9
ユーリは、街の事をよく知っていた。「あそこの食べ物は美味しい」と、言うことや。「あそこの道は入っては危ないから入ってはダメだ」と、言うことをユーリに教えて貰い。二人は手を繋ぎながら、街を歩いていた。
「で。あそこの食べ物は美味しいんだけどスープだけが何故かいまいちで、僕はいつも謎なんだ。」
「そうなんですね! そう言われると食べてみたい様な気がしますわ!!」
ユーリと色々と喋りながら見てまわるのが、レイラは凄く楽しかった。
最初は、ユーリと手を繋いでいると言うことが恥ずかしかったレイラだったが、気になったお店で食べ物を買って食べたり。カーチスやレオンにお土産を買うためにお店に入ったら、お店の人に言われるがまま買わされそうになって、ユーリとヴィオラに助けてもらったりなんてあった。レイラは、恥ずかしさを忘れる程楽しんでいた。ユーリも、楽しんでいるレイラの顔を見るのが嬉しく終始ニコニコした笑顔を向けていた。
そして今、二人は一通り買い物も終わり。ユーリとレイラは、街の広場で座って休憩していた。
二人の周りには、ヴィオラとユーリの従者。それに、今回護衛をしてくれている人達が数人側に立っている。
護衛と言っても、街の人達を怖がらせ無いように普段着を着ているのだ。
レイラの隣に座っていたユーリは、何かを思い出したかのようにクスクスと笑っている。
「ふふっ。でも、びっくりしたよ? レイラがお店の人に言われるがまま、商品を買おうとした時は……」
「だって、お店の方の勧め方がお上手だったのでつい……。」
お店の方の勧め方が凄く上手く。レイラは勧められるがまま、カーチスやレオンに渡すお土産を買おうとしていた。
必要ではない物まで買おうとしていたレイラを、ヴィオラが止め。レイラは、ユーリと一緒にどれが良いのか選んだのだった。
(私一人だったら、危うくお店にあったのを全て買っていたところだったわ。それよりも……)
「お父様達、喜んでくださるかしら……?」
レイラは、カーチスには仕事の時に使える様にとペンを。レオンには、本を良く読んでいるため。剣のチャームが付いている栞を買った。
レイラが買った物は、カーチス達がいつも使っている物より高価な物ではない。それを、二人は気に入ってくれるだろうかとレイラは心配していた。
「あの二人だったら、喜んでくれるさ。僕だったら、レイラが選んだものは何でも嬉しいけどね?」
(……な、何言ってるんですか!? ユーリ様、そんな天使みたいな顔でこちらに微笑まないで!)
「……? どうしたんだい? そんな眩しそうな顔をして」
「いえ。今日はお天気がいいから、日差しが眩しいなと……。」
「そうだね。お天気が良くてよかったよ。レイラとの、せっかくのお出かけなんだしね」
(だから、そのキラキラとした笑顔が余計眩しいのです!!)
ざわざわ……。
ユーリとそんな事を喋っていると、広場の入り口の方が騒がしくなった。
入り口付近では、人だかりが出来ている。
(……何かあったのかしら?)
「何かあったのかな?」
「はい。変な輩が、女の子にしつこく言い寄っているみたいです。」
ヴィオラが広場の入り口の方を向くと、そう答えた。
(ヴィオラ凄いわ! こんなに距離が離れているのに見えるなんて!! 鍛練をしている成果ね!! でも、その女の子が心配だわ……。)
「では、護衛に行かせるか。」
「いいえ、大丈夫ですわ。ユーリ様! 少しお待ちになっていて!」
レイラはそう言うと、座っていた所から立ち上がり。広場の入り口の方を見つめる。
レイラのいきなりの行動を見ていたユーリは、驚愕した表情をしながらレイラを見ていた。
「はぁぁぁ!? お嬢様!! 今日はおとなしくするって言ったでしょ!!」
そんな事をヴィオラが後ろで叫んでいるけど、レイラは無視して走り出す。
(後からヴィオラに、お説教されるかもしれないけれどその女の子が心配だわ……。)
「……本当、僕のお姫様はお転婆だね。」
レイラが走り出した後ろで、ユーリがそんな事を呟いていたなんて、レイラは知るよしも無かった。
レイラが入り口付近に着く。街の人たちが、誰かを取り囲みながらも皆一ヶ所を心配そうに見ている。
その視線の先では、桃色のふわふわとした髪の毛に紫の瞳をしている可愛い女の子が、レイラと同じ歳くらいのふくよかな体型をしている男の子に腕を掴まれてた。
女の子は嫌そうに、掴まれた腕を外そうとしている。
「手を……は、離してください!!」
「僕の言うこと聞け!! 僕は、隣国の公爵家の跡取りだぞ!?」
(なるほど。あの男の子は、隣国とはいえ公爵家の人だから。皆、あの女の子を助けられないのね……。だったら、私の出番だわ!!)
この男の子は、隣国とはいえ……貴族。平民が貴族の反感を買ったら、どうなるか分からない。だから皆、女の子を助けたいけれど助けれないで居た。
レイラは、取り囲んでいた人達の間をすり抜け。女の子へと近づいていったのだった。