の喉が、ヒュッと鳴ったような気がした。 トレーを持ったまま、身動きしない彼を見つめながら、具合が悪いのかと思い、椅子を薦めた。


「いや……大丈夫。 これを、君に直接渡したくて」

彼は、椅子を押しやり、トレーを侍女に渡す。

トレーの上に置かれた木箱を侍女が開けると、そこには、まるでテルセオの瞳のような、透き通るエメラルドグリーンの宝石が付いたネックレスと、それの対になるピアスが(きら)めいている。


「まぁ」

侍女達が感嘆の声を上げる。 あまりの豪華な装飾品に、腰が引ける。

「こんな高価なものは、頂けません」

トレーをテルセオの手に戻そうとすると、途端に彼の顔色が曇る。


「僕が、君を飾りたいんだ」

おもむろに、ネックレスを手に取ったテルセオは、エマの後ろに回り、首もとを触る。

「ごめんね」

そう、耳元で囁き正面に回った。

テルセオは、エマの胸元で輝く、自分色の宝石を指ですくい、満足そうに微笑んだ。


「―――ありがとう……ございます……」

エマは、胸の鼓動を押さえながら、絞り出すようにお礼を伝えた。

あぁ、艶かしい彼の唇から、目が離せない。 なんで、そんなに嬉しそうに微笑むのだろうか?


テルセオがエマの両手を取り、唇を寄せた。 布ごしだが、彼の吐息を感じる。

エマは、頬が熱くなるのを感じた。 なぜ、彼は、今日は、こんなに積極的なのだろうか?


「ピアスも忘れないで」

そう、いいながらテルセオは部屋を後にした。

彼の後ろ姿を見送ったのち、エマは、ヘナヘナとその場に座り込んだ。


「私、今日、大丈夫かしら……」


※※※


会場には、騎士団の医務室でよく合う治癒士や、研究所の所長やテオドロス、同僚のハズキもいた。

近いうちに、また遠征があるらしく、それの壮行会も兼ねているらしい。


―――テルセオは、何も教えてくれなかった。


「それにしても、スゴい独占欲の表れですね」

ハズキが、私の格好を見てシミジミと言う。 テオドロスも、彼女の意見に賛成のようだ。

「よくもまぁ、全身見事に染め上げたなぁ」


三人で話している所にテルセオが近づいてくる。

()()婚約者ですから」

会話を聞いていたのだろうか?

「ちゃっかり、自分の色の宝石を、紛れ込ます貴族もいるらしいのでね、ねぇ、エギ……いや、クラニディ侯爵?」

「アハ、気付いてたの? 居なかったのにスゴいね、アンダクス卿」

テオドロスの瞳が、キラリと黄昏色(ゴールド)に輝いた。


何やら不穏な雰囲気が漂い始める。


「君の好意は、ちゃんとエマに伝わっているのかな? いつでも僕は、エマをエギナ公国に迎え入れる覚悟が有る事、覚えといて。エマを()()にした事、許してないよ」


「いや……あれは……」

テルセオが、狼狽(うろた)える。


いかがでしたでしょうか?

よろしければ、☆を頂きたく思います。

今日も、良い一日になりますように。

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