高原あずきのステータス
「うぐぅっ、足が痛い………筋肉痛になった…」
「たかだか数十分歩いた程度で……つか筋肉痛になるの早いな。普通夕方辺りだろ」
足が重く感じリアカーに乗ろうとしたら「重い歩け」と うさ男に言われ、わたしは家まで歩いてみた。案の定 足が筋肉痛になっていた凄い痛い。生まれたての小鹿の様に足がプルプルなる。足を動かそうとすると激痛が走る。ソファを発見すると一目散に駆け寄り仰向けになる。あぁ、少しはマシになった。目の前に立っているうさ男が何か言いたそうな目でわたしを見ている。
「ど、どうやらわたしはここまでみたいだ………もうお前に教えることは何もない、後は頼んだぞ、うさ男」
「うさ男じゃねーし、教えてもらった事もねーし そもそも何も始まってねーよ。ほら生きろ 片付ける遺体が増えたら面倒だ。あと仰向けになるな札が取れる」
「優しさ」の「や」の字もない言葉にわたしのはライフはゼロックス。
うさ男に言われたのと心寂しくなったわたしは俯せになりうっうと泣く振りをした。たまにチラッとうさ男の方を見るが うさ男は買った荷物をせっせと運んでいたのでわたしは更に態とらしく泣いて見せた。「うるせぇ!」と怒鳴られ頭に石を投げられた。痛い。
「えーん、虐待だよぉ~ 歳上で男の癖に10歳のか弱い筋肉痛美少女に暴力を振るうよぉ~」
「美少女も相当痛いが 筋肉痛って言葉が入ると別の意味の痛々しさが伝わるな。あとお前 その石を握りしめろ」
「それはちょっと思った」
筋肉痛って付けるだけで美少女発言の痛々しさが上書きされた気がする。まぁ、そんなことどうでもいいが。
あずきは石が当たった頭を撫でながら転がり落ちた石を拾い上げた。
するとどうだろうか。石はちかちかと光だし空中に表みたいなものを映し出した。わぁ、なにこれと状況を飲み込めず 表をじっと見ていると大方片付けが終わったのか「ステータスだ」と言いながら近寄ってきた。
「ブルータス?」
「ステータス。この石は触れた者の身体能力を数字で示す能力石という石だ。で、今目の前にある表がお前の身体能力値だ」
ステータスというとRPGとかのゲームでありそうなステータス画面のこと?そう思いながら一番上を見ていると高原あずきとわたしの名前が出ていた。
うわぁ、馬車といいステータスといい、まるでゲームみたい。そう思いながらわたしは自分のステータスを一つ一つ見てみた。
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高原 あずき 10 歳
Lv 1
属性:全
HP 3 / 10
MP 480000009 / 9 (+480000000)
TP 0
攻撃 1
防御 1
魔法 7(+56000000)
魔防 3
俊敏 1
運 5
【称号】
ひよっこ魔王Lv 1
【スキル】
〈言語理解〉
〈もやしボディ〉
〈異常混乱〉
〈魔王補正〉
〈魔法無効化〉
〈魔法還元&吸収〉
〈無詠唱〉
〈召喚・契約〉
〈バーストモード〉
【技】
『コンセントレート』
『ファイア』
『スプラッシュ』
『ウィンド』
『ストーンエッジ』
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「基本的な能力低っ! つかHPもう三しかない!!」
「その辺にいる人間の餓鬼だって二桁代の攻撃力あんぞ……餓鬼に攻撃されたらお前即死だな」
マジかよその辺にいる餓鬼こわひ!
インパクトありまくりな能力値に自然と視線がいってしまうのは仕方がない事だと思う。いやいや、確かにわたしの体は檜の棒並みの耐久力しかないよ?
でも、それにしても酷い。差が激しすぎる。MPと魔法がすんごい事になっているけど他がほぼ一桁ってなんだ!
自分の身体能力の低さに運動しようと考えながら他の所も見てみると おかしな文字が見え視界の動きが止まった。
「魔王って魔界の~とか、魔物の王様って意味合いじゃないの? わたし人間なのに魔王の称号がついてんだけどぉ!?」
「性格の悪さが魔王級って事じゃねーの?」
「このピュアっピュアの瞳に何処が魔王要素があるっていうのだよ!」
くりりんとパピヨン百頭分の可愛さを秘めたわたしの瞳をうさ男に向けるが うさ男は視線を逸らす。あ、てめコッチ見ろよ。無理矢理顔を合わせようとすると顔を捕まれ爪を立てられた。ちょ、わたしのHP3なんすけど、これ以上は死ぬんすけどあいだだだだだだだだだっ!
爪を立てている間もうさ男は黙々とわたしのステータス画面を確認している。はっきり言ってどっちかにしろよ。いや、爪を立てらすのやめてステータスに集中しろよ……あ、HPが2になった。
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【スキル】
〈言語理解〉
異世界の言葉が理解できるようになる。
〈もやしボディ〉
レベルが上がってもステータスが上りにくい。また、一定の運動をすると状態異常に掛かりやすくなる。
〈異常混乱〉
混乱時 ステータスのどれか一つを能力+100
〈魔王補正〉
ステータスをランダムに上昇(MP+480000000、魔法+96000000)。
〈魔法無効化〉〈魔法還元&吸収〉〈無詠唱〉〈召喚・契約〉〈バーストモード〉のスキルを追加させる。
〈魔法無効化〉
自分の身に振り掛かる 攻撃、状態異常、能力低下の魔法消費MPが自分の現在の所持MP以下の場合 全て無効化される。
〈魔法還元&吸収〉
視界に入っている魔法を解除、放たれた魔法の消費MPを吸収できる。
〈無詠唱〉
詠唱せずに魔法を放つ事ができる。
〈召喚・契約〉
召喚士として魔物や妖精・精霊を召喚し契約できる。
〈バーストモード〉
SP関係無く、魔法を放つ事ができる。反動が大きく一週間は動けなくなる。
【技】
『コンセントレート』消費MP20
補助 : 魔法攻撃の威力を一度だけ二倍にする。
『ファイア』消費MP5
攻撃:炎系初級魔法。炎を放つ。
『スプラッシュ』消費MP5
攻撃:水系初級魔法。水を放つ。
『ウィンド』消費MP5
攻撃:風系初級魔法。風を放つ。
『ストーンエッジ』消費MP5
攻撃:地系初級魔法。岩を放つ。
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「ステータスはゴミだが スキルと技はいいもん揃ってんな。〈もやしボディ〉以外」
「ゴミっつった! 本人の前で堂々とゴミっつった! わたしもそう思うけど言葉にされるとムカつく!!」
うさ男が勝手にわたしのステータスをじろじろ見る。いやんエッチ!見ないでよ馬鹿ぁ! ………流石にキモすぎた。反省する。自嘲する。
つか〈もやしボディ〉ってなんだよ。ケンカ売ってんの?あ”ぁ?わたしの幻の右ストレート(攻撃力 1 )が唸るぞ。
「属性が全…………? 魔王なら普通光属性の技は覚えられない筈なんだがなんで覚えてんだ?」
「え、属性って 火とか水とかの属性?」
「それは知ってんだな。異世界からきた癖に」
「の○太の癖にみたいに言わないでよ」
もし の○太にもステータスがあったらわたしの方が勝ってる自信がある。能力的にも運動神経的にも。流石に銃と主人公補正の運は負けるけど。
どや顔でそう言えば「の○太って奴は知らないが……底辺の奴と張り合って勝って嬉しいか?」と憐れみを吐かれた。いや、人間は自分より下がいると安心する生き物だから……そう苦し紛れに言ったらなんか目から汗が出てきた。唯一張り合えるのが漫画・アニメのキャラってわたしは一体。
「この世界には地水火風氷雷光闇の八種属性存在する。無なんてのもあるが、それは魔法が使えない、魔石の加工がない武器を持った ただの人間とスライムを代表する魔物だけだ。人間は一つの属性の魔法しか使えないが、全って事はお前は一通り使えるんだな……珍し」
「いやぁそれほどでもぉ!!」
「単純だなお前。」
誉められて育つタイプだから。そう伝えればうさ男はなんと醜い物を見たと言わんばかりに顔を歪ませた。
「そもそも お前 魔法が本当に使えるのかさえもあやふやだぞ」
「え、覚えてるし 〈無詠唱〉とかいうスキルからして普通に技の名前叫ぶだけで出るんじゃないの?」
「いや、お前の場合まともに魔法を出すことが出来るのか心配してんだよ。変な方向に技が行ったり爆発したりしないだろうな」
「そんなありきたりなことしないよ(多分)。ただし、魔法は尻から出るけどね」
「……………それは真か?」
うさ男は後ろに後退していった。ただのジョークだ確認するな背後に下がるな!
ぷんすかと怒っていたらうさ男は何処かに向かおうとしていた。
ちょ、何無視してんの 嘘だからな!尻から出たりしないからな!多分。
「取り敢えず お前の魔力の高さはよく分かった。そして、お前に必要なものもな。これから取りに行き始末するからお前も着いてこい」
「必要なもの?」
「あぁ、地下にあるあいつから拝借する」
「…………それ、剥ぎ取るって言わない?」
始末、地下、あいつから拝借。
これ等のキーワードでうさ男が何を拝借しようとしているのかは分からない。けれど、誰から拝借しようとしているのかは容易に察することが出来た。地下にはあれしかないのだから。
地下に行くなら、またあの噎せ返りそうな臭いを嗅がなくてはならない。あの時は臭いが気にならないくらいパニックを起こしていたから嘔吐とかしなかったが、頭が多少冷静になった今 行くのはちょっと辛いかもしれない。
わたしは げっそりしながら うさ男の後をとぼとぼと着いていった…………と、言うか回復してくれないの?わたしHP1なんだけど。
~ステータス用語~
【ステータス】
その人の能力を数値化したもの。
【属性】
その人の属性。召喚士以外の人は大抵無属性。魔物、妖精・精霊等には無以外の属性がついている。
【レベル】
肉体的なレベル。レベルが上がればステータスが上がる。
【HP】
個人の体力数値。0になると死亡する。
【MP】
魔法を放つときに必要な数値。
技術である魔法を使うと消費する。
【TP】
技を放つときに必要な数値。
技術である技を使うと消費する。
【攻撃】
武器を使い、相手にダメージを与える際の攻撃力の高さ。
【防御】
武器での攻撃ダメージを防ぐ際の防御力の高さ。
【魔法】
魔法で相手にダメージを与える際の魔法力の高さ。
【魔防】
魔法での攻撃ダメージを防ぐ際の魔防力の高さ。
【俊敏】
素早さ。速いほど先制攻撃ができる。また、速ければ攻撃を避けやすくなる。
【運】
運の良さ。攻撃が相手の急所に当たりやすくなり、相手の攻撃を避けることもある。また、運が高ければレアアイテムやらも入手しやすくなる。
【称号】
肉体的なレベルではなく 称号に対してそれに相応しい行動をすると習得でき、称号のレベルが上がる。称号によりスキルや技を習得でき、レベルが上がった際 ステータスが称号に応じて上昇される。
【スキル】
称号により得られた恩恵。ステータス上昇等の戦闘に有利になる効果を齎す。スキル所持者の行いによりスキルが進化する。
【技】
技術と魔法の二種類があり、称号のレベルが上昇すれば覚えられる。
【技術】
武器を使用しての攻撃。基本無属性。魔石が埋め込まれた武器だと埋め込まれた魔石の属性により属性がつく。TP消費により使用可能。
【魔法】
地水火風氷雷光闇の八種類の属性があり 攻撃、防御、回復、一時的なステータス上昇 等の効果を持ち合わせている。MP消費により使用可能。