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バカ

 翌日。

 練習場に集まったメンバーに、メニューを指示すると、翡翠を呼び出した。

 この頃は流石の彼女も観念して松葉杖のような杖をついている。

「……なんですの?」

「魔法病院行くぞ」

「は?」

 翡翠が驚いたのも無理はない。

 この世界の病院の治療費は非常に高額なのはシルヴァが言っていた通りだ。

 それは、どんな病院でも、症状でも高い。

 とりわけ、魔法での治療はさらに高額だった。

「はぁ……そんなお金どこにあるんです?」

 これだからこの世界の事情を知らない人は……とでも言うような目だ。

「ここにある」

 じゃらりと音のする布袋を差し出す。

「え?」

 袋の中身を覗いた翡翠が驚愕の声を上げた。

「そんな……大金……こんな……嘘……」

 袋の中には、金貨や銀貨がぎっしり詰まっていた。

 下手に持ち歩いたら強盗に殺されそうな額だ。

「治療費は心配いらん。行くぞ」

「……そ、そんなわけにはいきません。こんな額……もらうわけには……」

 喜ぶどころか青ざめて拒否する翡翠。

 彼女は高飛車のように見えて、他人の事を考えられる人間だ。

 だからこそ、このチームには絶対に必要なんだ。

「お前が出れない事の方が困る。いいから来いバカ」

「バ……バカと言いましたか!?」

「そうそう。翡翠は怒ってる方がらしいよ」

「……っ!!」

 松葉杖で殴られた。

 すげえ痛い。

「何で私のためにそこまでするんです! 貴方の事、全然わかりません!」

 ……流石にふまじめすぎたか。

 ほぐそうと思ったんだけどな。

 ここは正直に伝えるべきだな。

「……お前が必要なんだよ」

「……!」

 顔を真っ赤にする翡翠。

 ……俺なんかヘンな事言ったか?

「そ、そうなんですか?」

「そらそうだろ」

「そう……ですか」

 ぶつぶつと呟く翡翠。

 彼女はしばらく俯いて考え込んだが、やがて顔を上げた。

「……わかりました」

「よし、じゃあ行……」

「ただし、貰うわけにはいきません。お借りいたします」

 きっぱりと言い切る。

「真面目だなあ」

「悪うございましたね」

「そこがいいとこなんだけどな」

「……っ!」

 またゆでダコみたいに真っ赤になる翡翠。

 あうあう、と言葉にならない音を紡ぎ出す彼女を連れて、街の中心部にある魔法病院に向かった。

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