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レイラが、ユーリからお手紙を貰ってから数日がたち。待ちに待った、ユーリと出掛ける日がやってきてしまった。出掛ける事が決まった時に、レイラの父であるカーチスやユーリの父であるこの国の王の間では、色々と話し合いをしていた。
大人達は、2人とも幼いと言う事。それに、ユーリ自身が王族と言うこともある為。二人に沢山の護衛をつけようとしていたらしい。
それを聞いたユーリが「街の人の邪魔になるから大勢では行きたくない」と、陛下に言っていたとレオンからレイラは聞いた。その後、どうなったのかは分からなかった……。
そして、最後までカーチスはレイラとユーリが出掛ける事が嫌で、反対をしていた。
(……最後まで、お父様は反対していたわね。ユーリ様は、変な事をする人じゃないのに! でも、確かにユーリ様が言っていた様に沢山の護衛を連れていったら街の人達に迷惑になってしまうわね。お父様達が心配なのは分かるけれど、そんなに私か弱くないわよ?)
コンコンッ
「失礼します。お嬢様、準備出来ましたか?」
「……えぇ、大丈夫よ。」
ヴィオラが部屋をノックしてきたのは、侍女達に手伝ってもらい、ちょうど着替えが終わった頃だった。
ヴィオラと入れ違いに、手伝ってくれていた侍女達が部屋を出ていく。
(ヴィオラが迎えに来たと言うことは、そろそろ行かなくてはいけないのね。準備に時間が掛かってしまったから、ユーリ様との待ち合わせの時間に間に合わないんじゃないかしら……。)
レイラは、部屋に入ってきたヴィオラの方を向くと、何故かヴィオラは扉の前で驚いた様な顔をしていた。
「……ユーリ様とのお出掛けなのに、シンプルな服装なんですね。っていうか、いつもの服装ですか?」
レイラの服装は、青色で袖と衿にレースがついている比較的シンプルなワンピースを着ていた。そう、家に居る時に着ている服と何の変わりもない。
普通、貴族の令嬢がお出掛けする時の服装はもう少し派手な服装や装飾品をしている事が多い。それに、今日はユーリとのデートだ。なので、ヴィオラもびっくりしてしまった。
レイラが、着ているワンピースを選んだ時。使用人達も反対をしたが、理由を聞いて説得に諦めてしまった。
そう、全てヴィオラに丸投げである。
「そうなの! 何かあったときの為に、動きやすい服装にしたのよ!? 何かあったら、逃げれないし。戦えないじゃない? それに、貴族っぽい格好じゃない方が楽しめるでしょ?」
(せっかく街に行くんだから、楽な格好でいかないと楽しめないじゃない! 私って、ドレス苦手なんだもの……。)
「いや。何かあったときの為の護衛なんですから、戦わないで下さい!」
「失礼ね。剣の扱いは、教えて下さっている先生に褒められているから、自信はあるのよ?」
ヴィオラが稽古をしているのを見て、やりたくなったレイラは「お父様! 私もやりたいです!」と、言ったときは家族や使用人達に反対されたけれど、無理を言って承諾してもらったのだ。
最後まで、ヴィオラだけは反対していた……。
(自分の身を守るのには必要だわ! 将来婚約破棄されて、もしもの事があったときは役に立つし……。)
今のところ、レイラが剣を習っていて魅力的なのは、運動しているから太らないと言うことが一番だった。
剣を習った後。お茶の時間。読書する時間。その時に食べるお菓子がレイラは好きなのだ。
(好きなお菓子を食べていても、太らないんだもの! 素敵だわ! 前世の記憶を元に、作ってみたいお菓子もあるのよね~。……お父様、許して下さるかしら?)
「自信があってもです! 私は、お嬢様に怪我でもされたら……嫌です!」
「ふふっ。ありがとう、ヴィオラ。でも、けして無茶はしないわよ? さぁ、ヴィオラ。そろそろ行きましょうか」
「……そう言う事じゃないんですけどね。それより、殿下との待ち合わせに間に合わなくなってしまいます! 急ぎますよ、お嬢様!!」
使用人達に説得を丸投げされたヴィオラは、時間が迫っている為。諦めてしまった。
「(ちゃんと、お嬢様に令嬢らしくして貰うためには私がしっかりとしなくては!! こんな格好だけれど、この人は公爵令嬢なのだから!!)」
そんな決意をしているヴィオラに手を引かれながら、レイラは馬車へと向かう。今回、ユーリはレイラを迎えには来ず。二人は、街で待ち合わせをする予定だ。
「ねぇ、ヴィオラ? 街に行けば、美味しい食べ物がいっぱいね! あぁ、早く行きたいわ!」
「……やはり、食い気なのか。お嬢様が、楽しそうでなによりです。」
「ふふっ。お出掛けを想像しただけで、わくわくするわね!」
(何を食べようかしら! 侍女達に、美味しいお店を沢山聞いたから凄く楽しみだわ!!)
レイラは、馬車の中で街に行くのがどれだけ楽しみかをヴィオラに喋りながら、二人を乗せた馬車は目的地へと向かった。
レイラの前に座っているヴィオラからは、少し呆れたような目を向けられたけれど、レイラは気にせずに喋り続けていたのだった。