ひも
「で、家に帰ってポストを開けてみたら、そこに毛ガニが入っていたわけよ」
「何で毛ガニ?」
「んっとな、後になって聞いたんだが、手紙と毛ガニを掛けたって言ってたぞ」
「ふ~ん」
学校帰り、いつもの道を通って高校の制服を着た男子二人が歩いている。
毛ガニの話をし終えた大柄は、腕を組んで伸びをした。
「そっちはなんか面白い話、ないのかよ」
「あるよ」
そう言った小柄は、ちょっと考える仕草をしてから話し始めた。
「たしか、先週の月曜日がったかな。部活があったから、多分その日だね。僕、一人で帰ったでしょ」
「そうだな」
「うん。それでね、駅から学校に行く途中に、白いひもが落ちていたんだ」
「ああ、あれか。俺も見たな」
「そっか。その日は新月で、空も晴れていたから、いつもなら星が一杯見れると思うんだけど、でも空は真っ黒だったんだ」
「それ、面白い話か?」
「ううん、怖い話。でも、実際にあったことだし、夢オチだから、そんなに怖くはないよ」
「……」
「で、その白いひもの横を通り過ぎた後、女の人とすれ違ったんだ。その直後にバタンっていう、人が倒れる音がしたから振り向いてみると、さっきすれ違った女の人が倒れていたんだ。その首には白いひもが巻きついていて、気味が悪くなったよ」
大柄は立ち止った。
「その日はすぐにそこから立ち去ったんだ。でも火曜日の放課後にもひもがあってね。ちょうど向こうから男の人がやってきてたから、少し離れた所で見ていたんだ」
「……おい」
「そうしたら、ひもがひとりでに動き出して、男の人の首を絞めて気絶させたんだ。その後しばらく見ていたら、急に男の人がひもに吸い込まれてね。完全に男の人が吸い込まれると、いつの間にかひもは消えていたんだ」
「おいって」
「ん?」
「あれ」
大柄が、小柄の足下を指差す。
そこには、白いひもがあった。
「あ、そうそう、このひも……?」
白いひもが波打ち、そして一瞬で小柄の首に巻き付く。
小柄はすぐに意識を失って倒れ、そしてしばらくするとひもに吸い込まれて、ひもと共に消え去った。
「なんだ、なんなんだよ、今の」
大柄は今の現象を処理しきれないまま帰宅した。
そしてまた、これは夢となる。