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イケメンの従兄(夫)と異世界で暮らしています  作者: 水色うさぎ
5.ミーの大冒険(注:アホネタです)
16/19

5-1.

情報処理試験の勉強の合間に書いたアホネタです。

無事かどうかはさておき、試験が昨日で終わったので記念投稿。


「……精霊祭、ですか」

 仕事中に団長に呼び止められるという心臓によろしくない状況で告げられた内容に首をかしげた。

「そうだ。聞いているかい?」

 立ち話もなんだからと、団長の執務室に招かれての会話だ。

「いいえ。あ、でも以前に呼んだ小説に書かれていたような気もします。ええと……」

 確かあれは、街娘と騎士の恋愛小説だった。

 二人のデートシーンとして書かれていて、ああお祭りだものねー、と納得していた記憶がよみがえってきた。

「確か五年に一度、精霊の加護に感謝を捧げる王都で行われるお祭り、だったでしょうか」

 なんで毎年じゃないのだろう。オリンピックみたいに何年に一度とすることでよりお祭り感を出すとか?

「その精霊祭だ。今年は開催年で、来月に行われるのだが、一番注目されることはなんだと思う?」

 思い出せ。確か前夜祭から数えると合計十日ぐらいあるお祭りだった……はず。

「……確かいろいろと出店や舞台が出て、賑やかなお祭りだったような記述がありましたが」

 そうそう。それに伴い観光客も増えて軽犯罪も増える云々という記述があって、騎士はのんきにデートしてられるのかそれは騎士団から戦力外扱いされていないかと悩んだのだった。

「出し物には我が団もいくつか主催や協力をしているよ。魔法を使った幻覚は、精霊祭に限らず催し事では人気があるのだよ」

「ああ、皆さん忙しそうですよね」

 仕事の話か。

 魔法騎士団での出し物がある。それに人口増加に伴う防犯なんかで人のやりくりも考えなくてはいけないだろう。私は、そういう面では役立たずだ。だから特に祭に関連した作業は振られておらず、皆の忙しさを今のところ共有していない。でも裏方としてなら出来ることもあるはず。

「私で出来る事があれば、期間中の仕事を増やすのはかまいませんよ。その……初めてなので出来れば一日ぐらいは夫と祭を眺めたいのですが。それ以外でしたら」

 忙しい時に一人だけ通常勤務させてください、なんて言うつもりはない。一日ぐらいは祭の見学したいけどね! さすがに十連続勤務はキツイ。あ、小説の騎士はこんな感じでもぎとった休みでデートをしたのか。ようやく理解できた。

 普段ほとんど話さない団長がわざわざ話しかけてくるから何事かと思ったら、仕事日数の交渉だったとは。身構えてしまったけど、これなら納得だ。

「ありがたい申し出だけれど」

 あれ、違うのかしら? 団長の反応が微妙だ。

「精霊祭で一番注目度が高いのは、精霊が選ぶのは誰か、になる」

「……選ぶんですか。精霊が」

「そうだ。その時一番精霊が興味を持っている人物を一人か二人、選ぶと言われている」

 団長は一度言葉を切ってから、困ったように笑った。

「我々は、ミィア君が選ばれる可能性が非常に高いと思っている」

「困ります」

 どうやって選ぶのかとか、なぜ私が、とか。そういうのを抜きにして、本音が出た。そういう特別な何かに選ばれるのは、大変困ります。

「こっちが困るかどうかは、精霊には関係ないのだよ」

 それはそうでしょうけれど!

「そもそも招き人は、世界あるいは精霊が招いた存在だ。過去、精霊祭の時期に招き人がいた場合、半数以上が選ばれたそうだよ。ミィア君はその力を手放したとはいえ、招き人であったことに間違いはない。逆に手放したことで、精霊がより興味を持った可能性もある」

 ああ……そういえば招き人は、そうだった。精霊が招いた人だから、招き人。始めの頃に説明を受けたのを思い出す。

「招き人でも選ばれなかった人はいるんですよね?」

「もちろん。だから、可能性が高い、どまりではある。可能性としては、ミィア君ではなく男爵だってありうる」

 確実ではなくて、可能性が高い。なるほど。って納得してどうする私……。

 明人が選ばれる方が納得がいくなぁ。

「……ちなみに選ばれたらどうなるんですか」

 何か祭に引っ張り出されるとか? だから期間中の増員の話が微妙だったのあろうか。仕事したくても出来ないよね。むしろ見込んでいた人材が来れなくなる方が悪影響が出る。

「特に果たすべき役割や仕事はない」

 それを聞いて一安心だ。

「何故なら、選ばれた者は精霊にイタズラされるからね」

 安心が吹っ飛んだ。

 イタズラって、何!? 何されるの!?

「何になるかは、そして期間は人それぞれだが、数日間、動物になる」

「ええ!?」

 どこの童話に出てくる魔法使いだ。

「ちなみに、私は三日間、狼になった」

「……え?」

 まさかの経験者は語る、だった。






「なんつー傍迷惑な」

 やはり精霊祭のことを知らなかった明人に説明した感想がそれだった。

「そうよねぇ。私もそう思った。ただのお祭りなら、せっかくだからアキと楽しみたいなぁで終わるんだけど」

 同意のかわりか、明人は私の髪をくしゃっとした。

 今は風呂上がりだ。ドライヤーがないので、吸水率のあまりよくないタオルもどきで水気をとっていくしかない。髪を濡れたまま放置するとすぐ傷むしね。そんな話をした後からは、私の髪を乾かすのは明人の作業になった。

 当然、強要なんてしていない。それどころかお願いすらしていない。

 ただ明人がかまってくるのを「先に髪の毛乾かしたいから」とかわした結果だ。

 構ってくれないなら、その作業そのものを自分がやる、となったらしい。


 そもそも、明人は、私のために手間暇をかけるのが大好きな変人だ。私が自分で自分のことをするのすら嫌がるのだからよっぽどだと思う。

 一番「あ、この人やっぱりおかしいんだ」と実感したのは、爪の手入れ。

 爪切りがなくて、爪やすりのようなもので形を整えるのがここのやり方だ。でも私は、この世界にきたときに持っていた荷物のなかに入っていたから小さいけれど爪切りを持っている。それなのに使わせてもらえない。

 明人が、手だけでなく足までも、一本一本手入れしてくれるのはなんというか……なんともいえない。

 手はまだいい。

 足の場合、どういう態勢になるか……。

 私はソファに座って、明人は床に跪くようにして、膝の上に私の足を置いて手入れしていくのだ。

 なんだこれ、どういうプレイだ。私は女王様かと嫌がったら、興にのった明人に「女王様と下僕ごっこ」を仕掛けられて、美味しくいただかれてしまったのは記憶から抹殺したい。

 結局のところ、私が本気で嫌がってない以上、明人はやりたいようにやるのだ。

 あれ以来、どうぞご自由にモードに入っている。踵の角質ケアだって頼めば嬉々としてやってくれるんじゃないかと思うと怖い。冗談でも絶対に言い出さないようにしよう。女として守らなければいけないラインは死守しなければ。

 ……まぁようするに傍からみたらただのバカップルだ。うん。自覚はあります。


「それで? 侯爵のくれた注意事項は、朝起きたら動物になるけれど驚くな、必ず戻るから心配はいらない。それだけか?」

「んー……あとは、脳が小さくなるからか、多少考えが……というか頭が軽くなる、だったかな。素の自分とか本音に正直になる、というのもあったっけ」

 狼さんになった当時少年の団長は、真っ先に逃げ出したらしい。立派な跡取りにならなくてはと抑圧された結果だろうと他人事のように語っていた。

「ふぅん」

「ああ、それから、本人が嫌がらなければ親しい人にはお披露目するんですって。やられることは迷惑だけれど、精霊が見守る人であることにかわりはないからめでたいんだとか」

「そのへんの動物と、イタズラされて動物になったやつの違いって分かるのか?」

「白なんですって。団長は白狼だったし、他の人……人? も、白い犬とか猫とか鳥とか」

「なんか、なりすましとか出来そうだな。期間中隠れておいて、こっそり飼っていた白い動物を見せて、とか」

「ああ、それねぇ。昔はやった人いるらしいのよ。でも精霊が怒ったとしか思えないようなひどいめにあうから、今ではする人はいないんですって」

「天罰みたいなものか」

 つくづく、ファンタジーな世界だ。

「あとはバレた時も大変らしいし」

 軽蔑されるとか。精霊からも怒られるし、人目も相当厳しくなる。そこまでしてなるものでもないらしい。

「私やアキの可能性が高いらしいけれど……選ばれないといいわね」

「そうだな」





◇◆◇◆



「まあ、世の中、えてしてこんなもんだよな」

「にゃー?」

 えてしてこんなものって、何? と聞き返そうとして、言葉を発せないのに気づいた。かわりに出たのは……猫の鳴き声?

 あれ?

 あれれ?

 もしかして、私、猫になってる?

 慌てて手をみたら……おお、肉球が。

 ほんとだー、白いー。

「にゃー」

 鏡みたい、鏡。

 そうおねだりしたら、通じたらしい。明人は私の首ねっこをつかまえて鏡の前まで移動した。ぷらーん、と揺れるのがなんだか楽しい。

 そういえば、団長は、頭が軽くなるって言ってたっけ。うん、確かにいろいろ考えられなくなってる。

 なんだろうこの状態、という疑問は、わいた傍から「まぁどうでもいいか」と消えていく。

「ほら。立派な白猫だ」

 ほんとだー。昔工藤家で飼っていたミケ(という名前の黒猫)と逆だねー。

 でもミケに負けず劣らず、猫の私も可愛くない? というか世の中の猫は全部可愛いよね。うん。私が可愛いんじゃなくて、猫という生き物が可愛いのだ。可愛いは正義。

 いつまでもぶらさがっているのはイヤだから、明人の腕にしがみつく。

「ちょ……っ」

 そのまま腕をかけのぼって、肩に落ち着いた。

 手乗りならぬ肩乗り猫です。うーん、でもバランス悪いなぁ。

「……にゃあ」

 どうしよう? と聞いたら、普通にだっこしてくれた。うん、ここがいい。明人の腕のなかはとても落ち着いて好き。

「あー、飯どうすっかな。猫用ミルクとかないけど、いいのかな……」

 明人作の冷蔵庫(?)をあけて、何かぶつぶつ言っている。

「そもそもカリカリも猫缶も売ってないだろうし。どこにいけば猫の餌って手に入るんだ?」

 あ、そうか。ご飯の支度しなきゃ。明人もおなかすいてるよね。朝ご飯ー。

 ええと今日は何を作るつもりでいたんだっけ? 忘れちゃった。

 でも冷蔵庫の中をみたら思い出せるはず!

「あ、こら! おい!」

 ぴょんと明人の腕のなかから飛び降りて冷蔵庫の縁?に降り立つ。この中身なら……美味しそうなのはミルクかな。

「これがいいんだな?」

 てしてしと牛乳瓶に猫ぱんちを繰り出していたら、確認をとられた。そうなの。それがいいの。明人のご飯よ。だって一番美味しそうだからね。

 今の私は自分で配膳できないから、つぐのは自分でやってね……って、ちょっと、それは一番のご馳走だから明人のだってばー! なんで深めのお皿にいれて、「ほら」ってこっちに寄越すの!?

「にゃ!」

「……いや、それを俺にくれてもな……」




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