エピローグ
気がつくと、そこはベッドの上だった。
白い壁は外からオレンジの光を受けて妙に寂寥感を煽る。
夕暮れの箱庭に、ぽつんと取り残されたような感覚。
窓が開いているのか、涼しい風が流れ込んで来る。
右足にはぐるぐる巻きの包帯と、圧迫で抑制されたおかげか少しだけの痛み。
目を移すと、サイドチェストに、木札で作られた日めくりカレンダーが置かれている。
日付を見るに、試合当日らしい。
あれから一日くらい経っているかと思っていたので、正直意外だった。
この夕暮れから考えてほんの数時間しか経っていないわけだ。
加えて言うなら、どうやらここは病院ではなく、スタジアムの医務室のようだ。
「……ん?」
もっと周りを見ようと上半身を起こして、初めて気が付いた。
部屋の壁際に、お団子状態の複数の人影がある。
それは、乾いた泥でまだら状になったユニフォームの11人。
クレーンゲームのぬいぐるみのように、壁にもたれかかり座り込んで眠る少女たち。
ここで俺が起きるのをずっと待って、しかし全力を尽くした試合の後だ、力尽きてそのまま眠ってしまったのだろう。
俺は、何とも言えない気持ちになって、上手くそれを言葉に出来ないのだけれど、ただじっと彼女たちを見つめていた。
やがて、その中の一人が目を覚まし、目と目が合う。
そして、彼女はみんなを起こし、それから全員が飛びついてきた。
デジャブを感じるそのもみくちゃ具合。
女の子に囲まれているにも関わらず、土の匂いしかしない。
その女の子も、涙どころか鼻水までだらだらで、慎みのつの字もない。
だが、そんな事はどうでもよかった。
勝利を祝う輪の中に、はっきりと自分がいる。
偶然やってきたこの世界。
求めていたものが、やっと手に入った。
それでも、いずれは元の世界に戻らなくてはならない。
家族も、友達も、向こうに残して来たままだ。
だからこのチームを優勝させて……そして、俺は帰る……のだ。
しかし、今は、このチームで、一緒に戦える事を喜ぼうと思う。
まだ、たった3勝しただけ。
折り返しですらない。
元の世界に帰らないといけないはずなのに、俺は、このリーグ戦がいつまでも続けばいいのに――
ここで出会えた素晴らしいチームメイトたちの笑顔に、そう願わずにはいられなかった。




