出会い③
緊迫した状況下で、突然、別の場所からの銃声。誰もが不意を突かれたことだろう。ぼくも、牧師たちも、デリンジャーだって。
教会中が銃声の主に振り返る。
そこには、白い硝煙と青いオーラを纏ったひとりの少女の姿があった。
天井の大穴から差し込む光を浴びながら、ゆっくりとこちらに歩いてくる。腰まで伸びる金髪がきらきらと輝いた。
「グロリア……」
誰かが言った。彼女の名前だ。
間違いない。今朝、荒野でぼくを救ってくれたあの銃使い。彼女だった。
齢はデリンジャーより少し上だろうか。二十前後だろう。凛々しい顔つきの瞳は青く、軍人が着る薄緑のシャツと細身のズボン。腰には大きなホルスターを下げていた。
デリンジャーは、ぼくを突き飛ばして銃を振り上げた。
「この薄汚ねえ人殺しめっ」
しかし、銃使いの方が早かった。
銃声が轟いた。
デリンジャーの表情が固まり、動きが止まった。
彼女のハットが宙に飛び、後ろに落ちた。銃使いの放った弾丸が当ったのだ。
「デリンジャー、神の前だ。穏便に済ませたい。しかし、貴様がまだその気なら容赦はしない」
銀色の銃身がきらりと煌いた。その銃を見て、すぐにわかった。彼女もまた連邦保安官なのだ。
「すぐに出て行ってくれると助かる」
さすがにこの状況で強情を張れるほど無謀ではないらしい。デリンジャーは憎々しげに睨んだまま、銃を下げた。
「うん」
デリンジャーに戦意がないことを確認すると、銃使いも銃を懐に仕舞った。
「クソッたれ……」
デリンジャーは踵を返し、大股で出口に向かって歩き出した。
しかし、ぴたりと、出口間際で立ち止まる。ゆっくりとぼくたちに振り返った。
「クソガキ!」
そう叫んだ。ぼくのことだろう。
「なんだよ……」
「てめェの親父のこと、知りたけりゃ……」
「なんだよ」
「…………っ」
ぼくの問いに、彼女は黙ったまま、中指を立てた。なんてやつだ!
同じようにやり返してやる。
「オスカー」
今度は銃使いがぼくを呼んだ。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう……えっと」
「グロリア=レッスン。わたしの名だ」
本当ならぼくも名前を名乗るべきだろうけど、その必要はない。彼女はぼくのことをよく知っている。
「ありがとう、レッスンさん?」
「グロリアでいいよ。オスカー、よろしくな」
グロリアが手を伸ばしたので、ぼくは彼女の手を強く握った。