覚悟と防衛
『なぁアニエル、ヘスティアは大丈夫なのか?』
俺は今も眠り続けているヘスティアを見ながら聞いた。すると、アニエルは
『うん。命の危険は無いよ』
『そうか』
俺は安堵の溜め息を吐きヘファイスを見た。ヘスティア、アニエルを守れなかった事に責任を感じているのか肩を落として落ち込んでいる。
『ヘファイスお前は自分が強いと思っていたのか?』
するとビクッと肩を震わせた。俺はそのまま言葉を続ける。
『思いあがるなよヘファイス。誰にも負けないなんてのはあり得ない。上には上がいる。実際今回俺もお前も負けた。』
アニエルが止めようと前に出た。それを俺は手で制し
『一つ言おう。だからどうした?今回は相手が悪かった。何せあいつは神話の世界の化け物なんだからな』
ヘファイスが顔を上げ本当かと顔で訴えてくる。
『あぁ本当のことだ。神というよりは悪魔だがな』
自分でもなんで知っているのかは分からないだがその悪魔の名前が思い浮かんできた。
『ムルムルそれがあいつの名前だ』
『ムル…ムル……』
噛み締めるように名前を反芻した。
『あぁ………そうだ。俺はあいつを倒せるように強くなる。今回は負けたが2度目はない。お前はどうする?ヘファイス』
俺は試すようにヘファイスに聞いた。するとヘファイスは目に覚悟の火を灯らせながら
『強くなりたい……もう負けないように』
『いい返事だ。じゃあ取り敢えず帰るか』
俺は二人をみながら確認をとった。
ヘファイスがヘスティアをおぶり家へと向かう途中馬車のおとが聞こえてきた。貴族か?と思いつつ魔法を展開した。
『パラライズレーダー展開』
反応は四十ちょいか。多いな
『なぁ、アニエル四十位の人間の反応があるんだが…』
『貴族の方々かも…でも少し多いかも』
『だよな……なんかあったのだとしたら面倒だな』
俺は溜め息を吐きながら歩を進めた。そしてその予感は的中した。彼等の動きに異変が起き始めたのだ。
『こっちに向かって来てるな………』
俺一人なら逃げることも出来なくもないがコイツらがいるからな……仕方ないか
『二人とも止まれ罠をはる』
さっきの闘いで学んだことは強行突破だけでは勝てないこともある。ならどうするか?簡単だ布石を先に打っておく。後はどんな罠を張るかだかそこは考えがある。
『ヘファイス。炎を紐状にしてくれ』
『………こうですか?』
ヘファイスが紐状にしたものを渡してきた。
『あぁ………こんな感じだ』
俺はそれを回りの木に自分で作った雷を紐状にしたものと一緒にくくりつける。
それで回りを囲み防衛線を張る。そしてそれよりも細い物も一緒にくくりつける。
よしこれで防衛線は張れた。後は敵意があれば殺すだけだ。
『ん………きたか』
そして敵の大将らしき人物が姿を現した。