町の仲間たち
町に戻ってきたぼくが真っ先に向かったのは孤児院だった。
御者の話を聞いて飛び出してきたものの、ぼくの心配は杞憂に終わっている可能性もある。死ぬほど恥ずかしいが、その時はみんなに謝ろう。
孤児院の玄関先の通りには服や鞄、それに寝台や本棚などが散乱しており、そして、玄関は大きく開いたままだった。
明らかに普通じゃない。まるで誰かに襲撃されたかのような有様だ。
ごくりと、唾を飲み込む。
あれ? 服はすべて男物で、鞄も見たことがあるやつだ……これ、全部ぼくの部屋のものじゃないか。
孤児院を見上げると、真上に開け広げた窓があった。
誰かが、ぼくの部屋の荷物をすべて窓から放り投げてしまったのだ。
「…………」
こんなことをするのはこの家には一人しかいない。
落ちている服を拾いながら中に入る。あーあー、砂だらけになってしまった。砂を叩いて落としながら、廊下を進む。ふと、食堂で人の気配がした。
「アンネ!」
食堂に飛び込む。
そこにいた二人が、二人してとても驚いた顔をした。
「な、なんで、あんた」
泣きっ面のアンネがあんぐりと口を開いた。すごい顔だ。
「ぼくの、荷物全部捨てたろ!」
ぼくの言葉不意を突かれたのか。
「ひどいことするよ。ちょっと留守にしただけじゃないか。それが、帰ってきたら荷物が全部砂だらけになってるんだ。ここは元々教会のはずだろ。神様が見てるよ。いつも言ってるじゃないか。アーメン、アーメンだって、きみたちは本当に、矛盾してる。馬鹿だよ。もう黙っていられない。狩りは合理化、教育は正しいことをしっかり、神さまを敬う。これからは覚悟しなよ!」
アンネとイルシスが目を見合わせた。二人して一瞬固まったが、
「あっはは。な! やっぱりオスカーは帰ってきただロ!」
イルシスがぼくに向かって抱きついてきた。勢いに負けて背中から倒れてしまう。ゴツンッと後頭部を打ち、目の前に星が飛んだ。
「イルシス!」
痛いよ!
「あはは、ゴメン」
ぼくが押しのけると、まったく悪びれないイルシスが笑いながら立ち上がった。
「グロリアが言ってたわよ。あんたは東部に帰ったんだって。もう関係ないって」
アンネがとげのある口調で言った。
「関係ないわけないだろ」
ぼくにとってこの家も、あの森も、学校だって、ぜんぶ大切な思い出だ。
ぼくの言葉にアンネの顔にも笑みが浮かんだ。
「そうよ! ここはわたし達の町なんだからね」
いつもは悪態ばかりつく癖に。やっぱりきみはこの町が大好きなんじゃないか。
「文句あるの?」
どうしてか、ぼくはすごく嬉しくなった。
「ないよ、全然。ぼくたちの町だ」
こうしてぼくはこの孤児院に戻ってきた。しかし、グロリアの姿はない。わかっている。泣いていたアンネ、腰にトマホークを引っ提げているイルシス。事態は予想通り、最悪の状況なのだ。




