第一村人、遭遇戦?
「慌てるでない。このような小物、我にとっては戯れにもならん。しかし、ちょうど良い。我のスキルを披露するとしよう、よく見ておるのだぞ。」
そう言って私を庇うように、斜め前に出る黒曜。神獣は強いだろうけど、見てるだけのこっちとしてはハラハラする。せめて支援魔法が使えたらよかったのに!
黒曜からパリパリ、バリバリという聞き慣れない音がしたかと思うと
ズガァアアン!!!
耳をつん裂くような轟音を立てて、猪サイに稲妻が落ちた。まともに浴びた猪サイは一呼吸遅れてグラリとその体を横たえる。凄まじい一撃。反撃もなにもなければ、やられたこともわからなかったのではないだろうか。
「これはグンジョウライノーという魔獣でな、主人のいう猪とサイの仲間だとでも思っておくといい。人間目掛けて突進する習性があり山によくおるのだ。」
なんだその習性。ぷすぷすと煙を上げているグンジョウライノーを茫然と見る。
「雷魔法も使えるんだ…すごい威力だね。」
「これでも我は神獣、そして主神である犬神様の眷属なのだぞ?これくらい当然よ。」
ちょっと誇らしそうというか嬉しそうにしている黒曜。こういうところはかわいい。
そこへ、さらにガサガサガサガサと音が近いてくる。まだ何かいるの?さっきの轟音で逃げないなんて、絶対好戦的で力の差もわからない馬鹿タイプじゃないか。まだ立ち直れてないんだから来ないでどっか行ってくれ…
「おいっ〜〜〜!追い付かれ〜〜!」
「もう少し〜〜ー!気張れよお前ら!」
よく聞き取れない部分もあるけど、人の声だ。大声で叫びながらこっちに近づいてくる。なんだか急いでる、というか焦ってる?
茂みが大きく動いて、鎧なんかを着込んで武装した人が4人飛び出してきた。同じような装備をしてるから軍人さん?いや、鎧だから騎士さんかな。
私もびっくりしたけど、相手はもっと驚いたみたいでこちらを見て固まってしまった。
「あの…?」
シーンとした空気がいたたまれなくて、どうしたのか問おうとしたら急に動き出した。さっきよりもだいぶ慌ててる。
「なんでこんなところに女の子がっ」
「はやく安全なところに…っ」
「どっか隠せる場所とかねぇの!?」
「お前ら落ち着け!逃す時間も余裕ももうない。巻き込んでしまったからには絶対にこの子を守るぞ!」
「「「おう!!」」」
えぇ?なにがどうなってるの?何に巻き込まれてるの?よくわからないままオロオロしてたら、騎士さん達が一斉に剣や槍を構えて同じ方向を向いた。
「来るぞ。」
黒曜がぼそっと呟くと同時に、それは姿を現した。