ハイスペック羊 黒曜
「さっきまでいた湖じゃない…」
「当たり前だろう。あの場所は神々の領域なのだぞ。おいそれと行けるものではない。」
「そうなんだ。不思議な場所だったもんね…あ、魚がいる!」
ここも綺麗な湖ではあるが、魚がいるから普通の湖だとわかった。耳を済ませれば、鳥の鳴き声も聞こえた。いきなりここに転移されてたら、ここが異世界とはすぐにわからなかっただろうな。
「主人よ、その服ではちと目立つ。幸いここは安全なようだから一先ず着替えた方が良い。」
「そうだね。」
またいつの間にか服が用意されていた。それも一式。
スーツのままだったことを思い出して、とりあえず騒ぎになる前にと渡された服に着替えた。
真っ黒な靴下とブーツに、指先だけ出ているタイプの真っ黒な手袋。真っ黒なズボンに、ポケットがたくさんついた真っ黒な上着。
黒羊に黒服でまっくろくろだわ!な状態である。
(某探偵と敵対する黒の組織っぽい…?まぁスーツよりはマシでしょう。そう、細かいことは気にしない!)
「黒曜、鞄とかなにかないかな?スーツは持っていたいんだけど…」
「それなら我の空間にしまっておけばよい。ほれ。」
言うが早いか、黒曜の真っ黒な毛並みに吸い込まれていくスーツや靴…いやいやこれはスルーできませんよ?
「今のなに。」
「空間魔法というものだ。主人が名をつけてくれたから、その名にふさわしいスキルが使えるようになっておる。」
「スキル?じゃあやっぱりここは剣と魔法の世界なんだね?」
「その通りだ。主人は我のことを羊と思っておるだろう?そのイメージと摩訶不思議とやらのイメージが中心となったスキルとなっている。」
私が原因だったー!!たしかに摩訶不思議ですがね?羊にアイテムボックスがついてるとは思ってなかったよ。羊にどんなイメージもってんだ私…
けど必須と言っても過言じゃない便利スキルだもん、あってよかったよね!
「待って、羊と思っているからって羊じゃないの?」
「我は犬神様の眷属だ。羊でなく神獣なのだぞ。」
神獣さんでしたか!うわー異世界って感じ!!
「すごいっ!他には何のスキルがあるの?」
「うむ、色々あるぞ。眠らせるスキルや空を飛ぶスキル、身体の大きさを変えるスキルならすぐ使えるぞ。」
「みたい!やってみて!」
「よかろう。」
ぽふんという可愛らしい音とともに、象より大きかった黒曜が掌サイズの手乗り黒曜に!!
「かわいいー!これなら肩とか頭の上に乗せたりもできるかな?」
さっそく頭の上に乗ってもらった。周りからどう見えているのか見てみたくて湖の側へ。鏡がないなら湖でみればいいじゃない?