生け贄と痛み
『なぁ、アニエル。家何処だ?』
『家ですか?』
何故俺がこんなナンパ男みたいなことを聞いているかというと……。俺の家はここから千キロ先にある。俺一人なら討伐したバフォメットを背負いながら走って帰れたのだが…アニエルがいるのでそうもいかないというわけだ。
『私の家は彼処です。』
と、アニエルが指を指した場所を見てみると物凄くでかい屋敷がそびえ立っていた。
『な、なぁアニエルって物凄い金持ちなのか?』
『いえ?そんなことはないと思うのですが…』
おいおいマジかよ…確かに服はそれなりの物だがここまでとは。それに自覚がないのが凄いな。ここは無かったことにした方がいいな。
『ま、まぁそんなことよりアニエル良かったらでいいんだが今晩はここに泊めてくれないか?』
『え、えとはいどうぞ』
『そうかありがとう』
まぁ、泊まる前に行くとこがあるが…ここは断りをいれた方がいいのだろうか?一応いれとくかそうしよう。
『その前にちょっと行くとこがある。30分程で戻る。』
そう言ってバフォメットを背負い直し
『サンダーエンチャントスピード』
魔法名を唱え自分の村に走り出した。
十分程で家にたどり着きバフォメットを調理台に乗せた。
『エンチャント解除』
そして俺は神への贄としてバフォメットの血を献上した。
『我が名はラミエル・バルキエル御身と契約せし魔術師。アジ・ダハーカの名の下に今宵は贄を献上します。』
そう言うと調理台がどす黒い赤色の光で覆われ散り散りに稲妻も見える何とも不気味な状況が出来上がった。
しばらくするとバフォメットが干からびて行った。そして脳内に声が聞こえてきて
『おい貴様この程度で我が満足するわけがなかろう。もっと贄を寄越せ』
(いや、そんなこと言われても今回はこんだけしかいなかったんだよな…
『まぁ良い我は心が広いからな。今回はこれで我慢してやる。次は期待しているぞ』
(わかりましたよ…悪神アンラ・マンユの配下であり悪の根源と恐れられ、千の魔法を操ったと言われる怪物アジ・ダハーカ様
『昔のことだ。それよりわかったのなら良い。それではな』
そう言うと、どす黒い赤色に覆われていた調理台が元の色を取り戻した。
『……ふぅ疲れた。じゃあ戻るか。サンダーエンチャントスピード』
そう呟きアニエルの家へと走り出した。
約十分後
すると、アニエルの家が見えてきた。……やっぱり馬鹿でかいな。
『エンチャント解除……ふぅ』
家の玄関の前まで行きドアをノックし
『おーいアニエル帰ってきたぞー開けてくれー』
と、大きな声を出しアニエルを呼ぶと
『はーい』
と、声が聞こえドタドタと足音が聞こえてきた。そして思いっきりドアを開けた。えっ?思いっきり?扉が此方に向かって‥…ドンと変な音をたて俺の意識は途絶え…られたら良かったのだがそんなに柔でわない。そう耐えられるのだ。だがそれは耐えられるだけで痛くないわけではない。その気持ちを伝えるために頭を抑えながらアニエルを睨み付けた。そしたら涙目にながら
『す、すいません、すいません~』
『ま、まぁ今回はそんなに痛くなかったから許してやる。』
『あ、ありがとうございます。』
『今回は‥な?次はない』
『は、はい~』
このくらいで許してやるとして俺は本題に向かうことにした。
『それでアニエル入ってもいいのか?』
『はいどうぞ』
家主の許可は取ったので早速上がることにした。