ムギ
プラティナはパスなど眼中にないかのようにゴールに迫る。
おそらく、先日と同じように俺たちに絶望を与えるためにわざとそうしているのだろう。
それが命取りだ。
プラティナの身体能力には、なかなかついていけない。
なら、ついていかなければいい。
もっと正確に言うなら、ボール奪取よりシュートコースを限定する事に専念するのだ。
これは、キーパーであるムギの提案だった。
「ふっふっふ……私も何の策も無く5点も取られたわけじゃないよ。相手の癖を分析してたのだ! じゃーん! ぷわぷわぷわ!」
とは本人の談。
自分の口によるファンファーレは完全にスベっていたが、その言葉を信じることにした。
なぜなら、ムギはうちで最もレベルの高い選手だからだ。
カテナチオを選択していたカーネイションは、逆に言えばそれだけ攻められ続けたわけだ。
だからこそ、シュートの猛威に晒され続けたムギのセービング能力は高い。
失点は多いが、それは多くの場合相手のシュートが男子なみだからであり、それですら反応は出来ている。
「行きますわよ!」
プラティナはDFの合間を縫うように豪快なミドルを放った。
が――
「読めてるよっ!」
それはキーパー正面。
ムギは両手でがっちりとキャッチした。
「ふん……!」
眉をひそめて悔しそうな様子のプラティナ。
シュートコースはDFにカバーされているので、本人が気付いているかいないかはわからないが、あれは『打った』んじゃない。『打たされた』のだ。
これで、チームの肩の力が抜けたように感じる。
戦術を考え、練習に練習を重ねても、先日のプラティナ一人にいいようにやられた記憶は残っている。
だが、今日はさっそくそのシュートを止めたのだ。
それはチームの自信になる。
ムギのセービングを信用するなら、DFは『シュートコースを限定するだけ』でいい。
この割り切りが、個の力に対抗する武器になる。
個に個で対応して深追いして振り切られる方が最悪なのだ。
「落とさないんだZE!」
ふんすふんすと鼻を鳴らすムギ。
綺麗なんだからそういう事しなければいいのに……残念美人である。
ともあれ、彼女はこれまでの失点の多さから、どうしても緊張感と言おうか、死んでも失点させないという意識は希薄になっていた。
そこで、ボールを爆弾と思うようにとのアドバイスの元、徹底的なキャッチング練習をこれまで行ってきた。
キャッチできればごっつぁんゴールも防げる。
同時に、こちらの攻撃ターンも始められるのだ。




