美少女勇者の俺が姫様を救出!
何故…こうなった…
俺の目の前にはさっきまで盗賊『だったもの』がアジトの裏口から吹き込む微風によって少しずつサラサラと飛んでゆくのが見えている。
ことの経緯を説明しよう。
まず動いたのは細身の盗賊、ナイフの突きを連続で繰り出してきた。
ヤバい!と思いナイフを全てかわす。
………!?
あれ…ナイフの動きが見える。
俺の目には、スローモーションのように繰り出されるナイフの突きがはっきり見えていた。
すげぇ!まさか…俺に隠された力が覚醒して…
マリア(それは、勇者に転生した時に得た特典能力「超感覚」です。)
あぁ…そういう訳じゃないのね…ってお前!マリアか!?何で俺の頭ん中に入ってきてんの!
マリア(これも転生の特典…「念話」です。)
へぇ~なるほど転生の時に能力をもらってたのか。
細身の盗賊「クソっ!このガキ俺の攻撃を全部避けやがった!」
レイナ「さぁて…次は、俺の番だぜ!」
俺は腰に差した鉄の剣を抜き、盗賊を切りつけた!
レイナ「どうだ!」
細身の盗賊「ぐわぁ!…って、えっ?なんともないんだけど…」
盗賊A「…」
盗賊B「…」
盗賊C「…」
盗賊D「…」
盗賊E「…」
スパルタク「…」
マリア「はぁ…」
スパルタク「お前…ふざけてんのか?」
やめろ!そんな真面目な顔で聞いてくるな!超恥ずかしいからっ!
っと、そうじゃなくって俺が剣を振ったら真空刃がでるはず…たとえ出なくても切りつけた筈の奴がピンピンしてるってどゆこと!?
マリア(貴方の攻撃は魔法以外、魔物にしか効きません。)
嘘だろぉぉぉお!?
スパルタク「やっちまえ!」
盗賊達「「「「うおおおおお!」」」」
レイナ「ちょっ!」
焦って右手を突きだしたとき、またもや信じられないことが起こった。
手のひらから、バスケットボール位の大きさの火球が出たのだ。
そして盗賊達は一瞬にして消し炭と化す。
これが事の経緯である。
レイナ「えっ?…えぇぇぇぇえ!?何だよこれぇ!」
マリア「今のも特典です。「大魔術辞典」と「詠唱破棄」の特典能力ですね。」
レイナ「…マジかよ、」
前回の最後でかっこよく意気込んだ俺なんだったの?
???「あの!そこに居るのは盗賊ではありませんよね!助けてください!」
マリアとやりとりしていると、奥の扉の向こうから声が聞こえた。
あのスパルタクとか言う盗賊の親分、すげぇ分かりやすい奴だったんだな…
レイナ「エリヴィア姫ですね、今お助けしますから少し扉から離れてください。」
俺は扉を勢いよく蹴り破る。
レイナ「姫、お怪我は御座いませんか?」
エリヴィア「はい、大丈夫です…って超カワイイ!」
レイナ「はっ?って!ちょっ///」
そう言うと姫は俺を持ち上げ、ムギュッと抱き締める。柔らかいものが俺の顔を包み込む。
うっひょ~!って待てぇい!!
レイナ「あの…姫様、大変言いにくいんですけど離してください。」
エリヴィア「あっ!ごめんなさい…その…あなたがあまりにも可愛くてつい…」
悪くない、この世界に来てはじめて悪くないと思えた。いや、悪くないなんてもんじゃない!むしろ最高DEATH!
マリア「アホ…」
レイナ「おいっ!今なんつった!」
マリア「いいから早く帰りましょう!ソビュエル王が心配しています。」
レイナ「それもそうだな、さぁ帰りましょう姫様!」
エリヴィア「はいっ!…え~と…」
レイナ「レイナです!レイナ・ガルシア」
エリヴィア「はいっ!レイナ様。」
レイナ様?ふふっ、悪くない悪くないぞぉw
こうして俺は、特典能力の存在や人間に攻撃できないこと、
姫様が最高なことを知ったのだった…………