カムバック……
三日後、ぼくは荷馬車に乗るために駅まで来ていた。
「げっ」
ぼくを見ると、御者が声を上げた。
「お客さん……乗るんですか?」
「はは、よろしく」
「勘弁してくださいよ。ホント」
御者は明らかに不機嫌そうに言った。
無理もない。
あの後、魔物をすべて倒した後、悪党を牢に入れて、お祝いのパーティーがあって、
ようやく寝る前に彼のことを思い出したけど、暗くて危ないから、とりあえず、その日は寝て、
迎えに行ったのは次の日の朝になってしまっていた。
その間、ずっとあの荒野に置き去りだ。
「オスカー」
ぼくが馬車に乗ると、グロリアが呼んだ。
今日、送り出してくれるのは彼女だけだ。アンネとイルシスは学校があるから仕方がない。
そして、デリンジャーには……何も伝えてないし……。
「向こうに着いたら、手紙書くよ」
窓から顔を出して答えると、グロリアが頷いた。
「ああ、楽しみにしている」
ぼくの冒険は終わった。帰るのが少しだけ伸びちゃったけど、前回の時よりずっと気分がいい。
「オスカー!」
グロリアがまた声を上げた。
「どうしたの?」
窓から顔を出す。
グロリアは、珍しく緊張しているように見えた。
「最初から、言えばよかった。この町に残る気はないか?」
「えっ」
「きみが居てくれると、町も非常に助かるし、わたしも嬉しい」
太陽のせいかもしれない。だけど、ぼくにはグロリアの顔が紅潮している気がした。
「でも、ぼくは帰らないと……」
「そ、そうか……」
「うん。ゴメン……」
「ざ、残念だ。では、行ってくれ。手紙を待っている」
グロリアが表情を固めたまま手を振ったので、窓を閉める。
それが合図となった。御者が鞭を入れ、馬車が動き始める。
この町に残るなんてできるわけない。東部には叔父さんたちが待ってるし、家だってある。学校だって――、
「…………っ」
ぼくは窓を開けて身を乗り出した。すごく小さくなってしまったが、グロリアの姿がまだ見える。
「必ず! 必ず戻ってくるから!」
彼女に向かって叫んだ。
しばらく待っても、返事は返ってこなかった。
ぼくの声は届いたのだろうか。
「大丈夫だ。きっと大丈夫……」
小さくなっていく町を眺めながら、そう呟いた。




