羊さん大活躍!の巻
「あ〜、ちょっといいかな?」
噛まれかけてフリーズしてた茶髪の騎士さんがいつの間にか復活して側に立っていた。気配がなくてびっくりした。慌てて黒曜のそばに立つ。
「驚かせてごめんね。今のアリエスたちは君のかな?」
「アリエス?羊さんのことだったらそうです。」
「羊?不思議な呼び方をするんだね。けど助かったよ、ありがとう。」
そう言って微笑む騎士さん。絵になるー。
「一体どういうことだ?」
「ディゾルブヴァイパーの攻撃を通さない魔法だと…」
「はっ驚いてる場合じゃないですよ!あのクソ野郎がいなくなったなら早く戻らないとクロムさんが…!!」
我に帰ったのか話し出す騎士さんたち。若い騎士さんが焦ったような声で捲し立てると、ほかの騎士さんたちも厳しい表情に戻った。
「今俺たちには時間がない。危害は加えないと誓うから一旦ついてきてくれねぇか?」
双剣を持った銀髪の騎士さんが真剣な表情でそう言った。他の騎士さんたちも口々に、ここに置いていくのは心配だから1人じゃ危ないからと言う。
悪い人たちではなさそうだけど、ホイホイついていっていいものかな?それに黒曜がいればたぶん危険はないんだよね。どうしようかと黒曜を見る。
「我は主人の指示に従うまでだ。思う通りに行動するといい。万が一危険があっても我が護ればいいのだから。」
当然だと言わんばかりのその返事に気を引き締める。黒曜にばかり頼ってはいられない。ここがどういう世界なのかは自分で確かめるようにと犬神様にも言われたし、黒曜も必要以上にはこの世界の知識は教えてくれないのだ。とてもRPGっぽい。じゃなくて、ここは直感を信じてついて行くことにした。異世界初の出会いだもの、この縁を大切にしよう。
「わかりました。ご一緒させてください。」
「ああ。落ち着いたらちゃんと説明するからな。」
川岸から離れて急ぎ足で森の中へと進む。大蛇が這った跡が道となっているので歩きやすいが、曲がりくねっているので距離がある。逃げながら川を探していたらしく、目的地はこの道を辿るしかないらしい。大剣の騎士さんが簡単に状況を教えてくれた。
なんでも仲間の騎士さん2人がさっきの大蛇にやられて重傷を負ってしまい動けず、このままでは全滅の危険もあったために自分たちが囮になって大蛇を引き付けここまで移動してきたというのだ。
さっきの魔獣はディゾルブヴァイパーというそうで、あのヘビの吐き出す液体はなんでも簡単に溶かしてしまうのだとか。金属もドロドロになるという話だから、それが人にかかってしまったのなら…いや、腕だけとか足だけとかだったら助かるかもしれない。とにかく時間がないことはわかった、早く合流しないと!!
「黒曜、全員乗せて移動出来る?」
「無論。だが道幅が狭すぎる。道を逸れると場所がわからぬだろうからな、仔羊を呼んだ方が早いだろう。」
「そうか!羊召喚!!」