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女神様に物申し隊!(仮タイトル)  作者: カゼハカゼ
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女神様と選ばれし勇者達



「大変無礼なことだと自覚しております………ですがどうか、どうか皆様のお力を御借りしたいのです!!」



オレたちをここに呼び寄せたアルカティアの主―――女神 の明日から世界が消えるような悲痛な懇願に オレたちはNOと唱えるはずがなかった。




 怠そうな口調をした アルカティアという変な格好をした女の妙な術で意識をなくした赤木あかぎ祐吾ゆうごが目覚めるとそこには天国かと思い込む程美しい庭園が広がっていた。

 争いなど何一つなさそうなユートピアと呼ぶに等しい、穏やかな庭園を陶然と眺めていたら周りに自分と同じ学校の制服である男一人、女三人の計四人が倒れているのを発見した。

 どうやら、あの教室にいた皆がここにとばされた…そう考え見ていたが、あの教室にいた人数ならば一人足りないことに気付いた。誰がいないのかは 赤子の様に丸まって顔を把握できないが。


取り敢えず祐吾は自分が這い寄れる位置にいた黒いセーラー服の少女を揺すり起こし、他の人も起こした。




 この場にいたのは全員祐吾のクラスメイトだった。


 祐吾の一番近くに倒れていたのは神園かみぞの飛鳥あすか。大和撫子と呼ぶに相応しい美しい艶のある黒髪で、男子からの人気が高い。眉目秀麗という言葉が似合う少女。


 飛鳥の次に起きたのは 鬼無きなし正良まさよし。祐吾の幼稚園の頃からの友人であるぼさぼさな茶髪の少年。クラスでは弄られキャラで名高い 何だかんだ憎めないのが取り柄だ。


 三番目に意識を取り戻したのは 本田ほんだ久美子くみこ。二つのおさげ髪の赤ぶち眼鏡の少女。髪型おさげのせいか 根暗な印象があるがそこまで根暗でもない いたって普通の少女だ。


 最後に目を覚ましたのは ショートカットの運動神経抜群の明るい少女、関口せきぐち小鳥ことり。スポーツテストでは男子と張り合うぐらいで男女と正良に言われては蹴り倒しているが、正良とは仲が良い気がする。



 一通り人物を知ったところで祐吾には一つの疑問が浮上した。

 あの教室にいた者がこの場にいるのなら、何故七人ではないのだろうか、と。

 あの場には確か……正良と同じくらい付き合いが長かった高原たかはらあずき がいたはずだ。あの女…アルカティアも六人様ご案内と言っていたはずだ。いないとは考えにくい。

 離れた場所にいるのかと思っていた矢先、正良が「おい! あれを見ろ!」と言いながら指を指した。



 そこにいたのは絶世の美女と言っても過言ではない程の彼方の月のように美しい女性だった。

 女性の隣にいる、同じような格好に髪の色をしたアルカティアと比べても その美しさは全くの別物だ。

 アルカティアの美しさを神秘的な美しさと言うならば、目の前の女性は神々しい美しさと言うべきだろう。



ラプンツェルのように長い艶やかな金髪、花嫁の象徴の純白のベールから見える深海のような眼。ビロードのようにすべすべした肌にたわわな胸に視線がいってしまうのは 男として許してほしい。

 話の方向がおかしくなってしまったが ずばり何を言いたいのかと言えば、彼女が自らをイギリスの月の女神、セレネと名乗っても誰も疑いはしない美しい容貌をした女性がそこにいたということ。

 あまりの美しさに誰もが息を飲み、言葉を失っていると 女性は聖母マリア様のように誰もが心を許す微笑みで 俺たちに声をかけた。







「初めまして、異世界から現れし御方々。この度は実力行使となる御招待をしてしまい、心よりお詫び申し上げます」






 女性こと、女神メシアティルが述べたのは次のような事だった。



 この世界はアルバーナという世界で、俺たちが住んでいた場所とは異なる世界である。アルバーナは200年ほど前に前の勇者が魔王を倒し 人々の祈りの力により女神が平和を保ってきた。女神の力は魔物が住まう地、魔界とアルバーナとを通じる門を塞ぐというもの。人々の祈りの力により女神はアルバーナの平和を保っていた。


 だが、ここ最近。人々の信仰心が薄れ 魔物の動きが活発化してきている。魔物の動きが活発化してきているという事は 魔王が再び復活しようとしている前兆。魔王が復活すれば魔界からアルバーナに多くの魔物が流出してしまう。そうなれば、世界の平和が乱れ人々の心が荒み、女神の力が弱まってしまう。女神の力が弱まると魔界の門を塞いでいる力がなくなる。

 女神はアルバーナに直接関与してはいけない。女神が関与すると世界のバランスが崩れてしまうからだ。

 けれど、自分は人々を愛している。人々の苦しむ姿など見たくない。

 そこで女神は魔王を倒すべく、再びこの世界を救うに相応しい勇者を異世界から召喚した。

 優れし勇者となりえる人材…………つまり、俺たちを。




「無理強いは致しません。しかし、もし あなた達が魔王を倒した暁には 必ず元の世界に還す事を約束し、勇者となった者の願い事を一つ叶えることを ここに約束致します。


大変無礼なことだと自覚しております………ですがどうか、どうか皆様のお力を御借りしたいのです!!」



 優越感、好奇心、使命感、保護欲、憧憬、権力欲、名誉欲、


 どれが俺たちを突き動かしたのかは定かではないが、少なくともこの場には 目の前にいる女神の言葉に頷かない者などいなかった。















「では、あなた達を国王がいる城へと召喚致します」

「あ、女神様 一つ尋ねたいんだが」

「おいお前……あなた! 気安く女神様に質問するな………です!」



 いざ女神様がアルバーナにある王がいる城に送ろうとしていた所で 俺は気になっていた事を質問しようとした。

 アルカティアは余程女神様を尊敬しているのか、初対面の嘗めきった口調から本の少し丁寧語になっている。女神様が「宜しいのですよ」と言うと「ですが女神様ぁ~」と猫被りな声で対応している。正直、気色悪い。



「彼女は事前に除外させていただきまた。身体能力が一般人以下で とても勇者として…………その、なんとおっしゃれば宜しいか………」

「ぶっちゃけスライム出たらやられそうなぐらい雑魚だったから帰したんだよ。スゲーよあいつ、一般的のステータスを全部下回ってんだからさ」



 戸惑う女神様をよそに アルカティアはさらりと理由を述べた。祐吾は妙に納得できた。干物みたいなひょろひょろ体型に 運動神経は平均以下、階段を勢いよく上がれば息切れ、体育の翌日には必ず筋肉痛になり痛い痛いと声をあらげる。

 どう考えても戦闘とかできそうにない。


 アルカティアの発言に正良と小鳥が吹き出し、久美子は苦笑い、飛鳥は「笑っちゃダメだよ」と注意していた。

 自分のステータス《数値》もスライムの強さも知らないが 明らかにあずきを下に見て吹き出したのだろう。しかし、それはある意味仕方がない事だろう。

 あの場にいた中でただ一人能力が低いと還されたあずき。本人がいないのもあり 言いたい放題だ。



「まぁ、あずきちゃん体力なさそうだもんね。握力とかハンドボールとか、去年も一緒だったけど クラスで最下位だったもんね……うん、しょうがないか」

「お前と違ってひょろひょろだしなー。お前少しは痩せろよ」



 正良が小鳥の怒りに触れ蹴飛ばされ その場に笑いが生まれた。「痛たた…」と蹴られた所を擦る正良は何を思ったのか、にぃと笑いながら祐吾の肩を組んできた。



「つーか祐吾。なんで妖怪あずきの事聞いたん? もしかして好きだからとか…」

「いや アイツさぁ、タンスの角に小指ぶつけて死ぬ耐久力しかなさそうだしな。好きとかじゃなくても死なれたら罰が悪いだろ」



 人としての最小限の心配を口にし 組んできた手を外す。「本当にかぁ~?」とにたにた笑う正良に苛立ちながら 女神様に召喚の催促をした。

 女神様も正良の言葉に影響されているのか どこか楽しそうにその様を傍観していた。女は恋愛的な話に弱い。それは女神様にも反映されているのだと心に刻んだ。



「それでは 御送り致しますね。女神としては複雑ですが、御幸運を御祈り致します」



 女神様が持っていた黄緑の宝玉が装飾された杖を掲げると 温かな光と共に地面に教室にも出現した魔方陣が浮かびあがった。

 そして、本日(?)二度目の意識を手放した。










「これで彼等は彼女に遭うまで気にせず旅が出来ますね♪

 女神様♡」

「ええ。ですが……あの子はそれまでちゃんと生きていられるでしょうか」

「あー……あのゴミみたいなステータスでしたからねー ランダムな補正がどこまで効いているのか」

「勇者の名が全世界に轟くまで生きていて下されば助かるのですが………」

「大丈夫ですって~、全ては女神様のシナリオ通りになりますから今は勇者達の御幸運を御祈り致しましょう?」

「……………そうですね そう致しましょう」

【アルバーナ】

女神様が見守る異世界の名前。女神様の加護によりレベルが高過ぎる魔物は入ってこれないようになっている。


【魔界】

魔物がいる世界。稀にここからモンスターがアルバーナに流れ込む。アルバーナに存在している九割の魔物はここから生まれている。

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