ピンチッ!
小さい頃、私は自分で言うのもアレだけど、なんでも出来る子だった。
物覚えが良かったのか、特に苦手な事とかも無かった。勉強は……まぁ、やる気の問題です。てへ。
でも、成長するにつれそれは「当たり前の事」であり、「普通の事」だったと分かった。
言わば、全てにおいて平均値。
悪くいえば、全てが中途半端なのである。
最初、すぐ覚えてそれを扱う。
しかし、それだけなのだ。
それ以上に行けないのだ。
分かっていても、考えていても、
そこから上に行けないのだ。
なにかに長けている、
という所がないのだ。
だから私は、物語の主人公に憧れた。
無能と言われながらも、それを長所とする者。
底辺と言われながらも、それを進化させる者。
最弱と言われながらも、それを最強にする者。
なにかしらあるのだ。
それが無かった。
苦手な事は少ないと思ってる。
けど、得意な事もあまり思い浮かばない。
私には、それが無かった。
❀
「……っ!!」
取り憑かれた。
「は、離れて……!」
推進力の勢いは殺さず、足をぶんぶんふって振り払おうとしたけど、なかなか離れない。
うじゃうじゃととしたナニかは、やがて形をハッキリさせ……
って、え、触手っぽい……
「……え」
そうこうしてるうちに足にまとわりついてきた。
スルスルっと絡みつき、完全に推進力を止められてしまった。
そして、
「え、ちょ、そんな同人誌みたいな事……ひゃっ」
動きやすくするためハーフパンツとTシャツという軽めの服装だったのだが、そのハーフパンツの布と肌の間をナニかが通り、そのまままとわりつく。
その間に腕も取られてしまい、完全に動けない。
「くっ……んっ」
あいていたナニかは私の体をまるで、撫でるかのようにまとわりつく。
そして、
「ダメっ!そこはっ……んぁっ」
いやらしい。何このえっちなやつ。
胸、お腹、足を、いやらしく絡めて
「ひっ……ひゃっ……あぁっ」
お腹から胸にかけ
「あっ……くぁ……っ」
ダメだ。抵抗しても解ける気がしない。
体をうねうねとしていたらナニかが下半身をまさぐりだし……
「……っ!ダメッ!やだっ!いやぁぁぁぁあっ!!」
ドカンッ!
「げふっ」
女の子らしからぬ声が出た。
なにかがぶつかって来た。
それによってナニかを引き離し、ぶつかった反動で思いっきり移動しナニかから逃げられた。
何でか分からないがナニかは追ってこなかった。
「痛たた……助かったぁ。私の純潔は守られた……!」
さっきのはほんとにやばかった。ほんとにあるのか、同人誌みたいな事……
「それにしてもさっきぶつかって来たのは……?」
と思いそのほうを見ると、
「りん……ね?」
よく知った顔がそこにはあった。