集中
後半もこちら優勢のまま30分まで経過した。
とはいえ、全員足が止まり始めている。
この猛暑の中、仕方ない事だ。
なるべくなら病み上がりの翡翠と交代はさせたくないが……。
「くっ……!」
正直、なかなかキツイ。
パス回しでなるべく相手を走らせるようにしているが、それでも体力の消耗が激しい。
ハーフタイムも全員が息も絶え絶えに、だがとにかく水分補給だけはこまめに行った。
ミカンあたりは水分補給の重要性をイマイチ理解していないので、念入りに飲ませた。
数十年前の日本の体育教育と近いものがこの世界にもあって、水を飲まないという精神論が未だはびこっているらしい。
だが、それは許さない。
冗談抜きで死に繋がるからだ。
死もそうだが、離脱されてもこのチームは終わる。
ほぼスタメンしかいないチームだからな。
一方、人材不足のこちらとは対照的に、相手は次々交代選手を投入。
焦っているのか、この時間帯で既に3枚の交代枠を使い切るというギャンブルな采配だった。
だが、こちらに交代の手がほぼない以上、確かに有効な手段だ。
フレッシュな選手に切り替わったクイーン04は、その種族の特性から、替わって入った選手が全く前任とそん色ない動きをしている。
組織として考えると完ぺきだ。
こちらとしてはマークのずれを防ぐ意味で、ほとんど同じ選手なのは逆にありがたい。
「パスパース!」
高温多湿の日本育ちの俺が、今のところ一番まともに動けるので、ボールを集める。
中盤でボールを受け、相手の動きを見る。
このままなるべくキープして……と思ったが、敵の寄せは的確だ。
二人で挟んでボールを奪わんとしてくる。
「くっ……!」
パスの出しどころがない。
体力的に勝る相手のカバーリングが巧みで、パスコースが消されている。
こうなったら、いちかばちか相手に当てて外に出して仕切りなおすか……?
上手くいけばいいが失敗したら間違いなくカウンターを喰らう。
それでもやるしか――
「こっちこっち!」
そこに駆けてきたのはブルー。
最前線にいた彼女が、中盤の底まで左サイドを戻ってきていた。
「……!」
この気候、この時間にこのランニングは見事だ。
ブルーへグラウンダーのパス。
「ほっと!」
彼女はそれをサクっとトラップすると、くるりと反転。
敵ゴールへ駆け始めた。
当然、そこには敵が殺到する。
が、後ろから追う俺には、僅かに見えるブルーの横顔に笑みがあったように思えた。
そして、その目に、恐るべき集中力が宿っているようにも。




