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ピンチッ!

小さい頃、私は自分で言うのもアレだけど、なんでも出来る子だった。

物覚えが良かったのか、特に苦手な事とかも無かった。勉強は……まぁ、やる気の問題です。てへ。

でも、成長するにつれそれは「当たり前の事」であり、「普通の事」だったと分かった。

言わば、全てにおいて平均値。

悪くいえば、全てが中途半端なのである。

最初、すぐ覚えてそれを扱う。

しかし、それだけなのだ。

それ以上に行けないのだ。

分かっていても、考えていても、


そこから上に行けないのだ。


なにかに長けている、

という所がないのだ。


だから私は、物語の主人公に憧れた。


無能と言われながらも、それを長所とする者。

底辺と言われながらも、それを進化させる者。

最弱と言われながらも、それを最強にする者。


なにかしらあるのだ。

それが無かった。

苦手な事は少ないと思ってる。

けど、得意な事もあまり思い浮かばない。


私には、それが無かった。





「……っ!!」


取り憑かれた。

「は、離れて……!」

推進力の勢いは殺さず、足をぶんぶんふって振り払おうとしたけど、なかなか離れない。

うじゃうじゃととしたナニかは、やがて形をハッキリさせ……

って、え、触手っぽい……


「……え」


そうこうしてるうちに足にまとわりついてきた。

スルスルっと絡みつき、完全に推進力を止められてしまった。

そして、

「え、ちょ、そんな同人誌みたいな事……ひゃっ」

動きやすくするためハーフパンツとTシャツという軽めの服装だったのだが、そのハーフパンツの布と肌の間をナニかが通り、そのまままとわりつく。

その間に腕も取られてしまい、完全に動けない。

「くっ……んっ」

あいていたナニかは私の体をまるで、撫でるかのようにまとわりつく。

そして、

「ダメっ!そこはっ……んぁっ」

いやらしい。何このえっちなやつ。

胸、お腹、足を、いやらしく絡めて

「ひっ……ひゃっ……あぁっ」

お腹から胸にかけ

「あっ……くぁ……っ」

ダメだ。抵抗しても解ける気がしない。

体をうねうねとしていたらナニかが下半身をまさぐりだし……

「……っ!ダメッ!やだっ!いやぁぁぁぁあっ!!」


ドカンッ!


「げふっ」

女の子らしからぬ声が出た。

なにかがぶつかって来た。

それによってナニかを引き離し、ぶつかった反動で思いっきり移動しナニかから逃げられた。

何でか分からないがナニかは追ってこなかった。


「痛たた……助かったぁ。私の純潔は守られた……!」

さっきのはほんとにやばかった。ほんとにあるのか、同人誌みたいな事……

「それにしてもさっきぶつかって来たのは……?」

と思いそのほうを見ると、

「りん……ね?」


よく知った顔がそこにはあった。

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