支配と本気
(-ラミエル視点-)
………………うっ…ここは、気が付くとそこは真っ暗な空間だった。
(おい貴様なぜあんなやつに負けている)
アジ・ダハーカの声が脳に聞こえてきた。
仕方ないだろ…今の俺にはその力が無いんだからな。大体魔力も無くなっていたあの状況じゃ…
(ふざけるなよ馬鹿者が!もう良い貴様はそこで見ておれ………我が本当の闘いというものを教えてやる)そう言うと視界がどんどんクリアになっていった。そして体が勝手に動き始めた。
『ふむ………本当に魔力が無いな。これは補給するしかあるまい。』
そう言って木に手を当て
『我がその命もらい受ける』
木からエネルギーを奪いとり、魔力に変えた。
エネルギーをとられた木はどんどん枯れていく。
(………は?なんだよそれ。そんなことまで出来んのかよ。
『当たり前だ、馬鹿者が。我を誰だと思っている。神話の闘いではこれより酷い状況などいくらでもあったわ。………よしこれぐらいでいいだろう。』
木のエネルギーを殆ど奪いとり、十分な魔力を補充出来たのだろう手を離し、自分に強化魔法を次々にかけていく。その強化効率はラミエルのとは比べ物にならないほど良いと言えるだろう。
幾つか強化魔法をかけた後、元いた場所つまりアニエルのいる場所に歩き始めた。
いきなり魔法の構築をはじめ何処かにそれを放った。そして何かを弾いた音がした。この時、ラミエルは思った。"あぁ………やはり化け物だと"
実際こんなことが出来るのは人間では不可能に近いと言えるだろう。別に当てることぐらいならラミエルにもできるのだが、ラミエルにはアジ・ダハーカがしたようなスピードは出せない。
アジ・ダハーカは魔法を放ち当たったことを確認しながら歩き続ける。そしてアニエルの居る場所が見えてきた。するとアジ・ダハーカは口を開き
『貴様か?我の食料源をいたぶってくれたのは』
と化け物に尋ねた。化け物は、
『はて?何のことでしょう。我はただ立ち向かってきた者を退けただけですよ?』
と、答えた。アジ・ダハーカは、その答えが気に食わなかったのだろうイラつきながら
『貴様、我にそんな戯れ言を言うか。ならば死ぬ覚悟は出来ているのだろうな?』
化け物は笑い始め
『我が死ぬ?貴方に殺される?貴方こそ戯れ言は辞めてくれますか?人間風情が我を殺せるとでも?』
と馬鹿にし始めた。アジ・ダハーカは可哀想な者でも見ているような視線を送り
『はぁ………貴様は我が人間だと思っていたのか。………悪魔も大分雑魚が増えたらしいな』
と肩を竦めた。その事が気に食わなかった化け物は
『貴様………ならばその身で我が恐ろしさしかと味わうがいい。』
そう言いナイフを投げつつ攻撃を仕掛けてきた。
つまらなそうな目をしながらアジ・ダハーカはそれを受け流す。そしてため息を吐くと
『この程度か詰まらんな』
そう口にした。それを聞いた化け物は攻撃のスピードを早めるがことごとく受け流される。
アジ・ダハーカは余裕綽々といった感じで流し続けた。そして魔力を高め始めた。
『見ておれ馬鹿者。これが神話の世界の魔法だ。』
そう言うと視界全体に広がる魔法陣。その数はとてもじゃないが数えきれない。そしてその魔方陣から属性の違う魔法が次々と出てきて化け物に襲いかかり始めた。