表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

噛み合わない

「噛み噛みじゃないですか! その、セリーヌさんはいったいどこのご令嬢です? まさか、素性も知らない相手と結婚するおつもりではないでしょうね」


 ジェフが、目をつり上げて、アンドリューに詰め寄る。

「せ、せり、セリーヌという名前以外知らない」


 「ですから、何で名前を噛むんですか! いいですか、貴方に相応しいご令嬢とのお見合いを──」

「そういうのは、もうたくさんなんだ」

アンドリューの声は、心底うんざりとしたそれだった。



 ──なるほど。私は、理解した。アンドリューが私と結婚しようとしている理由は、私をご令嬢方からの防波堤とするためだろう。アンドリューは美しいし、それに加えて、王弟という高い身分だ。彼に近づこうと思う女性は多いだろう。


 それに、きっと、私がこの国の人間でないことは、アンドリューも察しているはず。あえてこの国では関わりのない私を娶ることで、貴族同士の反発を押さえることも、考えてのことではないだろうか。


 「恐れながら、ジェフ様」

「なんです、セリーヌさん」

私は今考えていたことを、ジェフに話す。


 すると、眉間にシワを寄せていたジェフも、だんだんと柔らかい顔になってきた。

「確かに、マドリッド家のご令嬢を娶れば、ハードナー家との衝突はまぬがれないでしょうし、これは、他の家にも言えますね。王太子殿下はまだ幼く、政情を鑑みるに、あえて、ここは後ろ楯のない少女の方が、アンドリュー様が次期王として担ぎ上げられないためにも、よろしいかもしれませんね」


 そこで、言葉を切って、ジェフは、瞳を輝かせた。


 「さすがは、アンドリュー様! てっきりこの私めは、その少女に一目惚れしたから、結婚したいといいだしたのかと思っていました。いやぁ、我ながらなんて、愚かな考えだったのでしょう」


 「……あ、ああ。そうだ」

ジェフの言葉になぜか、アンドリューは、目をそらしながら、頷いた。


 「わかったら、俺の部屋から出ていってくれないか。俺と彼女の結婚式は、3ヶ月後に行う。その準備をしてくれ」

「わかりました!」


 では、失礼しますね、とジェフは嬉しそうに帰っていった。






 ジェフが退出した後、アンドリューは、私に話を切り出した。

「あの、ジェフの前ではああ言ったが、俺は──」

アンドリューの手をとり、力強く頷く。


 「わかっております。お役目立派に果たしてみせます」


 特別になれなかった私に、意味を与えてくれた貴方のためなら、防波堤になろう。


 「そうじゃなくてだな、俺は、貴女──せ、セリーヌのことが、」

「礼節については心配なさらないでください。私、隣国で以前貴族だったのです。もちろん、王弟殿下の妻となるには、足りないかもしれませんが、努力します」


 「そ、それは頼もしいが……、」

アンドリューが複雑な顔をして、頷いたあと、意を決したような表情をして私の手を握った。




 「俺は、貴女が好きなんだ」

「なるほど。そのような設定でいくのですね」

「せ、設定……?」

「確かに、相手は身分も後ろ楯もない私です。そこに恋愛感情がないともなれば、この結婚は、怪しまれますものね」


 怪しまれないように、どのようにして、出会いそして、恋に落ちたか、話を詰める必要もあるだろう。私が、そういうと、アンドリューは、肩を落として頷いた。


 「あ、ああ、そうだな」


 ──その後は、その辺りの設定を詰めて過ごした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ