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物語の続きをどうぞ  作者: TYOUKO
三、歴史の章 (然を知る)
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使用人の休暇

「……三、四、五、六……七……八……あれ? もうそんなに経つ?」

 リョウが台所で昼食の支度をしながらふと思い立ったように指を折りつつ独り言を漏らす。

「はい? いかがなさいました?」

 後ろで片付けをしていたハンナが訝しげに声をかけてきた。

「いや……あの……ハンナたちがうちに来てからもう九ヶ月経つの、ね?」

 リョウが指折り数えていた手を胸元に固定したままハンナの方をゆっくり振り向いて弱々しく確認してみる。

「あら……そう言われればそうですわね。なんだかもっと長くいたような気もすればもっと短かったような気もしますし……不思議ですわね」

 ハンナは楽しそうに笑うのだが。

「やだ……どうしよう……」

 リョウは若干青ざめている。

「……え? どうかなさいましたか?」

 ハンナが驚いたように目を丸くしてリョウのすぐ隣に歩み寄って来た。ので。

「ハンナ……ごめんなさい、私、使いたい放題お二人を使って、全く休暇もあげてないじゃない? 半年に一度くらいはゆっくり休めるように休暇を出すつもりでいたのに……!」

 住み込みでの仕事で、どこかで待っている家族がいるわけでもない二人、という性質上「帰省」のためのまとまった休暇も必要ではないはずなのだが、それでもリョウはこの二人を雇った時から休暇はきちんと取らせてあげなければと思っていた。特にこの二人は、昼夜に関わりなく勤勉に働いてくれるので尚更だ。

 それをうっかり忘れて、甘え切っていた……。そう思ったら情けなくて涙が出そうになっている。

「あら嫌だ! そんな事お気になさらなくていいんですよ! わたくしどもはここから出たら帰るところもない身軽な身分ですし、こうやって家族のように接していただいていますとね、もうここが我が家のような気さえして、普段からくつろいでおりますもの。それに年に一度お暇をいただく契約になっておりますわよ。あら……でも、くつろいでるなんて……言っちゃいけない言葉でしたわね?」

 必死の口調だったハンナが最後だけふと我に返ったように、決まり悪そうに小さく笑って舌を出した。

「いや、くつろいでもらえるのは嬉しいわよ。私も二人は家族みたいなもんだと思ってる……って、ええ! 本当? ホントにそんな風に思ってくれてるの?」

「厚かましくてごめんなさいね。……なんだかリョウ様と旦那様を見ていると……その……もしわたくしに娘がいて結婚していたらこんな風だったかしら、なんてたまに思ってしまうものですから」

 決まり悪そうに頰を赤らめて視線を泳がせるハンナを見ながらリョウが目を丸くする。

「うわあああああ! ハンナ! ありがとう!」

 しかも娘って言った? 娘って! レンが息子なんじゃなくて私が娘! 言ってみればレンはついでの家族!

 思わず抱きつきそうになって、あ、いやそれは図々しいか、と思いとどまり胸元で勢い余った両手を握りしめてしまった。

 その握りしめた手をハンナがそっと包んで優しく微笑む。

「いいんですよ。だからね、わたくしどものことはお気になさらずね」

「いいえ! そうはいかないわ!」

 リョウがはっと我に返ったように声に力を入れる。

「だいたい年に一度って……少な過ぎない? たまには仕事抜きで休むことだって必要でしょ? 二人で行きたいところとかだってあるでしょ?」

「え……行きたいところ……ですか」

 途端にハンナが「うーん」と考え込んだ。

 あ……あれ? 行きたいところ、くらいあるよね? 思い出の場所とか、故郷とか、単に旅行とかだって……。

 なんて考えながらリョウがハンナの顔を伺うように覗き込むと。

「そうですわねぇ……そういうことはコーネリアスに聞いてみませんと……」

 うふふとハンナが誤魔化すように笑った。

 

 

「……そうか。もうそんなに経ったんですね。僕もうっかりしていました」

 珍しく午後の仕事の後、アルフォンスを送って行ってから再び仕事に戻った為帰宅が遅くなったレンブラントはリョウと食事をしながら二人の使用人の休暇についてリョウから話を聞いていた。グウィンとアウラは先に食事を済ませている。

「だいたい年に一度、暇を出すというのが一般的だったので彼らとはそういう契約にしていたんですが……そうか半年に一度、というのもいいですね。彼らには本当によく働いてもらっていますからね」

「年に一度、が一般的なんだ……」

 リョウが眉を寄せて思案げに呟く。

 最近は騎士隊だって週に一度は休みがあると聞いている。

 レンブラントのように隊長ともなるとさすがにそうはいかないこともあるようだが。

 で、使用人なんていうものは毎日昼夜関係なく仕事をしているんだから……ちゃんと休暇を取って然るべき、と思ったのだけど……そこが住み込みの仕事との違いか、とふと気がついて……気がついたところで正式な雇い主である夫を差し置いて「休暇をあげる!」なんて言い出してしまった自分が恥ずかしくなり、さらにそれを咎めるでもなくその意見に賛同しようとしてくれているレンブラントに申し訳なくなってきてしまった。

「あの……ごめんなさい。私……レンを差し置いて僭越なことしちゃった」

 リョウが反省の意を込めて視線を落として俯いた。

 そういえば、ハンナだって完全に私の話に乗ってくるんじゃなくて「コーネリアスに聞いてみないと」って言葉を濁した。ちゃんと夫に敬意を表していたのだ。

 ハンナ……偉いな……ああいう感じの夫婦ってやっぱり憧れちゃうんだけど……私には素質がないのかもしれない……。

 リョウがそんなことを考えながらしばらく沈黙していると。

「……ぷっ」

 なぜかレンブラントが吹き出した。

 なので反射的に顔を上げたリョウが「え?」と目を丸くする。

「……ああ、いや、そんなことでリョウが謝る必要はないですよ。すみません……あまりにも急にしょげてしまったから……なんだか可愛くてつい……」

「……ひどい」

 半眼になるリョウの頰に笑顔のレンブラントが左手を伸ばす。

「ああやっぱりこの距離感で食事をするのはいいですね。食堂だと離れてしまうからこんな風にリョウに触れないし」

 なんて呟くレンブラントは、最近食事のメンバーが増えて食堂で食べることが多くなったせいで最近出来なかった、台所の隣の部屋で二人だけの食事、しかもテーブルの角を挟んだ割と近い距離で座っていられることが嬉しくて仕方がないようだ。

 皿に残ったミートパイはもう少しで食べ終わりそうで、もっと言えば具沢山のスープも、サラダも、揚げた後で甘辛いタレに漬け込んで味を染み込ませた肉料理も一通り食べ終わって食事も終盤。といった状況でフォークを置いたのはもう少しこの時間を楽しみたいという意思表示なのかもしれない。

「彼らの休暇ね、僕もうっかりしていたんですよ。どの時期に休暇を取るかは彼らの都合に任せるって話していたんですがその後、確認を取らないまま今になってしまっていたので。都市の一年を通じた習慣もまだ定着していないし……年の終わりから初めにかけてにするべきなのか、いっそのことうちで雇い始めた日を基準にして一年経つ頃にするべきなのか、と考えていたんですけどね」

 レンブラントがリョウの頰を撫でながら、そんな言葉を続けた。

「だから先にリョウが気付いてくれて良かった」

 レンブラントが優しく細める瞳にはリョウの言動を咎める色はかけらも無い。

「う……」

 なのでリョウはかえって言葉に詰まる。

「ほら、怒ったりしてないんだからリョウも気にしない! 笑って」

「うにっ……!」

 レンブラントが悪戯っぽく笑って撫でていた手でリョウの頰をつまんで引っ張ったのでリョウが思わず変な声を出した。

 その声が意外だったのか一瞬目を丸くしたレンブラントが手を離すと今度は頭を抱えるようにして笑い出す。

「……ひ、ひどい……」

 リョウがつままれた頰をさすりながらじとっとした視線を向ける。

 

 都市の習慣、か。

 頰をさすりながらリョウがレンブラントの言葉を頭の中で確認する。

 そういえば平和になってから都市の習慣は昔を少しずつ取り戻そうとしているようだった。

 昔、まだ世の中が比較的平穏だった頃はどの都市や町や村でも一年を通じて祭りや行事で人々の生活は彩られていた。それが危険を恐れるために夜間の警戒が厳重になったり、旅行のような娯楽がなくなってきたりしたせいでそういう彩りは無くなっていたのだ。

 一年の初めにその年の抱負を願掛けする祭りがあったり、芽吹きの季節を喜ぶ祭りや、種まきの時期に農夫を景気付ける為の祭りがあったり、収穫祭があったり。年の終わりには一年の労を労って労働者は長期の休暇を取って旅行を楽しんだり、とかもあった。

 ここ西の都市の周辺の地域は割と一年を通じて気候が温暖なのでどんな祭りがあるかリョウも知らないのだが、リョウの知っている東方の習慣では季節の変化がはっきりしていてそれぞれの季節ごとに季節祭みたいなものもあった、と記憶している。

 今、平和自体は戻ってきたのだが、長年そういうことをしないできたせいで人々の間でその習慣自体が忘れられてしまい、さらにはここ西の都市のように各地から集まってきた人々はそれぞれ違う文化的民族的な背景を持っていたりするものだから都市を上げて何か行事をするということがなくなっている。

 おそらくなにかのお祭り的な行事をするとしたら同じ背景を持つもの同士、内々でひっそりと楽しむ程度のようだ。そもそも、おおっぴらに夜通し祭りを楽しむような雰囲気は、さすがにまだ不謹慎だとみなされていた頃の名残が強い。

 

 そんな状況だから例えば年の終わりに長期休暇を出してみたところで、年配の夫婦にそれは果たして本当にありがたいことになるのかどうか疑問、というのがレンブラントの意見なのだろう。

「……彼らが休暇をどこで過ごしたいかにもよると思うんですが……そうですね……今の時期ならどこに行っても大体は過ごしやすいと思いますから少し早めに休暇を取らせるというのもいいかもしれません。……年の終わりまで待つと、地域によっては寒くて楽しいどころじゃないかもしれませんしね」

 一通り笑い終わったレンブラントが思案げに話し出した。

「そっか……どこか行きたいところ、あるのかな……」

 気を取り直したリョウが相槌を打つ。

「本人たちに聞いてみましょうか」

 ふっと笑顔を作ってレンブラントが皿に残っていたミートパイを口に運ぶ。

 ああそうか、食後のお茶を持ってきてくれるからね。

「ちょっと待っててね」

 リョウがそそくさと立ち上がり部屋の隅に置いていってもらっていたワゴンを持ってきて食事の済んだ食器をそちらに移動させ始める。

 暫くすればカチャカチャという音に気づいたハンナが片付けを手伝いに部屋に入ってきて食後のお茶の用意も兼ねてワゴンを台所に運んで行ってくれるというのがいつものパターンだ。

 案の定ニコニコと静かな微笑みを浮かべたハンナが「お食事はいかがでしたか?」なんて言いながら入ってきてリョウの作業を手伝い始める。

「今日も美味しい食事でしたよ。ところで今日のデザートは何ですか?」

 レンブラントが席に座ったままハンナに声をかける。

 席に座ったままとはいえ狭い室内。お互いが微笑む小さな息遣いさえしっかり伝わる家族的な雰囲気でリョウも思わず笑顔になる。

「今日はプディングがありますよ。リョウ様がお気に召したんですよね?」

 ハンナがにっこり笑って片付けを一緒にしているリョウの方に視線を向ける。

「あ! そうそう。カラメルがね、ほろ苦くてとっても美味しいの!」

 卵とミルクに砂糖を混ぜて、オーブンで蒸し焼きにするプディングは作り方が意外に簡単。型の底に入れておくカラメルが、型から出して上下が逆になった表面を流れる様はとても美しく、上部がカラメルで染まったそれはとろけるような舌触りとカラメルのほろ苦さ、それに全体のほどよい甘みのバランスが絶妙で、ハンナに作ってもらってすぐにリョウは虜になった。

 これを丸いケーキ型で作って大皿に乗せ、切り分けて好きなだけ食べられるというのがリョウのお気に入りの食べ方だ。

 そんなプディングを思い出してリョウが右手を頬に当ててうっとりする。

「ああ、また僕のいないところで新作を食べてるんですね」

 レンブラントがわざとらしく拗ねたような声を出すのでハンナがくすくすと笑い出した。

「じゃあハンナ。そのデザートにはコーネリアスの淹れたての珈琲も欲しいですね。持ってくるときにコーネリアスにも来てもらえるように頼んでいただけますか?」

 おお、なるほど。そうやって二人を呼び出すのか。

 リョウが一瞬、目を丸くした。

 

 

「……行きたいところ、ですか」

 レンブラントの説明を聞いて、珈琲を淹れていたコーネリアスが思案げに呟く。

 大抵はコーネリアスが台所で淹れた珈琲をハンナが持ってきて各自のカップに注ぎ分けるという給仕をしてくれるのだが、今回は「淹れたて」と「コーネリアスを連れてくる」という条件もついたので二人の目の前でコーネリアスは珈琲を淹れてくれている。

 元は白かったと思われる生地のフィルターは珈琲色に染まって、それでも手入れがされているのでいい雰囲気だ。

 ふわっと広がる香りの中で陶器のポットに少しずつ落ちて行く珈琲の音を聞いていると、ゆったりした時間の流れを感じられて心が落ち着く。

 使用人とはいえ身だしなみには気をつけているコーネリアスはいつも姿勢がいい。黒のベストの下の生成りのシャツの袖は作業のために軽く捲り上げていても清潔感があり、白髪が大半と言えるグレーの髪をきちんと撫で付けて、初老とはいえどこか若々しさを感じさせる。

 リョウはそんな上品なコーネリアスが珈琲を淹れている姿も好きだった。

 そんな風に淹れてくれていることを知っているから余計に美味しく思えるのかもしれない。

「ハンナを連れて行くことを考えますとあまり遠出はできないと思うのですが……そうですね……これからの時期に出掛けることが出来るのでしたら、東方に行ってみたいとは思いますが」

 モコモコと珈琲豆の上に盛り上がった泡のかさを減らすことなく少しずつ湯を注ぎながらコーネリアスがレンブラントに告げる。

「え? 東方? コーネリアスって東方に知り合いがいるの?」

 リョウがつい口を挟んだ。

 と、湯を注ぐ手を止めたコーネリアスがハッとしたように顔を上げてリョウと目を合わせ、それからふと微笑を浮かべて。

「ああ……いえ……今となってはもう知り合いはいないかもしれないのですが……昔過ごしたことのある土地なので、もし誰かが残っていたらいいな、と思う程度ですよ。……あとは、ハンナに見せたい景色もありましたので」

 コーネリアスの微笑は過去を懐かしむような、何かを思い出すような、そんなものでリョウはなんとなくその笑顔に見入ってしまった。

 ちょうど珈琲が淹れ終わったところで、タイミングを合わせたようにハンナが台所から温めたミルクのポットを持って来てくれたのでリョウの前のカップにはミルクとコーヒーが半分ずつ入れられる。

「あ、僕もリョウと同じものにしてください」

 レンブラントがハンナの方に声をかけてミルクを催促する。

「ハンナは東には行ったことがあるの?」

 リョウがハンナの流れるような作業を眺めながら声をかける。

「いいえ。わたくしはまだ。……コーネリアスから山が紅葉で美しく染まる話や春先の小川のせせらぎの話や野の花の話は聞いているんですけど……今まではなかなか遠出をすることって出来ませんでしたでしょ?」

 照れたように笑うハンナは素直に可愛らしい、と思える。

「なるほど。そういう事なら年の終わりまで待つよりも時期を決めて休暇を取った方が良さそうですね。この辺は比較的気候が安定していますからずっと暖かいですけど……紅葉を楽しむことができるほど東の方に行くとしたらもう数ヶ月以内に出かけないと寒くなってしまうでしょうしね」

 レンブラントがミルク入りの珈琲を一口飲みながら答える。

 そういえば、確かに紅葉を楽しむことができるくらい季節がはっきりしているのは東の果てに近い場所だ。

 リョウが生まれ育った村や、セイリュウがいる東の高山のあたり。

「東の都市」周辺でさえ「東」とは名ばかりでこの辺と気候はさほど変わらない。

 そんなことを考えながらリョウが昔、育った村の風景を思い出そうと眉間にしわを寄せる。

 ……あ、ダメだ。

 風景なんてほとんど覚えていない。

 村にいた頃なんかそもそも屋敷の中から出なかったし……そのあとクロードに拾われた後もあの山があったあたりからはすぐに離れてしまったんだった。

 記憶にある東方の土地といえば剣を作ってもらった辺鄙な村くらい。でもそこに滞在したときだってまだ子供だったし……風景を楽しむとかは……無かったな……。

「奥様、プディングはどのくらいお取り分けいたしますか?」

 ハンナの明るい声にリョウがハッと顔を上げる。

「ああ、リョウ! そのプディングは本当に美味しそうですね! 僕もリョウと同じくらい食べますからね。一人で全部食べちゃダメですよ?」

 ハンナの声につられるようにレンブラントが声を上げた。

「……いくらなんでも一人でそれ丸ごとなんて食べないから!」

 リョウがレンブラントを睨み付けるとコーネリアスが珍しく声を上げて笑い出し。

「いえいえ、奥様、ハンナの作るプディングは最高に美味しいですからね。奥様なら一人でそのくらいはいけるかもしれませんよ?」

 なんて便乗してくる。

「ひ……ひどい……」

 

 それでも大きめに切り分けられたプディングは皿の上で艶やかに揺れ、一口食べると口中に幸せな甘さとほろ苦さが広がる。

 ミルクたっぷりの珈琲との相性も良い。

 コーネリアスが気を利かせたのか珈琲に追加で入れる蜂蜜を持って来てくれた。癖のないタイプの蜂蜜は珈琲や紅茶の香りを邪魔しないのでリョウのお気に入り。プディングが甘さ控えめなので珈琲を甘くしても大丈夫そうだ。

 

 うふふ、とつい嬉しくて笑みを漏らしてしまいながらリョウは珈琲とプディングを代わる代わる口に運び。

 ……うん。なんとなくね。わかってしまったのだ。

 過去を思い出してつい暗い顔にでもなっていたんでしょうね、私。

 そんな様子を見てまずレンブラントが慌て、どう声をかけて良いかわからなくなったところに、ハンナが話題を切り替えてくれてレンブラントがそれに悪ノリの形で乗っかり、元の話題を振ってしまったコーネリアスが申し訳なく思って蜂蜜まで持って来てくれたんだと思う。

 で、みんなして「気なんか遣ってませんけどね」っていう雰囲気に徹してくれているのよね。

 

 なんていうかもう。

 ありがたいったら……!

 なので私も「何もありませんでした」って顔してしまうしかないじゃない。プディングも珈琲も美味しいんだし。

「幸せですよ」って顔をするしかないじゃない。

 

 だって、今この瞬間本当に、幸せなんだもの。

 

 

 


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