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はじまり

「おー、ヒト族かな? ゴメン、選手が足りないんだー。試合に出ない?」

 異世界に迷い込んだおれに、突然告げられたのはサッカーの助っ人だった。




 1・

 

 話は数時間前に遡る。

 俺の名前は、矢田駆郎やたくろう。高1だ。

 その日、俺は所属しているサッカー部の部活中だった。

 ちょうど、次の大会のレギュラーが発表される日。

 残念ながら、俺は男子としては小柄だ。フィジカルは今ひとつで、どうしても当たりに弱い。

 だから、ずっと補欠だった。

 それでも、中学の三年間ずっと頑張ってきたし、テクニックだったら誰にも負けない自負もあった。

 しかし……

 結局、俺はスタメンにはなれなかった。

 小柄というだけの理由で。

 実際、最後の試合の相手は、確かにフィジカルに優れていた。

 身長が高いメンバーで揃えようという意識もあるんだろう。

 最後の最後、温情として俺にも出場はまわって来るはずだったが、GKがPA外で手を使い一発退場。

 控えGKで交代枠を使い切り、俺は出場すらできないまま中学時代を終えることになった。

 そして、高校生活がはじまったが、サッカー部に入部する気にはなれなかった。

 身長が伸びる事を期待したいところだが、中学の際に交通事故に合い、その後遺症で身長はほとんど伸びないだろうとも医者から言われていた。

 事実、身長はそれからほとんど伸びていない。

 それに校区の都合でこの高校のサッカー部はほとんど中学の時と同じ面子だ。

 チームに必要とされずそれでも意地で残り続けた俺は、チームメイトと馴染めず、信頼関係が築けなかった。

 そんな彼らと、もう一度やり直す勇気はない。

 未練がないと言えば嘘になる。

 イタリアの偉大なサッカー選手、ロベルト・バッジオに憧れて伸ばした、低めのポニーテールは未だに切れないでいる。

 そのせいで女子と間違えられる事もあるが……でも、切ったら何かが終わる気がして、切るに切れない。

 気が付けばリフティングや壁当てをしてしまう。

 走り込みをしてしまう。

 未練たらたらなんてものじゃないな……我ながら。

 今日も、ボーッとサッカー部の練習の様子を見ていたんだが……。

 ――あいつらより、俺の方がテクニックがあるのに……

 胸に重苦しい何かが溜まっていくような居心地の悪さを感じて踵を返した。

「危ないっ!?」

「へ?」

 声がした時にはもう遅い。

 飛んできたサッカーボールが、俺の頭を直撃した――


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