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3。suāvior

『最初』はいつも特別な感情を持たす。それが愛情の相手なら、なおさらだ。モノクロの世界で初めて出会った色とりどりの花を、見逃すわけがない。その赤い瞳には怖いほどの執着と鳥肌が立つほどの興味が宿っていた。


「あっ、あのっ…。」


数分後になっても、真夜が沈黙を紡いでも、女王は見つけ出した獲物をはなしてくれない。


「おや、なんだろう?」

「もうこんな時間、帰らなくては…。」

「眠いのか?」


迷いながらも頷く少女を見て、女王はにっこり笑った。


「なら、寝たらよいだろう?」

「えっ、ここで、ですか?」

「まさか、儂にきみの部屋に行って欲しいのか?」

「そ、そんな!」

「なら、今すぐ布団のよいをー。」

「話が違います…。」

「なにか言ったか。」


少女は文句を言ったが、女王は聞いてないふりをした。赤く染まった顔を隠す姿が、なにより愛しくて。


「はっ、話が、違います…!」

「意味がわからないが。」

「だって先、今日は、止めておく、と。」

「ああ、それか。」

「へあぁっ…!」


そっと耳を噛む感覚に続いて、首を舐める舌の気持良さが襲ってくる。快感を遥かに越えるなにかが魂の底に触れ、心を飲み込もうとする。そのたび、『自分』が減っていく。でも、染まれてしまったこの色、嫌いではない。


「いやっ、でも、こんな、だめ…。」


壊れる理性の中、罷り間違うと正気を失い、別のものになりそうな危機感が甘い、甘すぎる。全てを自分の手で捧げ、支配されたくなる。


「大丈夫だ。寝込みを襲うつもりはないから。」


女王を見ると、おかしくなる。心が楽になり、安心してしまう。危機を感じられなくない瞬間が一番の危機なのに。もうどうなってもいい、と思ってしまう。


「そんな、女王様の寝床に、わたくしなんか、ふさわしく…。」

「あら、もう大丈夫なのか?」

「礼法が、許されない、なにより、シングルベッド、二人は無理ー。」


語を交えるたび、体を交える気分となる。息が切れて、変な音色を奏でる。下半身が熱くなる。


「眠れないなら、一緒に遊ぼう。先みたいに。」

「ひゃぁぁっ…!」


ああ、無理。これ以上は、話し合うだけで、壊れてしまいそう。体がぶるぶる震えて今の表情も隠せない。なら、むしろ寝るふりをする方はー。


「…っ。」


ぎゅっと目を閉じた。眠れなかったけど、目だけは覚めなかった。また、心まで犯される気分にはなりたくないから。


「ふふ…。」


だが、寝られるわけがなかった。ずっと聞こえてくる小さな笑い声や時々頬を触る指。逸らそうとするたび瞼に触れる唇。隠そうとしても漏れる喘ぎ声。わざと苦しめてるのか、悩むほどの勢い。


苦しめるつもりではなかったが、確かに女王は少女の動きを一つさえ見ていた。指から感じる肌の震え、弄るほど赤くなる顔、キスするたびびくっとする表情筋。逃げるため13度ぐらい体を動いたことさえ、『興味深い』と思った。


おかげさまで眠れなかった少女はうとうとした。そのチャンスを見逃す女王ではなかった。まだ眠りによってる少女を抱っこして、宴会場までゆっくり歩きながら、少女の髪の匂いを思い切り楽しんだ。


「ふひゃっ!?」


太ももを刺激され目覚めた少女がふと顔を上げた。朝とは呼べない時間、もう太陽が空を飾っていた。


「えっと、その…。」


少女はやっと今の状況に気づいた。いつのまにか少女は女王の膝に座って、赤ん坊のように抱かれていた。なによりも、朝飯も食べず待ってくれてるその優しさに感動して、胸の奥が暖かくなった。


「では、いただこうか。」


そうとは言え、女王は少女に気を取られて、フォークさえ取らなかった。ひと晩で女王の愛人となった少女を見る他の使用人たちの視線には疑問と羨望がたっぷり込められていた。視線を逸らすためのもがきさえ、女王には愛しく感じられた。


「まさか、恥ずかしいのか?」


ちいさな頷き。


「特に問題はなさそうが。」


涙ぐむ泣きべそ。


「ああ。もし、礼法のことか?」


精一杯の頷き。


「まあ、礼法はともかく、確かにきみ一人で食べると寂しいだな。ならー。」

「んむっ!?」


マカロンをかみしめた女王は、そのまま少女の口のなかにマカロンを入れた。口から口へと甘さが広がる。混ぜ合う呼吸が喉まで伝わって、体が熱くなっていく。腰をよじっても、しつこい指使いから逃げられない。


「これで良いだろ。」

「あ、あぅっ…。」


腰を抱く手つきは、何度もやったように慣れていた。気持いいどこだけ探る手に、少女は体を任せてしまった。

+ボーナス+


誰が何を食べたのかわからない食事が終ったあと、メイドたちはひそひそ話をはじめた。


「どうしたの、あれ?」

「私にもわかりません。」

「ただの浮気、かな?」

「そうは見えなかったけど。」

「もう、なんなのよ!」


その中、一番大きなのは、確かにアンナの声だった。


「おかげさまで昨日から仕事いっぱいだし、忙しいし!」

「でも可哀想だね、あの子。」

「そう、そう!わたし可哀想、じゃなくて、まさかのあの子?」

「うん、公爵閣下、かなり怒っていたし。きっと、ただでは終わらない。」


ため息が滲んだ視線が、少女の後ろ姿を追った。


「どうか、無事でいられますように。」

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