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暑さ対策

 揃ったところで軽めの練習を始めたのだが――

「……こりゃ、予想以上にきついな」

 乾燥していて日陰は多少マシだが、ゆうに30度を超える気温は体力を容易に奪う。

 すぐに足が止まり、ふらふらになる。

 明日はそれを考慮してか、夕方からの開催だそうだが、それでもこのアウェーゲームは相当にタフな試合になりそうだ。

 ペットボトルはないので、竹に切り込みを入れた水筒――ぱっと見貯金箱のようでもある――をがぶ飲みするメンバーたち。

 こまめに給水しないと、これは簡単に足も攣るだろう。

 何より下手すると熱射病になりそうなので、練習は早めに切り上げた。

 本格的な練習は夕方から行う事にして、しばらく自由行動タイムとする。

 このうだるような暑さに、ほとんどのメンバーは自室へ戻って行った。

 俺は初めての場所だし、好奇心もあって市街地に出てみた。

 街は、イメージとしてはやはりトルコが近い。

 ……と言ってもトルコなんて写真でしか見たことないけど。

 日差しを避けるための幌のある屋台が立ち並び、瑞々しい果物なんかがたくさん売られている。

 宝石も掘れるのか、珍しい石を並べた屋台も多い。

 街を歩いていて気がついたのだが、ここは種族がとても偏っている。

 まず、多く見かけるのは人間だ。

 髪は黒く天然パーマで肌は浅黒く、中東や東南アジアの人の肌とほとんど同じ。

 この世界ではヒトの適応力が一番高いらしい。

 次に多く見かけたのは、蟻人であるミュルミドーンだ。

 肌は黒みがかった色で、髪は鮮やかな白。

 蟻と言っても手足は人間と同じ本数だし、ぱっと見た感じヒトにしか見えない。

 大きく違うところは、頭から釣り竿のように伸びた二本の触角と白目のない赤い目だ。

 宝石のようなその赤い目は、よく見ると複眼になっているのがわかる。

 シルヴァから聞いたところによると、触角はフェロモンを感知する器官だそうな。

 つまり、匂いを元に行動を統制できるので、アイコンタクトなど比べ物にならない精度でチームが戦えるわけだ。

 正直、反則じゃないかと言いたくなるくらいの能力だが、やはり個人技に活路を見出した方が良さそうだ。

 女性しか見かけないが、男はほとんど存在しない種族なのだと言う。

 基本的には女王と働き蟻に相当する女性で群れが構成されるらしい。

 あと、全員同じ顔に見えるので、背番号をちゃんと確認しとかないとまずそうだ。

 他の種族と言えば、ケンタウロスくらいか。

 ハーピィやリザードマン、コボルトは全く見かけない。

 この直射日光は、空を飛ぶ種族や体毛が多い種族、乾燥に弱い種族には厳しすぎるのだろう。

 適応しているとはいえ暑そうなヒトと違って、ミュルミドーンはまったく平気そうにしており、めっぽう暑さに強いだろう事がわかる。

 試合前にミュルミドーンが見れたのは収穫かな。

 聞くのと見るのじゃ、全然違うしな。




 夕方からの練習も、連携や戦術の確認を中心に軽めに済ませた。

 想像以上にこの暑さで選手たちがバテているのがわかったからだ。

 前日入りして良かった。

 少しでも慣らしてなかったら、とても耐えられなかっただろう。

「おー、クロウは全然平気そうだねー」

「ん? ああ俺か? まぁ慣れてるからな」

 ブルーから言われて気付いたが、俺は平気だ。

 ぶっちゃけた話、日本の夏の方がよっぽど暑い。

 こっちは、気温自体は高いかもしれないが湿度が低いからな。

「でも……そうか。なら、明日は俺がメインでボールを運ぶとするか」

 選手たちの事で頭がいっぱいで、自分が見えてなかった。

 反省反省。

 上下動が多くなるよう、前回よりは下がり目のポジションを取ってみよう。

 そんな事を考えつつ、練習は終了。

 全員に十分な睡眠と水分補給を厳命。

 この暑さだと、なかなか寝付けないという事も考えられる。

 それと水分不足になると足が攣りやすくなるのが問題だ。

 日本代表も中東の試合なんかでは、よく足が攣っているもんな。

 睡眠不足で水分不足など自殺行為。

 そこで、リラックスさせるべく、マッサージを受けたい奴は言うように――と言ったのは失敗だった。

 全員が手を上げたからだ。

 ちゃっかり翡翠まで上げている。

 お前、みんなのデータ分析は頼んでたけど筋肉は張ってないだろ……と言うと、

「……私がどうなろうと、監督は構わないんですね……ヨヨヨ」

 とか泣き真似しながら言う。

 かくして俺は、全員の部屋を回る羽目になったのだった。

 おかげでくたくたになって、その日はよく眠れた――

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