嫉妬
「おや……もう到着したんですね」
部屋に戻ってきたアルフォンスが一旦立ち止まり、三人の立ち位置と表情からなんとなく空気を察して複雑な笑みを浮かべて声をあげた。
「ああ、グリフィスには今挨拶を済ませてきたところだ。……えーとアルフォンス、だったか? 前に一度会ってるな」
リョウが珍しいものを見るようなキラキラした目でアルフォンスとグウィンの挨拶を見つめる。
挨拶といっても簡単な自己紹介程度。一度会っているとはいえ個人的に親しくしていたわけではないのでざっくりと。
それにお互い、仕事内容をグリフィスから聞いた段階で相手の情報も聞いている。
「あ、ねえ、グウィンどこに住むの? うち、客室空いてるんだけど!」
そういえばグウィンはマントを羽織ったままだ。今しがたこの都市に到着したばかり、といった感じ。その割に荷物の類は持っておらず……今から仕事に取り掛かる、というのともちょっと違う出で立ち。取り敢えず、到着したその足で顔を見せにきただけ、といったところか。
「ああ……俺はどこでも構わんが……そいつが卒倒しそうな顔してるぞリョウ……」
グウィンが思い切り顔を背けて笑いを噛み殺しながらそう告げるのでリョウが振り返るとレンブラントが顔面蒼白で立ち尽くしている。
ふとリョウの視界の隅に、これまた必死で笑いをこらえていると思われるアルフォンスが映り込み。
「え? ……あれ? ダメ、なの?」
「まぁ……そうなるんだろうな。そもそも俺のここでの表向きの立場は守護者殿の関係者じゃなく、司殿の関係者、ということになってるしな」
不自然に口元を歪めながらグウィンが言葉を続ける。
なので。
「……え? どういうこと?」
だって「風の竜」が守護者の関係者という枠からどうやったら外れるんだろう?
と、リョウが眉間にしわを寄せながら聞き返す。
「リョウが『仲間を集めて仕事をしている』という体にならないように、ですよ」
アルフォンスがやんわりとした口調で説明を加えた。
リョウが視線を向けると、にっこりと微笑んだアルフォンスのその微笑みには若干何かを企むような色が混ざっており。
「今回彼は『風の竜』としての立場は隠してこの仕事に就いてもらうことになっているんです。グリフィスが適当な肩書きを用意すると思いますが、『移民として都市に入った司殿の古い知り合い』ということで恐らく軍関係に就任するはずですよ」
その説明でリョウもああなるほど、と、ちょっと納得した。
そういえばアイザックとグリフィスはどこぞの「膿」を出し切る。みたいな物騒なことを言っていた。守護者がこの仕事をするにあたって、自分の意思で積極的に動くよりも周りに言いくるめられつつ言ってみれば「傀儡」のように動いていた方がどこに問題の危険分子が潜んでいるかあぶり出しやすいということなんだろう。そのためには「火の竜」である守護者に明らかに「強力な味方」となり得る同族が付いていてはまずいということか。
「でも、グウィンって顔、知られているでしょう?」
納得しかけて新たにリョウが視線をグウィンに向ける。
何しろ、あの、公の結婚の式典とその後の式典で公衆の面前に出ている。
「だから髭を剃らさせられたんだ……危うく髪も短くさせられるところだった……」
途端にグウィンが苦虫を噛み潰したような顔になって「ったく、めんどくせー」と呟いた。
「ああ、なるほどね。でも、折角ですしこの際髪型も変えてもいいかもしれませんよ」
アルフォンスがとても楽しそうに頷きながら相槌を打つ。
そういえば、戦いの間はともかく、都市に入ってからの復興作業やその後の式典の出席の時にはグウィンは再び髭を生やしていた。グウィンの場合、この髭があるかないかで人相も見た目年齢もかなり変わる。それに戦いのついでで復興作業に関わっていたグウィンは、こぎれいな印象よりむさ苦しいくらいの印象の方が強かった。
都市の中でグリフィスやアイザックが探し当てようとしている「膿」である危険分子というのは十中八九、ある程度の立場を持つ者だろう。例えば政治に関わる者、もしくは軍に関わる者。となると、前回グウィンが都市に滞在した期間中に彼自身と密に関わった民より、式典みたいな公の場でちらっと彼を見た、というような者たちであるはずだから……その程度の者なら髭を剃って軍人ぽく髪をきちんと結ぶ、という程度で十分他人になり済ませる、ということか。
「ま、そんな訳で俺は城の方の部屋を使わせてもらうことになってる。都市の中に下手に住んでも俺の正体が変な所からバレるかもしれないしな。せいぜい城とここを行き来する程度の生活になりそうだ」
グウィンはそう言うと、にっと笑ってレンブラントの方に視線を向け意味ありげに片目を瞑って見せた。
「皆さま、お茶にいたしませんか? ……あら? お客様?」
ワゴンを押してきたハンナが部屋に入ったところで立ち止まった。
「ああ、わたしは今日はこれで失礼します。守護者殿にご挨拶に伺っただけなので。……では、以後、お見知り置きを」
グウィンがなんとも役者がかったセリフとともにリョウに向かって軽く礼をするとマントの裾を翻すようにして部屋から出て行った。
……そうか。ハンナたちにも正体は内緒なんだ……。しかも、うん。今の物腰、多分よそではあれで通すつもりなのかもしれないけど……すごく、別人っぽかった!
リョウが思わずにんまりと笑いを浮かべて、レンブラントが隣で小さくコホン、と咳払いをした。
「すみません。お客様がおいでになられていたなんて全く気付きませんで」
ハンナがおろおろとしながらグウィンが出て行ったドアの方を見やる。
あまりにも颯爽と出て行ったので見送りに玄関までいくということすら出来なかった。
「……あれ? そういえばグウィン、勝手に入ってきたのね」
リョウが眉をしかめながらボソリと呟く。
一応、この家には呼び鈴というものがあって、鳴らせば使用人が応対に出ることになっている。
コーネリアスが大抵は対応するが、客人を主人のところに通すまできちんと客人に付き添うはずだし、よほどよく知った間柄で客人がそれを断って自ら部屋まで入ってきたとしても、お茶の支度をしているハンナに一声かけ忘れるということは無いだろう。
つまり。
「案外無作法ですね。人の家に無断で入ってくるなんて」
ちょっとトゲのある口調でレンブラントが一言。
「ああ、ハンナ。気にしなくていいですよ。あなた方には全く責任のないことです。それに……素性の知れない人ではなくて今度一緒にこの仕事をするメンバーでもあるので」
レンブラントの「無作法」発言で、そんな人間を迂闊に家に入れてしまったことにさらにおろおろし始めたハンナにアルフォンスが声をかける。
「ええ、でも……そんな方の出入りがあるなら普段はドアに鍵をかけるようにした方がよろしいのではないでしょうか?」
ハンナが心細そうにリョウの方に目をやる。
「え……あ、いや、大丈夫よ。ねえ、レン?」
こういうきちんとした屋敷なのでコーネリアスたちが来てくれてから、玄関は通常は施錠して呼び鈴を鳴らされたなら使用人が応対に出るようにしようと提案されていたのだが、リョウがそれでは堅苦しいし仲のいい友人たちが気軽に入って来てくれるのはむしろ歓迎したい、と言って断っていたのだ。例えばザイラとか。
「鍵、かけてもいいですよ。なんなら応対になんか出なくてもいいですし、あいつは次に来た時は門前払いで結構です」
そっぽを向きながらレンブラントがとんでもない事を言い出すので。
「わーーー! ハンナ、今のは聞かなかった事にしといていいから!」
なんてことを言いだすんだ!
リョウが慌てて笑顔を作ってハンナに声をかけた。
「……そういえばグウィンって甘いもの好きかしら」
夜、ソファでくつろぎながらリョウがちょっと上の空でそんな独り言を漏らす。
レンブラントは仕事の報告が必要という事で部屋の隅にある書き物用の机に向かっている。
グウィンが帰った後、リョウはなんだかずっと機嫌が良い。
ハンナが持ってきた午後のお茶は香りのいい紅茶と、林檎のケーキだった。
リョウが漬けた林檎は意外に多くてお菓子によく登場する。
今日のケーキには林檎と一緒に刻んだオレンジの皮の砂糖漬けも入っていてアルフォンスはそのさっぱりした香り高いケーキと紅茶の相性の良さに夢中だった。
「グウィン、せめてこれ食べてから帰れば良かったのに」なんてこぼすリョウにアルフォンスは「仕事をしていない者に食べる資格はありません」なんて即答し、レンブラントは大人げも無く「そうですね」なんて相槌を打った。
そんな二人をリョウは「心が狭い!」と大笑いしていたが……アルフォンスの場合、仕事をしていない者に食べさせるくらいなら自分がその分をお持ち帰りしたい、というのがみえみえで。レンブラントの場合はもはや変な対抗意識になっている。
午後から仕事がある日にはすっかり定着したハンナが作る夕食の時も、リョウは上機嫌だったので給仕をするハンナに「今日はお仕事の進みでも良かったんですか?」なんて聞かれていた。
さすがにグウィンについて話すことはなかったが、その機嫌の良さがグウィンに起因している事を察しているレンブラントはなんだか面白くない、といったところだった。
「……この都市の男の人たちって甘いもの好きな人が多いわよね。レンも好きだし。……でもさ、グウィンってさすがにそこまで好きだったかなって思うのよね」
「そうですね」
独り言にしてはちょっと本格的になってきたリョウの声量にレンブラントが一応答えてみる。
「あの人、甘いもの食べてるところなんて見たことあったかな……果物とかは食べてたと思うんだけど……レン、知ってる?」
「さあ、どうでしたかね」
相変わらずレンブラントの返事は素っ気ない。
「あ、そういえば私、パンケーキを作って出してあげた事があったな。あれ、思いっきりベリーのソースがかかったやつだったけど……あれ、結局あの人食べてたっけ?」
「ふーん」
レンブラントの返事の素っ気なさはほとんど気になっていないようで、リョウはいつぞやのスイレンのところで作ったパンケーキをグウィンが口にしていたかどうかを思い出そうと必死だ。
……まあ、その後の出来事がとんでもないものだったのでリョウの記憶にはもはや残っていない事であるのも事実なのだが。
「飲み終わったんですね、これ」
リョウの手の中からまだ温もりの残るカップが取り上げられる。
バスルームから出てきたリョウにレンブラントが作ってきてくれたカミレのミルクティーが入っていたカップだ。
「あ、うん。ご馳走さま。……美味しかった……え?」
カップが視界から消えた途端、リョウの顎がすくい上げられて至近距離でレンブラントと目が合った。
笑っているようには到底思えない、ちょっと無表情に近い、ブラウンの瞳。
どうしてそんな顔をされるのか訳がわからず固まったリョウのすぐ脇、その座っているソファの上にレンブラントが片膝をついて、その逆側の手でリョウの寄りかかっている背もたれを掴むようにして屈み込むのでリョウが身動きが取れなくなる。
いつもならこんな時はレンブラントは優しく微笑むとか悪戯っぽい笑みを浮かべるとか、何かしらの表情がある。
怒られるようなことは……うん、していないはず。今日はちゃんとショール羽織ってるし。
と、リョウがちょっと焦って確認してみる。
「……グウィンのこと、そんなに気になりますか?」
「え? ……あ、ああ。うん。だってこれから一緒に仕事して一緒にお茶するでしょう?」
グウィンの好みに合わないものを出すのは申し訳ないからハンナと打ち合わせしようかな、と思っていたんだけどな。なんて思いながらリョウが答える。
と、レンブラントがほんの一瞬わずかに眉間にしわを寄せて。
「グウィンが好き?」
「え? 当たり前じゃない」
何を言い出すんだ、とでも言うかのようにリョウがきょとんとして即答する。
その瞬間、レンブラントの顔が一瞬だけかっと赤くなったような気がした。
そして。
「え? ……レン……っ!」
リョウの唇が少々乱暴に塞がれる。
リョウが慌ててレンブラントの胸元を両手で掴んで押しやろうとするがびくともせず、リョウの意識がそちらに向いている間に口づけは熱を帯びたものに発展していく。
半ば強引に歯列を割って入ってきたレンブラントの舌がリョウの舌を捕らえ、吸い上げて、抵抗の余地も与えない。その口づけは徐々に噛みつくようなものに発展していき。
「……っ……っふ……んぅ……」
リョウの声がかすかに漏れるも、レンブラントは息継ぎさえ許さない勢いで深い口づけを続けるのでリョウの意識が薄れかけてくる。
「……これでもあいつの方がいい?」
リョウの手の力がすっかり弱まってきたところでようやく唇が離れ、それでも至近距離で瞳を覗き込んだままレンブラントが低い声で尋ねてくる。
その表情にはいつものような余裕は一切なく、怒っているようにしか見えない。
なので。
「……そういう意味じゃないことくらい知ってるでしょ? グウィンは家族みたいなものなんだってば」
唇をようやく解放されて、小さく肩で息をしながらリョウがちょっと怒ったように返す。
だいたい、レンだってグウィンが旅立つ前は結構仲良くなっていたじゃない。なんで私が仲良くすると不機嫌になるのよ。
「僕はあなたの夫だ。夫は家族じゃないんですか?」
レンブラントはますます機嫌が悪くなっていく。
でも、ここで折れるわけにはいかない、なんていう意地のようなものがリョウの胸に頭をもたげてきて。
「レンのそれはただのやきもち?」
なんて煽るようなことをつい言ってしまう。途端にレンブラントがわずかに目を細めて、頰のあたりがひくっと震えた。
「ああ、そうですよ。ただのやきもちだ。僕が作ってあげたお茶を飲みながら他の男のことばっかり考える妻にちょっとイラついているだけですよ」
……あ、しまった。
こういう状況で煽ったら洒落にならない、かも。
そんなことにリョウは思い当たったが、時すでに遅し、で、レンブラントは少し乱暴にリョウの寝間着の胸元の紐を解くと一気に胸をはだけさせ、同時に寝間着の裾から遠慮することなく手を差し入れてきた。
「今日はあまり優しくはしてあげられませんよ」
「……っ!」
リョウが言葉を返す間は与えられなかった。
「……う……ん」
リョウが暗がりの中でわずかに声を漏らす。
……体がだるい。
寝返りを打つのも面倒くさい。
真っ暗なところを見ると、まだ先刻意識を手放してからさほど時間は経っていないみたい。
あの後、ソファの上でひたすら責め立てられ、ひと段落したと思ったらそのままベッドに運ばれてそのあとも全く休ませてもらえなかった。
あんな風にガツガツ抱かれたのは初めてだった。
いつものように優しく慈しむように触れられることはなかった。それに、いつもリョウが我慢できなくなって震えると、レンブラントはその手や唇、言葉を使って優しく身体を宥めてくれるのに、そういうのも一切なく、ただただ、抱かれた。
まるでただひたすらに気持ちをぶつけられているような、そんな感じ。
……でも、嫌じゃなかった。
そんな風に求められるのが心のどこかで嬉しかった。
「リョウは僕のものだ……!」
そんな囁くような低い声が幾度となく彼の口をついて出てくるのを聞いて、なんとも言えない満足感を覚えてしまった。
つい色々思い出して身体が熱くなりかけて、掛け布の中でころん、と静かに寝返りを打つ。と。
「……!」
目の前、意外にすぐ近くにレンブラントの剥き出しの胸があってリョウの息が止まりそうになった。
ついさっきまでの行為をさらに生々しく思い出してしまって。
なので思わずそっと静かに後ろに下がる。
と。
「……逃がしませんよ」
小さな声がして背中に腕が回された。
リョウがびくりと肩を震わせる。
と同時に小さなため息が聞こえた。
片腕が背中に回されたまま、もう片方の手がリョウの頰に添えられてそっと上を向かされる。
「……怖い?」
心配そうにレンブラントが声を掛けてくる。
「ううん」
リョウは即答した。
別に、怖いと思ったわけじゃない。ただ単に眠ってると思った人が声を発したからびっくりしただけだ。それに、そもそも、今のレンブラントの声はいつも通り優しい柔らかい声だった。
「……ごめん。酷い抱き方をした……。身体……どこか辛いところとかありますか?」
暗がりの中でも月明かりがカーテンの隙間から入ってくるのでレンブラントの心配そうな瞳がよくわかる。
「大丈夫よ……。ほら、私、竜族だからね」
くすり、と小さく笑ってリョウが自分の腕をレンブラントの首に回す。
身体中に付けられた印も、きっともう消え始めている。
「……ねぇ、レン」
甘えるように囁いてしまうのはもう条件反射だ。
レンブラントの首に腕を回してその胸に自分の胸を押し付けると、レンブラントが片腕を腰に回して抱き込んでリョウの身体を自分の身体の上に乗せ、もう片方の腕を背中に回して優しく撫でてくれる。
それが物凄く気持ちいい。
「私がグウィンと話しているの、そんなに嫌?」
ちょっとだけ腕を緩めてレンブラントの顔を覗き込んで目を合わせる。
一度目を合わせたレンブラントが拗ねたように目を逸らしてリョウの頭を引き寄せながら首筋に顔を埋めてくる。そのまま優しく唇を這わせてくる感覚が気持ちよくてびくり、とリョウの身体が震えた。
「……嫌です」
まるで駄々をこねる子供のような口調にリョウがつい小さく笑いを漏らす。
「グウィンがここを出ていく前には毎晩彼のところに通ってたじゃない。二人だけで仲良くなってずるい……って思ってたのに」
リョウが小さく口を尖らせてみる。
「あれは……」
レンブラントがいかにも言い訳、といった口調で何かを口にしかけてそのまま口をつぐんだ。そして諦めたように思わせぶりなため息を吐く。
「分かってます。……僕のただのやきもちですよ、どうせ。……だから我慢します。でもそのかわり」
ゆっくりと二人の身体の位置が入れ替わってリョウはレンブラントに組み敷かれ、優しい瞳がリョウの目を覗き込んでくる。
「リョウは僕のものですからね。この瞳も」
レンブラントがそう言ってゆっくり瞼にキスを落とす。
レンブラントの首に回した腕を胸元まで引き戻したリョウの手の片方をレンブラントの片手が捕らえて、大事な壊れ物を扱うように優しく握り込みながら。
「……この指も、手も……僕だけのものだ。……この唇も……この胸も」
そう言いながらそれぞれの場所にゆっくり口づけをしていく。
「んっ……」
リョウが思わずのけ反って声を漏らすと、すかさずレンブラントの唇がリョウの喉元に口づけて。
「その声も、僕のものです」
そう言いながらそっと頭を撫でる。
「……分かってる」
リョウが小さく微笑みながら息をつく。
レンブラントはそれを見届けてからリョウの頰にキスを落とし、改めて瞳を覗き込んでくる。
「グウィンと話すのは自由ですけど……僕といる時は……夫婦でしか出来ないことをしますよ?」
そう言うレンブラントの瞳は優しく細められている。
「ん……良いよ。……って、え? 今から? また?」
リョウが何かを察してちょっと焦った声を出した。
「良いって言いましたね?」
レンブラントはいたって楽しそうだ。




