石じゃなかった!
グラグラ揺れるクッション石。
その上に乗っている私はプチパニック。
(地震!?)
ギュッと石を掴みつつ周囲を見廻し、揺れが治るのを待とうとした。しかし、ふわふわの毛布のような手触りが別の異変を突きつけてくる。
(今度はなにさ!!)
勢いのまま手元を見て、唖然。
さっきまで完全に石だったのに。ツルツルした石像のような石だったのに。その蒼い瞳がこちらを向いた。
(目があった…っ!!?)
そこには石ではなく、真っ黒な羊が一匹。
そしてそれに乗っかって羊毛を掴んでいる私。
気づいた時には
「さっきまで石だったよね!?」
と叫んでいた。仕方ないよね?人ってびっくりしすぎると簡単なことしか考えられなくなるんだね。知らなかった。
その大きな羊は、私が上にいることはスルーして話し出した。
「我を起こしたのはお前か?小さき人の子…人の子?お前はなんだ?なぜここにおるのだ?どうやって我を起こした?」
怪訝な顔をされた。さっきまで石だった羊に。
「いや、何もしてませんが…ってそんなことより羊なの!?というか生きてたの!?」
「とりあえず我から降りろ、人の子よ」
そういえば上に乗ったままだった。
「ああ、すみません!」
怒ってはないようだが、できるだけ手早く降りる。素晴らしい羊毛ですね。全人類をダメにする毛並みでしたね。馬鹿なことを考えながらも、象くらいあるんじゃないかと思われる黒い羊の前に立つ。大きすぎてちょっと怖い。
「して、人の子よ。何故この地にきた。」
最もな疑問でしょうが、夢か現実かわかってない私には当然わからないわけで…
「なにゆえと言われても気づいたらといいますか…ここはどこですかね?」
「なんだと?…なるほど、お前、異なる地の神子か。」
ちょっとクラっときた。あぁ…ついにこんな厨二病みたいな夢を…アニメ見すぎたかな。いや、疲れてるんだよ!アニメは癒しの時間だから削れないし削らない!
はぁ〜最近忙しくて朝早いし残業もしてたからなぁ。これは遅刻もするわ。もう相当時間経ってるだろうし、もうダメだ。素直に寝坊しましたって言うしかない。よし、覚悟は決まった、このまま寝てよう。
「おい、聞いているのか!人の子よ!」
意識が旅立っていたようだ。少し怒っているかのような黒い羊の声。
「あ、はい!すみません!」
全く聞いておらぬな、なんて言いながら黒い羊は目線を合わせるようにしゃがんでくれた。ほとんど首が上を向いてたからありがたい。